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第4話

孝介さんの背中を追い、寝室を抜け、廊下を歩くとリビングに着いた。 「立派なマンションですね」 カウンターキッチンと連なるリビングの壁には大型のテレビ、ローソファもテーブルやラグまで上品な雰囲気だ。 「そう?今は1人だけど同居人がいたからかな」 「同居人、ですか?」 「そう。ちょっと待ってね。頭痛むでしょ。鎮痛剤飲む前になにか腹に入れておかないとだけど」 不意に孝介さんが冷蔵庫の前で振り向いた。 「苦手なものとかはある?固形物は辛いとかは?吐き気はない?」 「あ、大丈夫です」 孝介さんが安心したように屈託ない笑みを見せた。 「良かった。俺も腹減っててさ」 「...俺が起きるの、待っててくれたんですか?」 「んー?」 冷蔵庫を漁りながら孝介さんが微かに鼻歌を歌ってる。 「いや?二度手間になるじゃない?纏めて作って一緒に食べたら洗い物も楽だし。簡単な物でいい?」 「はい」 手馴れた様子で孝介さんはキッチンに立ち、調理を始めた。 「なるべく早く作るけど、適当に座ってて?暇ならテレビ付けてもいいし」 振り返ること無く、そう告げる孝介さんの言葉は冷淡とは程遠く、優しかった。 「お待たせ」 運ばれてきた朝食。 ベーコンエッグにサラダ、トースト、オレンジジュースにミネラルウォーター。 孝介さんはオレンジジュースではなく、ブラックのホット。 「美味そう」 「二日酔いにはさ、ベーコンとオレンジジュースがいいらしいよ?さ、食べよ。腹減った」 腹減った、を何回言うのかな、思わず口元が綻んだ。 「一応、玉子、塩こしょうしてはいるけど。なんかいる?」 「なにか、て?」 「ケチャップとかマヨとか醤油とか?」 「いえ、このままで充分です。いただきます」 昨夜、初めて会ったばかりの男性宅で一緒に朝食、て何だか不思議な気分。 だが、悪くないかもしれない。 何も知らない当時の俺は単純にそう思ってた。

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