ーー日曜日。 午前11時。 「住所だと、この辺りか…？」 二三月は、晃の家を探していた。 その時、斜め前の家の扉が少し開いた。 「二三月、ここだ。」 「うわ！？びっくりした…。よく来たの分かったな。」 「気配がしたから。」 「うそだろ！？」 「うそだよ。ほんとに偶然。」 「ぶはっ！お前って、それ天然なの？ボケ？」 「ボケたつもりだ。狭いけど、どうぞ。」 「お邪魔します。」 「うん。来るまで何もなかった？」 「何も…なんで？」 「二三月のことを知ってる人に、声かけられたりとか…」 「俺のことは気にしなくていいよ。」 「うちにわざわざ来てくれるのに、そういうわけにもいかない。」 「タクシーで近くまで来たから、大丈夫。」 「そうか。」 晃は、二三月を2階の自室まで案内した。 「お茶どうぞ。」 「ありがとう。」 「初めて紅茶のティーバッグ買ったんだ。うち、ほうじ茶しかなくて。どうだ？」 「美味しいよ。」 「お菓子もあるぞ。」 「あ、これ土産。」 「いいと言ったのに。」 「自分用に買ったついでだよ。」 「ジュベール…？」 「うん、美味いらしい。お母さんと食べろよ。」 「ありがとう。俺のはスーパーのお菓子だけど、どれでもどうぞ。」 「俺、これ好き。」 「小さい頃からあるよな。」 「そうそう。懐かしい。」 「ゲームも少しならあるけど、やる？」 「うん、後で。」 「マンガも少しある。映画でもみるか？」 「そうだな…」 「…何かやりたいことがあるのか？」 「え？」 「なんでもいいぞ。うちでできることなら。」 「…話を、してもいいか？」 「ああ。」 「俺の…」 「話したくないだろ？無理に俺は…」 「ありがと。でも、彩月は友達だから、やっぱり俺のこと知って欲しい。いつも気にするなって言ってたくせに…ごめん。」 「謝る必要はない。」 「うん…俺さ、」 二三月はゆっくりと、辿るように話してくれた。