8 / 14

第8話

ライブも後半に差し掛かっていた。 盛り上がりも上々。 その日も地方公演だった。 が、ダイチの楽屋に入り、ユウは目を見開いた。 小柄で可愛らしい笑顔。 ダイチと同じく、ユウも背丈もあり、細身ではあるものの、決して可愛らしい、とは言い難い。 まるで正反対な見た目...ヒカルだった。 「あ。ユウさん」 キラキラするような笑顔を向けられ、眩しかった。 「どうして...?」 にこ、とヒカルはこれまた愛嬌のある可愛い笑顔を浮かべた。 「ここ、俺の地元なんです」 「えっ」 「地元、帰るついでにチケット、試しに取ったら、なんと!取れちゃって。ずっと生で見てみたかったから」 「...たく、東京のライブ、招待するっつったのに」 隣で忌々しそうにヒカルを見下ろし、ダイチがボヤく。 「だってー!待てなかったんだもん!それに...」 ヒカルが歩み寄って来たかと思うと、爪先立ちし、耳打ちされた。 「ユウさんとも話したかったんですよね」 顔と同じく、これまた可愛い声だな、と思う。 こんな可愛い子とダイチ、付き合ってたんだよな... やっぱり、散々、やったんだろうな、...エッチ。 そこまで考えて、カーッと顔が熱くなる。 (リハ前になに考えてんだ、俺!) 「ユウさん?」 目の前のヒカルが不思議そうな丸い目をして首を傾げていた。 ◆◆◆ ライブ後、ユウはガックリと項垂れていた。 歌詞を二箇所も間違えたからだ。 一番と二番のサビを間違え、また別の曲では歌詞を飛ばしてしまい、その失敗に慌てすぎ、また別の失態...。 軽く躓いた程度だが。 「まあ、そんな落ち込むなって」 打ち上げで、右隣に座るコウが慰める。 「怪我しなくて何よりじゃないですかぁ」 コウの隣に座っているヒカルがあどけない笑顔で声を掛けた。 (...いや、君が居たから、失敗したような...。て、人のせいにしちゃダメだよな...ヒカルくんが何かした訳じゃないし。にしても...) チラ、と左に座るダイチを見る。 豚の角煮を頬張りながら、テーブルにはちゃっかり冷酒。 (...そういえば、昨日、日本酒、飲んでなかったっけ) ユウの視線に気づいたダイチがすかさず、 「お前も食べる?」 と角煮の入った皿を差し出してきた。 「あ、うん」 「辛子、付けると美味いよ」 「知ってる」 辛子を少し付け、パク、と角煮を半分、齧る。 ホロホロで味も染みて美味い。 「美味いよな」 こくこく、と無心で頬張りながらユウも頷いた。 「コウさん、てなんでコウさんなんですかぁ?」 ヒカルのあっけらかんとした、天然か、な一言にダイチもユウも角煮を吹き出しかけた。 コウも同じくビールを吹き出しかけている。 「な、なんで、て、...なんで?」 ユウもダイチも、コウも天然か、似た者同士かよ、と視線を合わすこと無く、飲み食いに勤しんだ。

ともだちにシェアしよう!