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第16話 運動②
カコーン!
「うっし、ターキー!」
「お前、なんでも上手いんだな。」
「そっちこそ、さっきスペア取ってただろ。ガター1回も出してねぇし、やるじゃん。」
「ボウリングって、あんまりやったことなかったけど、面白いな。」
「球技はなんでも面白いんだよ。」
「小学生の頃、ドッジボールもすごい強かったよな、柊は。」
「ああ。よく覚えてんな。」
「いつも前に出ててさ。俺が狙われそうになったら、守ろうとしてくれて…」
ズキッと、頭痛がした。
「そうだったか?」
「うん…たしか。」
「? 大丈夫か。」
「うん、何ともない。」
「明日、絶対に右腕筋肉痛だぜ、お前。」
「明日は体育がないからいいんだ。」
「ふーん。これ終わったら卓球すんのか?」
「する。全然疲れてないからな。」
ボウリングは、柊の圧勝だった。
…強すぎる。
「お前、グリップの握り方から違ぇよ。」
ボウリングレーンから、卓球台に移動した。
「え、そうなのか?」
「こうだよ。」
「それどうなってるんだ?こうか?」
「違う。まあ、シェークハンドつって、こっちの持ち方もあるけど。」
「うーん…。いや、俺もさっきの柊の持ち方でやってみたい。」
「しょうがねぇな。こうだ。」
柊は、晃のグリップの持ち方を直した。
「これで打つのか…難しそうだな。」
「慣れるまではな。」
「小学生の時、やっていたっけ?」
「選択だった気がするな。バドミントンか卓球で。」
「ああ、そうだった。そういえばお前、卓球の方で優勝してたよな。」
「なんでもできちまうんだよなぁ。」
俺はたしか、バドミントンを選んだ。小学生の頃の方が運動してたな。
なんだか、所々忘れてるけど、柊といると思い出してくる。
「今日はあれだな。試合はなしにして、ラリーすんぞ。ラリー続けんの目標な。」
「わかった。」
卓球に熱中し、気付けば夕方になっていた。
「楽しかったな!」
「ああ。お前も最後は形になってたな。」
「うん、柊のおかげだ。また行こう。」
「ああ…お前さ。」
「なんだ?」
「あの時のこと…」
「あの時?いつ?」
「…いや、なんでもない。うちで飯食ってく?」
「いや、帰るよ。ありがとう。」
「そうか。今日は、朝から世話んなったな。」
「ううん。久々、柊と遊べて良かった。」
「……。」
いつの間にか、分かれ道まで来ていた。
「じゃあな。」
「柊、待ってくれ。次はいつ遊ぶ?」
「お前…小学生かよ。」
「だってお前、部活とか忙しいだろう?予定決めておかないと。」
「んなことねぇって。別に決めておかなくても…」
「俺は…また遊びたいよ。」
俺だけなのか?
こんなに楽しい休日は、久しぶりだった。
「んな顔すんなよ。」
ぐにーっと、柊が晃の両頬をつねった。
「あ、またお前!」
すると、柊はつねっていた手を緩め、そっと晃の頬に手を添えた。
「俺はさ…やっぱ割り切れねぇよ。あんなことしても、お前は優しいから、俺といてくれようとする。俺の気持ちは変わんねぇけど、それでも良けりゃ、来週でも再来週でも…お前のために日曜空けとくぜ。」
「……。」
なんだっけ…大事なことを忘れている気がする。柊と何か…あったんだっけ?
一緒にいれば、そのうち思い出せるだろうか。
「晃?なんか言えよ…俺だけ恥ずいだろ。」
「あ、うん…。じゃあ、来週も遊ぼう!また連絡するから。」
「…おう。じゃな、気をつけて帰れよ。」
「柊もな!」
俺は…優しいのか?
たしかに柊のことが心配で、会いに行ったつもりだった。でも結局、俺が柊と遊びたかっただけかもしれない。
幼馴染で、いつも一緒にいたから。
それなのに、最近会っていなくて…でも、どうしてなのか、思い出せない。
柊が言っていた、あんなことって…?
ズキッ
なんだか今日は、偏頭痛がする…。
柊の背中を見送る。
俺も、帰ろう。
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