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第10話 報告
ーー火曜日、夜。
20時にバイトが終わり、帰宅した。
おかえりと、俺を出迎えてくれた母は、夕飯を作り終えて帰りを待っていたようだ。
「これ、お弁当。友達が、美味しかったって。全部食べたよ。」
「え、本当?良かったわ〜!朝5時に起きた甲斐があったみたいね♪」
「うん。ありがとう。」
「これからも、お弁当作ってもいいのよ?パンだけで足りてるの?」
「でも、朝早く起きて大変でしょ?」
「別にいいのよ。あんたの作るなら、私も自分の分作るし。」
「じゃあ、時々お願いしようかな。」
「バイトはどうだった?」
「普通のカフェとは違うけど…すごく勉強になると思う。早く慣れたい。」
「そうなの?たしかに、今から仕事の大変さを学んでおけば、大人になってから楽よ♪」
「うん。そうかもね。」
「塾はどう?上のクラスにしたんでしょ?」
「予習ちゃんとしないと、難しそうだけど…先生の教え方が上手いから。」
「へ〜、良い先生がいて良かったわねぇ。」
「新5大目指すことにした。先生に勧められたから。」
「なにそれ?偏差値高いの?」
母も、大学のことはよく分かっていないようだ…。
「うーん、たぶん。難しそうだけど、今から勉強すればいけるって、先生が言ってた。」
「そうなの?まあ、あんたが気に入ったとこなら良いけどね。」
「そういえば、この前初めて塾行った日、柊に会った。」
「あ!柊くんといえば…。」
「なに?」
「さっきね、皆月さんに会ったの。」
「柊のお母さんってこと?」
「そうそう。近くに住んでるのに、あまり顔合わす機会なくて、久しぶりにお話ししたんだけど…」
「うん。」
「柊くんのお父さん、急にいなくなっちゃったらしいのよ。」
「…え!?」
「携帯も繋がらないし、会社にも急に辞職届出して消息不明なんですって…。私びっくりしちゃって、言葉が出なかったわ〜。」
「そんなこと…あるんだ。」
「私、知り合いに紹介されたパートで都心まで出てるじゃない?お昼仕事して、夕方は帰るの急いでるから、噂話とかも聞かなかったし…ほんとに驚いたわ。でも皆月さん、柊くんもいるし、自分が頑張らなきゃって言ってた。」
「こないだ柊に会った時…。」
「どんな様子だった?」
「普通だったよ。だから、分からなかった。すごく大変な状況だったんだ…。」
「そうね。一応、お金だけは振り込みがあるらしいけど。」
「そうなんだ。」
「あんた、柊くんのこと気にかけてあげてよ。年頃だし、親に言えないこともきっとあるでしょ?1人で悩んでたらって思うと…。」
「うん…え、例えばどんな?」
「え?えーと…それ母さんに聞くぅ?心当たりあるのはあんたでしょ?」
心当たり…?
そういえば…。
会うたび、柊は俺に何か言いたげだ。
でも、何も言われないし、聞かれない。
俺の気のせいかもしれないけど。
「ほら、男子校生ならではの悩みとか…私もよくわからないけど!」
「うん…。連絡してみるよ。心配だから。」
心配だ。本当に。
ついこないだまで、しばらく会っていなかったし…。
ズキッ
また、この頭痛だ。
最近多い気がする。
原因は、なんだろうか…。
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