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第7話
ライブ中はユウもダイチも恋愛感情は忘れ、ライブに集中した。
ただ、いつものライブと違うのは、いつも、ライブ前は必ず、ダイチはユウに宛てがわれた楽屋に足を運ぶ。
が、この日はそれは無かった。
(...ダイチ、もしかして調子悪いのかな)
マイクを握り歌いつつ、そっと、ギターを掻き鳴らすダイチを垣間見る。
ライブ中盤になると、ユウはダイチと並び、熱唱した。
そうして、ツアー初日は大成功を収めた。
袖に引っ込み、楽屋に向かう中、息を切らしながら、お疲れ、の声が飛ぶ。
◆◆◆
いざ、打ち上げ。
ツアースタッフが手配してくれた居酒屋の貸し切り。
全員で音頭をし、スタッフも合わせて乾杯した。
「ダイチ、お疲れ」
「お疲れ、ユウ」
カチン、とビールグラスをかち合わせる。
ビールを口元に運びながら気になる事を聞いた。
「ダイチ、今日、調子悪かった?」
え?とダイチもグラスに口を付ける手前でユウを見る。
「俺、音、外してた?」
「や、そういうんじゃないけど...」
(いつもライブ前、俺の楽屋に来んのに来なかったから、てウザいよね....)
ちょうど、その時だった。
「ダイチ」
マネージャーがダイチを呼んだ。
「はい」
隣に座っていたダイチが立ち上がり、少し離れた席にいたマネージャーの元へと向かっていく。
「....何か、トラブルかな...」
マネージャーの隣に座るダイチを眺めながらビールを傾けた。
それからのツアーはいつも通りだった。
ライブ前になると楽屋にはダイチが来て、屈託ない話しをし、際どいキスをする。
何だか悪い事をしているような背徳感が何故か心地いい。
ファン以上に俺がダイチを好きなんだぞ、ダイチも俺が好きなんだ、とユウは誇らしくも思えたからだ。
決してファンには明かせないライブ前の逢瀬...。
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