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第8話
ライブも後半に差し掛かっていた。
盛り上がりも上々。
その日も地方公演だった。
が、ダイチの楽屋に入り、ユウは目を見開いた。
小柄で可愛らしい笑顔。
ダイチと同じく、ユウも背丈もあり、細身ではあるものの、決して可愛らしい、とは言い難い。
まるで正反対な見た目...ヒカルだった。
「あ。ユウさん」
キラキラするような笑顔を向けられ、眩しかった。
「どうして...?」
にこ、とヒカルはこれまた愛嬌のある可愛い笑顔を浮かべた。
「ここ、俺の地元なんです」
「えっ」
「地元、帰るついでにチケット、試しに取ったら、なんと!取れちゃって。ずっと生で見てみたかったから」
「...たく、東京のライブ、招待するっつったのに」
隣で忌々しそうにヒカルを見下ろし、ダイチがボヤく。
「だってー!待てなかったんだもん!それに...」
ヒカルが歩み寄って来たかと思うと、爪先立ちし、耳打ちされた。
「ユウさんとも話したかったんですよね」
顔と同じく、これまた可愛い声だな、と思う。
こんな可愛い子とダイチ、付き合ってたんだよな...
やっぱり、散々、やったんだろうな、...エッチ。
そこまで考えて、カーッと顔が熱くなる。
(リハ前になに考えてんだ、俺!)
「ユウさん?」
目の前のヒカルが不思議そうな丸い目をして首を傾げていた。
◆◆◆
ライブ後、ユウはガックリと項垂れていた。
歌詞を二箇所も間違えたからだ。
一番と二番のサビを間違え、また別の曲では歌詞を飛ばしてしまい、その失敗に慌てすぎ、また別の失態...。
軽く躓いた程度だが。
「まあ、そんな落ち込むなって」
打ち上げで、右隣に座るコウが慰める。
「怪我しなくて何よりじゃないですかぁ」
コウの隣に座っているヒカルがあどけない笑顔で声を掛けた。
(...いや、君が居たから、失敗したような...。て、人のせいにしちゃダメだよな...ヒカルくんが何かした訳じゃないし。にしても...)
チラ、と左に座るダイチを見る。
豚の角煮を頬張りながら、テーブルにはちゃっかり冷酒。
(...そういえば、昨日、日本酒、飲んでなかったっけ)
ユウの視線に気づいたダイチがすかさず、
「お前も食べる?」
と角煮の入った皿を差し出してきた。
「あ、うん」
「辛子、付けると美味いよ」
「知ってる」
辛子を少し付け、パク、と角煮を半分、齧る。
ホロホロで味も染みて美味い。
「美味いよな」
こくこく、と無心で頬張りながらユウも頷いた。
「コウさん、てなんでコウさんなんですかぁ?」
ヒカルのあっけらかんとした、天然か、な一言にダイチもユウも角煮を吹き出しかけた。
コウも同じくビールを吹き出しかけている。
「な、なんで、て、...なんで?」
ユウもダイチも、コウも天然か、似た者同士かよ、と視線を合わすこと無く、飲み食いに勤しんだ。
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