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第5話 見学
ーー金曜日。
「この辺りのはず…」
学校帰り、晃はバイト先を目指していた。
PPP,,,
辺りを見渡していると、携帯が鳴った。
「もしもし。」
「もしもし〜彩月君?今、どこらへん?」
「ええと…駅前の歩道橋を渡って、ヤマトビルという建物を通り過ぎたところです。」
「コンビニ見える?」
「あ…はい。ちょっと先にあります。」
「その手前で曲がってすぐだから。」
「わかりました。」
この前はよくたどり着いたな…。
やっぱり、どうやってカフェに行き着いたかは思い出せなかった。
「お、来たね。」
「すみません、遅刻してしまって…」
「いいよ、5分ぐらいだし。それに今日は仕事じゃないからね。見学と、勤務条件の話するだけだから。」
「はい。あの、このカフェって…」
「うん。」
「普通のカフェではない…んですよね?看板見たんですけど。」
「そうそう。ここは、執事喫茶なんだよ。」
「執事…」
「そう、お店に来るお客様のことは、お嬢様・お坊ちゃんとお呼びする。そして出迎える時は、お帰りなさいませと声をかけるんだ。」
「はあ…なるほど。」
そうは言ったものの、よく分からなかった。
執事なんて、普段聞かない言葉だ。
「どういうものか、想像つく?」
「ええと…平凡な家庭で育ったので、よく分かりません」
「はははっ!そりゃねぇ、ほとんどの家庭には執事なんていないからね!」
「あ…そうですよね。想像もできなくて。」
「そっかあ。オッケー、君が天然だってことは分かったよ〜。でもなんだか品があるんだよね!そこが刺さったんだ。」
「刺さった?」
「グッときたっていうか、うちで働いて欲しい!って思ったの。」
「俺…バイトの経験ないから、うまくできるかどうか。」
「ポテンシャル十分だから大丈夫!一からちゃんと教えるから、任せといてよ〜。」
「はい…よろしくお願いします。」
店長は、ガシッと晃の手を握った。
「こちらこそよろしく!あ、これ、僕の名刺です。」
店長から、名刺を受け取った。
「菜月…壮司さん。」
「そう、僕の名前ね!ああ、それと。」
「?」
「接客中の一人称は、"俺"じゃなくて、"私"でよろしくね。あとこれ、言葉遣いとか作法の本貸すから、勤務日までに読んで来てね〜。」
「は…はい。」
なんて分厚いんだ…辞書?
これを来週までに読む…間に合うだろうか。
「大丈夫、君ならいける!」
「はあ。」
バイトは仕事だ。簡単なことじゃない…しっかり頑張らないと。
「じゃあ、スタッフルームの方行こうか。」
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