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第3話

強烈な喉の乾きで目が覚めた。 次いで、起き上がると前かがみになり頭を抑える。 「いって...」 アレ?と遅ればせながら、異変に気づく。 俺の部屋のベッドとは違う、うちの安物なベッドや布団とはまるで違う。 広さもダブルより僅かに広いかもしれない。 が、体を起こして早々、目を見開いて固まった。 「...何処、ここ...」 随分、小綺麗な寝室。 と、その時だった。 「あ、起きた?」 寝室のドアが開き、俺はぎょっとした。 先程、居酒屋で隣り合わせた男性だった。 確か、二人であれこれ喋りながら飲み食いした。 ...でも何を話したのか思い出せない。 「水、どうぞ。祥吾くん」 「ど、どうも...。て、俺の名前...」 ベッド際に立ち、水の入ったグラスを受け取り、見上げた。 スーツ姿ではなく、グレーのVネックの薄手のセーターに白いゆったりしたスラックス。 手足が長く、スタイルの良さが見て取れる。 「忘れちゃったか。随分、飲んでたもんね。君、酔っ払って、テーブルに突っ伏して寝ちゃったからさ、置いて帰る訳にもいかなくて。あ、一応、店で自己紹介は済んでるんだけど、俺、孝介。向井孝介」 ...頭が上手く回らない。 記憶がだいぶぶっ飛んでいるようだ。 「え、て、孝介さんが介抱してくれたんですか」 「介抱、ていうか、まあ、俺も帰んなきゃだし。君は寝てて起きないしさ。タクシー乗せようかとも思ったけど、さすがに寝ちゃってるし、運転手さんも嫌だろうしね」 かあ、と羞恥で顔が熱くなる。 ついさっき知り合ったばかりの人に...てか、名前を聞いたらしいのに、忘れた上に、自宅にまで連れ帰って貰うとか...。 「す、すみません、迷惑かけて...」 「や、いーよ、別に。失恋したんでしょ?そんな日もあるよ、たまにはさ。失敗してなんぼ。次はいい恋愛したらいいよ。今回を教訓にしてさ」 「あ、俺...そんな話しもしたんですね」 縮こまる俺とは裏腹に一瞬、孝介さんは形のいい瞳を見開いた後、爆笑した。 「失恋話ししたのを忘れるくらいだしさ。その程度だったんじゃないの?祥吾も散々、元カノの悪口、言ってたし。いちいちカロリーを気にするだとか、いつもダイエットしなきゃ、てうるさいから食事が不味くなるとか、本当は巨乳が好きだけど、目をつぶってやったとか」 ケラケラ笑う孝介さんに俺は唖然とし、口まで開いた。 そして、俺も孝介さんに釣られ、吹き出した。

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