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第4話
犬養は三つ指をローションで濡れる後孔にあてがって、そのまま差し込んだ。指をバラバラに動かしながら、ほぐされていることを確認している。
「ふっ……、んぅ……っ」
いたずらに、腹側の浅いところを撫でられる。前立腺と呼ばれる感度の高い場所は、犬養にさんざん躾けられたおかげで簡単に快楽を味わう。
「ひぅっ」
小さく肩を跳ねさせた玲央を見て、犬養は目を細めた。
抜かれた指はローションを纏っている。太ももを撫でられるとべとりと不快な感触がした。後孔のナカはじくじくと疼いて刺激を求めていた。
「太いのと激しいの、どっちがいい?」
どっちがいいかと聞かれたら、どっちも嫌だ。
しかしこの問いの正解は玲央の好き嫌いを聞いているわけではなくて、より感じる方を答えなければならない。答えを間違うと折檻になりかねない。
この前の折檻は、媚薬を全身に塗りたくられたまま、くすぐり羽根で性感帯をくすぐられ続けた。泣きながら謝罪と懇願を繰り返して、気が狂いそうなのか気が狂ってしまったのか分からなくなった。
そんなのは絶対にごめんだ。
「太くて、激しいやつがいい」
犬養は、玲央の頭をくしゃくしゃに撫でる。
正解したおかげか満足気だが、これで不正解だったとしても機嫌を損ねるわけではないのが厄介なのだ。犬養が玲央に怒ることはない。折檻も褒美も、すべて口実だ。
犬養はソファに付いている引き出しを開け、太くて激しいディルドを取り出した。淡い桃色をしていて、イボがいくつも付いている。
はい、とディルドを渡される。玲央は脚を開いたまま、後孔から溢れるローションをディルドに纏わせゆっくりと押し込んだ。
「あっ、ふっ、んっ、、ぅう……」
「電源いれて、一番激しいやつにして」
ディルドを起動させると、低い機械音が腹から鳴り始める。ボタンを数回押すと、徐々に振動は強くなっていく。骨盤から全身へ振動を響かせるディルドが、出ていかないように手で抑えながら犬養に痴態を見せつける。
「〜〜っ、あ゛、い、ちばんはげしいのっ、あ゛、あ゛! お゛、ッ、ふ、ぅうう゛!」
苦しかったはずの乱暴な動きに、玲央自身はむくむくと勃ち上がり始めた。このままじゅぼじゅぼと激しく抽挿できたらどんなに気持ちいいか。
しかし犬養の前で、自分からそんなことはしたくない。
もどかしさは、勝手に後孔に力を入れさせた。きゅう、と締まり、尻の縁から腹の奥まで、すべてで振動を感じてしまう。
「ははっ、えっちな顔だ」
犬養がソファの背もたれを押すと、背もたれはそのまま倒れ、簡易的なベッドになった。ソファを覆うシーツの下にはビニールが貼られていて、ここはいつでも玲央を犯せる場所になっている。
背もたれに釣られて倒れ込むと、犬養も肘を付いて横になった。
そして玲央の胸の突起に口を付け、じゅるりと音を立て吸い上げる。同時に、ディルドを抑える玲央の手に犬養の手が重なって、激しいピストンを始めさせられた。
「ぉ゛お゛お゛ッ⁉︎」
吸われた乳首からぴり、と甘い快楽が迸る。
そしてイボが腸壁や前立腺を何度も激しく擦り上げ、待ち侘びた快感に脳が灼かれていく。
イボが縁に引っかかり、捲られてはまた戻っていくのだ。あっという間に熱くなった全身からはどばどばと汗が吹き出している。
快楽から逃げようとソファを蹴れば、咎めるように乳首を甘噛みされた。
「ひぎぃッ!」
「逃げるな逃げるな」
「あ゛ッ! あ゛っ、お、お゛ッ……! あ゛、ぁあ゛〜〜ッ! あ゛! ふぅう゛う゛う゛っ!」
強い振動で揺さぶられながら、腸壁を擦り上げられ、行き止まりとなっている最奥を押し上げられる。
カウパーを垂れ流す玲央自身は、ピストンの動きに合わせてなさけなくぷるぷると揺れていた。
「は、あ゛ッ、ああ゛ッ! いぐっ、いぐッ!」
快楽が絶頂に向かってたまっていく。もう体は逃げようとはせず、快感を余すことなく拾おうとくねっていた。ディルドを腰は追いかけてへこへこと上下する。
迫り上がってきた精液は今にも飛び出しそうで、すぐそこまで来ている絶頂感に期待しながらぎゅっと目を瞑る。
「ぁあ! ああ゛! アっ、イ゛ぐっ、いくっ、いくいくいくいッ、」
しかし、犬養は手を動かすのをやめディルドの振動も止めてしまった。
「あ゛ッ……、っ? なん、い、い、きた……ッ、あう……」
戸惑う玲央の頬を犬養が撫でる。
「ねえレオ、今日は『躾』しようと思うんだけど」
『躾』と聞いて、反射的に体がこわばった。
躾は下手すれば折檻よりも恐ろしい。躾と称されたそれは、玲央の体の一部をゆっくりと時間をかけ、確実にはしたない性感帯へと変えていくのだ。
お尻だけで、乳首だけで、耳だけで、果ててしまえるように躾けられた。これ以上玲央の体をどうするつもりなのか、想像もできない。
だけど考えた先から頭の中が真っ白になっていく。
そんなことよりはやく絶頂を迎えたい。
寸止めされたおかげではしなくされたお尻がうずうずしてたまらないのだ。どうにか快楽を得ようと、静かなディルドを締め付ける。
無意識のうちにへこへこ動く腰を、犬養は嘲笑った。
そして、ディルドをゆっくりと引き抜きはじめる。
「あ、あぁ……っ、あ゛、やだ、いっちゃ、あッ……」
切なく首を横に振っても頬にキスをされるだけ。
先端が申し訳程度に後孔を塞ぐほどになるまで抜かれてしまった。
「いぬかい、さ、……っ」
「躾が嫌ならここで終わり。躾けられたいなら、自分で胸触って、イキたいってアピールして」
躾は嫌だ。
そろそろと両手が胸の上までくる。
「あ、うぅ……」
躾は嫌だ。
両手の中指が、ぷる、とそびえる胸の突起をひと弾きした。
「あぁっ」
躾は嫌だ。
出ていきそうなディルドに、腰を揺らし後孔でキスしてせがむ。
「あっ、ぅ、あっ、……」
中指のつま先がコリコリと乳首を嬲った。
じんと熱くなって、どんどん乳首は硬くなる。
気持ち良くて、指を止められなくなっていく。
「はっはっ、あっ、イっ、イキたいっ! おしりっ、じゅぼじゅぼしてっ、くださっ、あっ、あ゛、っあ!」
「よくできました」
ディルドが、どちゅんッ! と最奥まで一気にぶち込まれた。
「〜〜〜お゛ッ!?♡」
ぱんっ、と目の前が急に弾けた気がした。突然の絶頂に脳が追いつかないまま背中がのけぞって、精液がびゅくびゅく飛び出していく。
「イ゛ッ……♡」
ぎゅうぅ、とお尻がしまって、二度とディルドが出ていかないように抱きしめた。
無意識に動く指は乳首をいじめるのをやめたりしない。精液を撒き散らしながら、快楽の海に玲央は突き落とされていた。
「はっ、あ゛っあ゛っ、んぅう゛ッ……」
一人でよがる玲央の手を犬養が掴んだ。
「ああっ」
つい切なげに鳴くと、犬養は仕方なさそうに額を撫でてくる。手のひらの大きさと熱さが妙に気持ちよかった。
「じゃあ、躾はじめようか」
観念した玲央は頷きもせず、快感に潤んだ目で犬養を見つめ返す。
今日はなにをされてしまうのだろう。
犬養が取り出したのは、ピンクの液体が入った太い注射器だった。
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