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第65話:久しぶり
久々の兄弟の再開って・・・こんな空気だったっけ???
さっきまで、賑やかだった部屋に静寂が訪れる。
獣化を解いたフィガロは、久しぶりに見たネロウの顔を直視出来ないでいた。
「はぁ・・・。フィガロ・・・お前が無事で良かったよ。」
ネロウは寝台の横に椅子を置き座った。
「・・・ネロウ兄さん。心配かけてゴメン。」
「ああ。けど・・・お前が無事ならそれでいい。」
「ありがとう。」
「それに、トネリとロマもフィガロの事を待ってる。」
「・・・う、うん・・・。」
ネロウの言葉に、フィガロは一瞬言葉を詰まらせた。
「それに、オレ達の番もフィガロに会うのを楽しみにしている。」
「・・・番・・・。」
「ああ・・・。そうだ、春にはオレの子も生まれるから、フィガロはおじさんになるな!」
「えっ・・・あ、そっか!」
ネロウの言葉に、フィガロの顔が明るくなった。
その事にホッとしたネロウは、思わず余計な事を言ってしまったのだった。
「それに、こんな所よりも家族と一緒の方が、お前も寂しくないだろ!」
「えっ?」
「大体、あんな図体ばかりデカいガキが、お前を守るなんて無理な話なんだ。そんな奴が、次代の統治者とか・・・、この大陸も不安しかないな。」
「・・・・。」
「ああ、フィガロの事も幼魔獣だと思ってたとか・・・。世間を知らなすぎるんじゃないのか?」
「・・・・・・・・・・。」
「あんなのが、ここの副隊長とか、ノーザは平和ボケの集団なのか?それに比べて、サウザは良いぞ?統治者様も猫科獣人で、イースと比べて差別なんかないし、気候も穏やかで過ごしやすいし・・・・・・・フィガロ?」
フィガロの顔がどんどん暗く、掛布を握りしめる手が、青白くなっているのに気が付いた時には、ネロウは自分が取返しの付かない程に失言した事に気が付いた。
「・・・ネロウ兄さん・・・いくら、兄さんでも・・・ルテ・・・ボルテの事も、ノーザの事も悪く言うのは許させないよ・・・。」
「ふ、フィガロ!ちが・・・違うんだ!! ただ、オレは・・・」
「・・・・今日は、疲れたから・・・。」
そういって、フィガロは掛布を引き上げ頭まですっぽりとかぶってしまった。
「・・・フィガロ・・・。っ・・・サウザには一緒に帰るから・・・な。」
ポンポンとフィガロの頭を掛布越しに撫で、ネロウは部屋を出ていった。
サウザに帰る。
その言葉に、フィガロは素直に頷けなかった。
帰る・・・。
ボクが帰りたい所は・・・。
手触りの良い掛布から顔をだし、豪華な部屋を見渡す。
ボクの帰る場所。
・・・ここじゃない。
ネロウが部屋を出て行ったと報告を受けたボルクの元に、焦った従者がすぐに駆け込んで来た。
「ぼ、ボルク様!!大変です!!」
「何が?」
「居ません!」
「ああ。それなら、さっき宿に帰るって報告があったけど?」
「い、いいえ!! そちらでは・・・。居ないのはフィガロ様です!!」
「!? なんだって?! まさか、連れ帰ったのか!?」
「いえ、それは無いかと! ゲートチェックで、手荷物も身体検査も異常ありませんでしたので・・・。」
「そ、それじゃぁ・・・本人の意志で居なくなったって事か?」
「・・・おそらくは・・・。」
「・・・困ったな。いいか、早急にボルテに知られる前に探し出すんだ!!」
「は、はい!!!」
ボルクの顔からは、血の気がすっかりと引いてしまっていた。
「・・・頼むから、無事で見つかってくれよ・・・・。」
最悪の状況が頭を過り、ボルクは椅子に沈み込んだのだった。
「・・・ボルク様、よろしければこちらをどうぞ。」
そういって、おかれたカップからはほんのりと甘い香りが湯気と共にたっていた。
「・・・ありがとう。いただくよ。」
狐獣人の従者が、珍しく意気消沈している姿を見て片眉を上げた。
「・・・何その顔。」
「え、ああ。・・・ボルク様の様子が珍しいので・・・つい・・顔に出てしまいました。申し訳ございません。」
「・・・絶対、そう思ってないだろ。」
「・・・。」
「別にいいけど。フィガロ君が無事に見つからなきゃ、この大陸なくなっても私のせいじゃないしね!!」
「・・・はっ?」
「知ってる? 狼って、死ぬほど一途なんだよ。」
「・・・・・・・・・・・、匂いでたどれるんじゃ無いんですかね?」
「・・・寝台に残ってる匂いで、探せるといいよねぇ・・・・。」
ボルクは思わず遠い目をしてしまう。
さすがに、あの短い時間でボルテとフィガロが何かをしたとは思っては居ないが、ずっと眠ったままだったフィガロは、常に魔石の力で身体を清潔に保たれていた。
目覚めた直後に、ボルテがフィガロを抱き抱えていた事で、今はほぼボルテの匂いしか付いていないだろうと、ボルクは思っていた。
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