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第14話 性質
ーー土曜日、PM3時。
執事喫茶・デイライトは、昼営業が午前11時から午後3時まで、夜営業は午後5時から8時までだ。定休日は月曜日。
昼営業終了の時間になり、最後のお客さんを見送った。
「お嬢様、いってらっしゃいませ。」
「ありがとうございました〜
行ってきま〜す!」
お客さんが出て行くと、佐藤先輩が声をかけてきた。
「お疲れ、晃くん。」
「佐藤先輩。お疲れさまです。」
「最近の若い子って、何やらせても器用にこなすよな。慣れるのも早いし。」
すると、近くにいた店長が言った。
「志恩くん、若い子全般じゃなくて、晃くんが器用なんだよ。僕が見込んだんだからね〜。」
「俺だって、最初会った時から、期待の新人って思ってましたよ。」
「お前、最初は高校生入れるなんてって言ってただろ。」
テーブルを拭いていた鈴木先輩が、話に入ってきた。
「鈴木、てめぇ、すっこんどけよ。」
「…あ?んだと、やるかオイ。」
「ちょっとちょっと、君たち元ヤン出てるから!閉店したからって油断しすぎ!」
店長が、険悪な2人の仲裁に入った。
「えーと、先輩方は…元ヤンなんですか?」
「店長、そんなことバラさないで下さい。恥なんですから。」
「そうっすよ、黒歴史!晃くん、今のやりとり全部忘れて。」
「わ、分かりました。」
「分かったって、ほんとか〜?」
佐藤はそう言って笑いながら、晃の肩に腕をまわした。
「オイ。新人に汚ねぇ手で触るんじゃねぇ。」
「手指消毒完璧だっつの、憶測で語るなボケ。」
また険悪な雰囲気に逆戻りした…。
「はいはい、晃くん、変な影響受けないうちに、仕事終わったし帰って大丈夫だよ!」
「ありがとうございます。お疲れさまでした。」
「「お疲れ!」」
スタッフルームに向かって歩きながら、菜月(店長)は晃に話しかけた。
「でもほんと、慣れるの早いよね。なんか気になることとか、嫌なことあったら言ってね?従業員が気になることは、お客様も気になったりするから。あ、あの2人は口悪いけど、ほんとに仲悪いわけじゃないから!たぶん!」
「そうなんですね。良かったです。」
「うん…たぶんね…。」
「仕事に慣れてきたのは、店長や先輩方の指導のおかげです。」
「あらら〜、本当に良い子だね。僕の目は狂ってなかったよ〜。」
「あ、店長。ちょっと、動かないで下さい。」
「え?」
スッと、晃は菜月の顔に手を伸ばした。
菜月は少しビクッとして、体を強張らせた。
「すみません、まつ毛が抜けてたので。取れました。」
「あ、ああ、そうだった?ありがとう。」
「店長、長いですよね。まつ毛。」
「いや〜、君には負けるよ…」
色々と、ね…。
年甲斐もなく、ドギマギしてしまった。
晃くんて、こわいなぁ。
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