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第2話

ユウヤの話 折角の夏休みなのに、恋人は地元で同窓会があるとか言って帰省している。付き合って3年目、男同士だから結婚を考えるタイミングでもないけど…ないけど、付き合い始めた頃とはもう違うんだな、と思う。 しっかし、社会人の貴重な夏休みを恋人と合わせないってのは、まぁ何か、そういう事なのかな。 久しぶりの一人旅になったので、気楽な出会いを期待して外国人の多い宿に部屋を取った。何年も前に来たことのあるところだ。 ピヨピヨした学生ばかりが集まるところは落ち着かない、と思って選んだ宿だったけど行ってみると日本人の大学生が数人いた。 1人は品のある、いいうちで育てられたんだろうな、って雰囲気の男の子だ。 受付できれいな英語を話していた。 田舎から出て、二度と戻るもんかってやってきた僕とは違うタイプだ。 屋上にはいつも通りたくさんの人が集まっていた。 テーブルの上に飲み物とカバンを置かせてもらって、旅に出たテンションでうっかり買ったジャグリングボールを始める。 誰かの奏でるタブラのリズムに合わせて、昔覚えたトリックを練習していた。 しばらくやってると、意外と体が覚えている事が分かる。 指のきれいな男がギターを持って加わった。僕の好み。でも女たちが隣に座っている。 同じテーブルには薬がらみの自慢話をしている男と、連れの女。キメ過ぎてボヤを出して火傷しただの、日本でもやってるだの、くだらない事を話している。 でも回ってきた巻煙草はちゃっかり相伴にあずかった。

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