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第58話:ボルテの獣化

微かな匂いをたどり、行き着いた館は異様な雰囲気を感じた。 館の周辺に植えられた草木。 館内に漂う、獣の臭い。 先陣を切って館内に入って行ったボルテは、館内に感じた「フィー」の匂いを探した。 二階へ続く階段で、匂いを見つけるとその匂いを追った。 部屋と部屋に隠されていたその部屋は、空調を魔石でコントロールしてあったが、部屋には寝台と簡易トイレ。小さなテーブルに、姿見。壁に設置された鎖。 その近くに脱ぎ落とされた、服を見たボルテ全身の毛が逆立つ。 「フィー!!!どこだ!!!! フィー!!!!」 その怒号に、館内が騒がしくなる。 階下から聞こえる音に、ボルテが慌てて部屋の外にでる。 「フィー!!」 廊下を曲がった獣人の黒い尾が見え、ボルテはその後を追いかけた。 「フィー・・・?!」 行き止まりにの先にいたのは、黒髪に黒い尾、黒い三角耳の獣人だったが、ボルテの声に振り向いた姿は、ボルテの中にある「フィー」ではなかった。 そして、その獣人の額に本来ならあるべき物ではない、黒い角が四本。 「!! お前!!幻影魔獣か!!!!!」 ボルテが構えるのと同時に、人型幻影魔獣が飛びかかるが瞬きの瞬間に幻影魔獣は切り裂かれていた。二つに切り裂かれた幻影魔獣は黒い煙となり消える。 「ボルテ!! 地下だ!!」 「!!ピンイさん!!」 後を追ってきたピンイ達がボルテに合流する。 館全体から、何か歯車が嵌った音が響き渡ると同時に、ボルテの居る階で火の手が上がる。 「うわっ!!」 「ボルテ!大丈夫か!?」 「はい!!こちらは気にしないでください!」 月次と部屋から、爆音と共に火が出る。 一気に階段の手すりを使い、滑り降りていくと玄関ホール部分に魔獣の群れが押し寄せてきていた。それを食い止めようと、グリズ他国境警備隊メンバーが応戦していた。 上から降りてきたボルテを見つけたグリズが、襲いくる魔獣を相手しながらもボルテに向かって声をあげた。 「ぐ、グリズ隊長!!」 「!!ボルテ!お前は、ピンイ達を追って地下にいけ!!」 「はい!!」 地下へと続く通路は、至る所に魔獣の痕跡や獣人の様なモノの残骸があった。 「っく・・・、なんだこの匂い・・・・!!! フィー!!」 ボルテは様々な臭いの中、微かに残った「フィー」の匂いを嗅ぎとった。 こっちか!?  匂いのする方へと、向かうがその先は壁だった。 「・・・壁? けれど・・・」 クンクンと石が積まれた壁の隙間から漏れてくる外気に、ボルテの求める「フィー」の匂いを感じる。 「・・・。」 深く深呼吸をしたボルテは、その壁に向かって剣を叩きつけた。 ガラガラと呆気なく、石壁は崩れその先に道が現れる。 ボルテの背後では、ピンイ達が戦っている音がしたがボルテは匂いの強くなった先へと走った。 突き当たった先で、騎乗魔獣の嘶く声が聞こえ、急ぎ焦る。 「フィー!!!! えっつ・・・。」 急ぎ入った場所で、ボルテが目にしたのは複数の檻に入った裸の獣人の様なモノ達だった。 「な・・・なんだこれは? はっ!!フィー!!!!どこだ・・・フィー!!」 檻の中を進むと、排気口の近く何かが吐いた痕跡をボルテは見つけた。 その吐瀉物が、フィーが出したものだとボルテは確信をしていた。 「ボルテ!!こっちは・・・うぉ・・なんだこれは・・・。」 「ピンイさん・・・。」 「と、とりあえず、ボルテここを出るぞ!!」 「ピンイ!こっちは、だめだ!!火の回りが早い!」 「!! 2人ともこちらへ!!! ここから出れそうです!!」 そう言ってボルテは、一番端の石壁に向かってさっきと同様に剣を向けた。 呆気なく崩れるた石壁に、唖然としながらもピンイとフェイ達は外へと出ると、館の裏側に通じていた。 「・・・クソ!! これ、騎乗魔獣の足跡だ!」 「おい、ボルテ!! どういうことだ!!」 「・・・フィーの匂いを辿ってきたら・・・、ここに。」 「なんだと!?」 その瞬間、館が爆音を轟かせ燃え崩れていった。 その爆風に、ボルテ達も咄嗟に地面へと伏せて身を守ったが、様々な悲鳴や鳴き声が燃え盛る館の炎から聞こえた。 「!グリズ隊長!!」 さっきまで玄関ホールで幻影魔獣達を相手していた、隊長達の存在を思い出しボルテは館の正面へと向かった。 「おー! ボルテ!!お前も無事か!!」 「た、隊長!!」 ところどころ負傷した隊員達もいたが、危機一髪のところで国境警備隊達は館の外へと出ていた。隊員の1人が、裏手から騎乗魔獣が荷台を引いて行くのを目撃していた。 その荷台が向かった方向を聞いて、ボルテの顔が強張った。 「ボルテ!!」 「!!」 思いっきり、グリズはボルテの肩を叩いた。 「しっかりしろ! お前が見たモノがなんであれ、お前のするべき事はなんだ!?」 「・・・隊長。」 「ここは俺らに任せて、お前はピンイ達と行け。・・・ボルク様には、俺から連絡しておく。」 「・・・ありがとうございます・・・。」 グリズに頭を下げ、ボルテはその場で雄叫びを上げた。 「うぉぉぉっぉぉん!!!!!!!!!!!!」 その声は、その場の空気を震わせ、周囲にいた者達はその声の大きさに耳を塞いだ。 「うわっ・・・っと・・・、ボルテ・・・お前。」 グルッルル・・ さっきまで、人型だったボルテのいた場所に銀色の毛並みをしたオッドアイの獣が居た。 グルル 「アオォーーーーーーーーーン!!!!!!!」 その獣が、一鳴きすると館周辺。その一帯からも同じ様な雄叫びが轟く。 その声を聞き、銀色の獣が颯爽と駆けて行く。

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