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第66話:辿り着くのは・・・
案の定、寝台の残り香を元に、フィガロを追った者たちが行きついた場所は「兔まい亭」だった。
「ボルテ!!あんた、フィーガは大丈夫なのかい!」
「あ、ナミさん!」
ボルテは、挨拶よりも先に、フィガロの事を聞いてきたナミに笑顔をみせた。
その顔に、ナミは涙がうかんだ。
「フィーが目覚めたんだ!」
「そ、そうかい!!! それは・・・良かった。本当に・・・良かった。」
「うん。」
「ナミさん、だからボルテに何か美味い飯食わせてやってよ。」
「ああ、そうだね!!」
いそいそとナミが調理場の方へと向かうと、すでに様子をみていたラビに何品か用意されていた。
目の前にどんどんと出されていく食事に、ボルテに腹がぐぅっと鳴いた。
「ほら、しっかり食べなさい!」
「はい!」
胃痛に苦しんだシュベールも、ガツガツと食べ始めたボルテの姿に、食欲を取り戻し出された食事に手をつけようとした。
「!!?」
「・・・ボルテどうした?」
「・・・・。」
カトラリーから、ナイフを抜きボルクが上へ向かって投げたと思った瞬間、ナイフが弾かれ、床に落ちる。
「お、おい、ボ、ボルテ?!!」
ボルテの顔が見る見ると強張り、地を這うような唸り声で上を見上げる。
「ちょ・・・ちょっと、ボルテどうし・・・っつ。」
初めて見るボルテの様子に、ナミの顔色が悪くなり、運び途中だった皿を落してしまう。
その音に、調理場から顔をだしたラビも、言葉を失う。
「な、なんだ!!ナミ、大丈・・・ぶ・・・か・・・・。」
「・・・ちょっと、先に帰ります。」
「あ、あ・・・ああ。解った。」
隣にいたシュベールも、収まったハズの胃痛に顔を下げてしまう。
グルルルル・・・・
ボルテの威嚇音が聞こえなくなったところで、シュベールはやっと呼吸が楽になったきがした。
「な、なんだ!?さっきのは・・・?ナミ、大丈夫か?」
「あ、ああ。大丈夫・・・ってか、シュベール!あんた顔が真っ青だよ!!」
「・・・・い・・・胃が・・・痛い・・・。」
「ちょ!! シュベール!!!!!!!!!!!!」
グルルルル!!!!
ガウッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「ヒィッ!!」
ボルクの所から、匂いを辿った小型犬獣人は今、自身の身に迫りくる危機にすっかりと尾を巻いてしまっていた。
「すいません!!すいません!!」
「・・・何が、すいませんなんだ?」
狭い路地へといつの間にか誘いこまれ、身動きが取れなくなった所をボルテに捉えられてしまった。
キューンキューンと半ベソ状態になりながらも、ボルテの元に何故来たのか告げると、ボルテはすぐに獣化し、闇へと消えた。
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