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第5話

 玲央の後孔に差し込まれた注射器から、冷たい液体が腹の中に入ってくる。 「ッお、......っ、ぅう゛」  液体は、ディルドなんかでは入ってこれられないような腸の深いところまで進んでいった。  冷たさと液体を注がれる不快な圧迫感。あと少し挿れられたら吐いてしまいそうなところで、ようやく注入が終わる。三本分の液体が、玲央の腸内を満たしていた。  小さなプラグ付きの、細いゴムだけでできたパンツも履かされる。  膨れた腹が張って苦しい。  ぎゅるる、と音を立てる腹は、さっそく異物を押し出そうとしていた。  腹を抑えて横になると、犬養も腹を撫でてくる。人の手のあたたかさに安心しそうになってしまった。そもそも犬養のせいで苦しんでいるというのに。 「これ、なんだよ……」 「知らない? 浣腸ゼリー」 「犬養さんと違って変態じゃないんだよ」 「体はどんどんエッチになってるのにねえ」  他人事みたいに言う。  浣腸ゼリーの響きがあまりにも嫌で、このあとなにをさせられるのか考えないように目を瞑った。腹の痛みに集中しているほうがマシかもしれない。  そんなことを考えていたら、口の周りに妙な熱気を感じた。薄く目を開けると猛った犬養自身がぼろんと零れている。 「今日は躾が終わるまで挿れられないからさ」 「躾をやめて普通にセックスすればいいだろ」 「俺とセックスしたいってこと? かわいい~」  目の前のちんこを嚙みちぎってやろうかと思った。しかしここで噛みちぎると生活がままならない。  これ以上余計なことを離さないように口を開け、太い肉棒を頬にこすり付けた。  玉袋を指でふにふにと撫でながら顔を動かしストロークする。横になったままでは動きにくくて結局体を起こした。腹を押し付けないように、腰だけ持ち上げる。 「ンッ……、ふ、 ぅ、んっ」  じゅ、じゅぼ、と汚い音が、口の隙間から漏れる。  咥えられるだけ深く咥え、唇で竿を撫で上げる。裏筋を舐め、鈴口を舌先で抉ると苦い風味が口の中に漂った。亀頭を強く吸い上げてから口を離す。  犬養を見上げると、頬を赤らめ目を細めていた。暑かったのか、上半身のスウェットを脱いでいる。 「なに、はやくイかせてよ」 「うん」  唾で濡れた肉棒をまた喉奥まで差し込む。えづかないように、早くイけと念じながら顔を動かした。  フェラは嫌いじゃない。いや、嫌いではあるのだが。  犬養の急所を握っていられるこの瞬間はちょっとした優越感がある。普段、玲央に好き勝手する犬養が玲央の口なんかで気持ちよくさせられていると思うと、優位に立てている気がして高揚するのだ。  口に入りきらない根元のほうは、指で輪を作り扱いてやる。  犬養の呻き声が聞こえた。足に力が入っている。もう少しだ。 「はっ……」  掠れた喘ぎ声があがり、口内の犬養自身が少しだけ大きく膨れた。そしてどぴゅ、と精液が口内に溜まっていく。  零して叱られないように唇を竿に沿わせながら、丁寧に犬養自身を抜く。口に溜まった青臭い粘液がもたらす不快感には慣れてしまっていて、いまさらえづいたりはしなかった。  飲むか、出すか、犬養の指示を待つ。 「……吐くなよ?」  そう言って犬養は、玲央の胸に手を伸ばした。  膨らんだ突起をきゅ、と摘まみ上げる。 「ふッ、ぶ、……ッあ゛!」  突然の刺激にあっけなく口を開けた玲央は、ぼたぼたとソファに精液を零した。 「零すなって言ったのに」  かりかりと両胸の突起を指で刺激される。逃げないように、シーツを掴んで耐えた。胸が熱くなって快感が全身に広がっていく。  腕から力が抜け四つん這いにでいられなくなると、玲央は零した精液の上に体を落としてしまった。胸にぐちゃりとした不快感が纏わり付く。  腹が潰れるのが苦しくて、慌てて仰向けになった。 「ごめっ、なさ……っ、あ゛、ふっ、ぅうッ!」  乳首を強く摘まみ引っ張り上げられる。ただでさえ人より大きい乳首がまた大きくなってしまいそうで怖かった。引っ張る指に着いていくように必死に胸を持ち上げる玲央を、犬養は嗤う。  そして、胸を下から救い上げるように包んで揉み始めた。 「またおっきくなったんじゃない?」 「な、ってない……!」  鍛えたのは、妹の美鈴を守れるようにするためだ。犬養と性奴隷契約を交わすのは、たまたま条件をクリアできた「ついで」なのだ。  それなのに犬養は玲央の胸を満足気に揉んでは「俺のおっぱい」なんて言うから腹立たしい。   「犬養さんのじゃないぃ……」 「ははっ、俺のだよ。レオの体は全部、俺の」  ただ揉まれているだけなのに、皮膚を押される感覚や、たまに引っ張られる刺激が突起に伝わってくる。  犬養はただ柔らかい感触を楽しんでいるだけなのに、一人で焦らされているのがいたたまれなかった。 「うしろの、無くならないんだけど、いつまで入ってるの」  犬養は壁にかかった時計を見る。 「そろそろいいな……。立てる? 口をうがいしておいで」 「……立てる」  そうは言ったものの、体を動かすのは少し億劫だった。のろのろ動く玲央に、犬養は「抱っこして連れて行ってあげよう」と提案してくる。その言葉が力となって一人で起き上がり洗面所に向かうことが出来た。  うがいで口の中の粘液が洗われていく。  口内はすっきりしたものの、腹の張りはひどくなっているようだった。  これまで、快楽はともかく痛めつけられるようなことは無かったのだが、ついにそういうことをされるのだろうかと不安になってくる。玲央には従うしか選択肢は残されていないのに。  不安を抱えながらリビングに戻ると、犬養はそこにいなかった。  代わりに、普段玲央が犯されている部屋の扉が開いている。電気も点いているようで、覗くと犬養がなにやら準備しているようだった。 「犬養さん」  振り返った犬養が玲央を手招く。  窓もないこの部屋には、ベッドといくつかの拘束台が置かれている。  玲央の躾が始まった頃はベッドだけだったのに、一つ、また一つとどんどん増えていったのだ。  他にもアダルトグッズをたくさんしまっている棚や、ハメ撮りのブルーレイもこの部屋に並んでいた。  玲央が今日呼ばれたのは、ギロチンを模した真っ赤な拘束台だ。  両手と頭を革で覆われた板に嵌める。皮膚に当たる部分はすれてしまわないようクッションが付けられていた。それから並行に設置された二つの長方形の台を跨いで座る。床には鏡が置かれていて、後孔から玲央自身、そして拘束された玲央の表情全てが見えるようになっていた。   「それじゃあ、始めようか」  ピピ、と聞き慣れた機械音は、録画開始の合図だ。玲央には見えないが、たぶん背面が映るように設置されているのだろう。  細いゴムだけでできたパンツは、腰の留め具を外された。ゆっくりとプラグが抜かれると、ナカに溜まったものが着いていこうとする。 「ひっ!?」  慌てて後孔を閉める。生きていくうえで良く知っている感覚、間違いなく、排泄前のあの感覚だ。  血の気が引いていくのが分かった。 「な、なあ、これっ、ナカのやつっ」 「気付いた? 大丈夫大丈夫、固まったゼリーが出てくるだけだから。ちゃんと洗えてれば『本物』は出てこないから安心して踏ん張って」  両尻に冷たいモノが貼られていく。僅かな電気が流れるパッドだ。尻を逃がそうにも、少し動くだけナカのゼリーが出そうになる。  犬養は何食わぬ顔で玲央の正面に立った。そして手元のリモコンで、パッドの電源を入れた。

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