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第7話 融和
ーー月曜日。
週が明けた。
朝礼が始まろうとしていた時、後ろから声が聞こえた。
「…おはよ。」
二三月だ。
転校初日以降、学校に来ていなかった。
「おはよう。…体調崩したのか?」
「え、いや…ちょっと、家の用事で。」
「そうか…あ。」
もしかして、仕事だったんだろうか。
「なに?」
「いや、なんでもない。」
「…今日、昼さ…」
「うん?昼?」
「飯、持ってきた?」
「いや、また購買に買いに行くと思う。」
「俺も行っていい?」
「もちろんだ。昼はしっかり食べないとな。」
「ああ…そうだな。」
「4限終わったら、走ろう。早く行けば、混まないうちに買えるから。」
「また走るのか…」
キーンコーンカーンコーン。
4限終了のチャイムが鳴り、晃と二三月は購買へと向かった。
「ふう。1番乗りだな。」
「ハア、ハア…。お前、足速いよな。」
二三月は息を切らしながら言った。
晃は余裕そうな表情を見せた。
「走るの好きなんだ。でも廊下を走ってるのを先生に見つかると怒られるから、注意が必要だけどな。」
「途中、後ろから教師の声が聞こえた気がするけど…。」
「そうだった?」
「たぶん…まあいいか。何食べる?」
「うーん、早く着いたからなんでもある。今日は、コロッケパンにしようかな。」
「わかった。コロッケパン2つ。」
「はぁい、どうぞ〜。」
「あ、二三月。お金…」
「いい。早く行くぞ。」
足早に購買を去り、屋上へ続く階段へ移動した。
「二三月、お金払うよ。」
「いいから。この前のお礼。」
「でも、この前のはお祝いだ。」
「じゃあ、お祝いのお礼。普通するだろ?」
そういうものか?
「どうもありがとう。」
「あと、これお土産。」
二三月は、ガサッと白い袋を晃へ手渡した。
包装紙に包まれているが、缶に入ったお菓子だろうか…少し重たかった。
「え、いいのか?」
「うん。」
「なんだか高級そうだな…」
「そうでもない。」
「…仕事だったのか?」
「! …俺のこと、調べた?」
「えーと…後輩が少し教えてくれて、MHKニュース以外の番組見てみたんだ。でも、二三月は出ていなくて…実はまだよく分かってない。」
「いいよ、知らなくて。」
「友達のことなら、知りたいと思う。」
「友達…」
「早かった?」
「ふはっ、そんなん早いも遅いもないだろ。」
そう言って、二三月は笑った。
晃は、少しホッとした。
「そうだよな。」
「お前には…学校での俺だけを知っていて欲しい。」
「先週は、全然学校に来ていなかったじゃないか。」
「ああ。たしかに、仕事が立て続けに…あ。」
「仕事で忙しかったのに、お土産買ってくれたのか。」
「違う、違う。別に忙しくないし、大したもんじゃないから。」
「嬉しいな。」
笑った晃を見ながら、二三月は口を開いた。
「…なるべく、学校来るから。」
「ああ。ちゃんと学校に来て、勉強しないとな。」
「…そうだよな。」
ーー夜。
塾が終わり、家に着いた。
晃はリビングの机の上に、二三月から貰ったお土産の袋を置いた。
手を洗っていると、母の驚いたような声が聞こえてきた。
「あら、これどうしたの!?」
「友達がお土産だって、くれた。」
「これ、前にテレビでやってた高級洋菓子店のお菓子じゃない!?すっごい高いのよ!いいのかしら、こんなのもらって!?」
「そうなの?大したものじゃないって言ってたのに…」
「海外から出店してきたお店よ!こんなに良いもの、なんでくれたのかしら。」
「うーん…」
「ねぇ、ちゃんとお礼言ったわよね?私、お家に電話かけなくていいかしら!?」
二三月の家の電話番号も知らないし、それに嫌がるかもしれない。ここは、阻止しておこう。
「大丈夫、しっかりお礼言ったから。」
「そう?なら、いいかしら…それにしても、食べてみたかったのよ、このお菓子!あら〜可愛い箱ね!ちょっと頂戴?」
「いいよ。」
二三月には、お礼だけ言っておこう。
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