6 / 31
第6話
ユウヤの話
眠くない?って聞いたら「いや、まだ…。ユウヤさん眠いですか?」って聞き返された。
彼女いたって言ってたけどこの子バイじゃないのかな。
いかにも欲情してるみたいな潤んだ眼でこっちを見てるし、手を出してほしいんだろうな…自覚なさそうだけど。
ああ、面倒臭い。
やりたかったらそっちから誘ってくればいいのに。
感じいい子だけど、初めての相手なんかになったら勘違いされそうだし、恋人いるからやり逃げ してよければ僕から誘うんだけど。
でも、こうやってやれるかやれないか、誘うか誘われるかのせめぎあいでやり取りをするのも楽しい。たまになら、気に入った相手なら。
「んー?眠くないんだったらもう少し話そうよ」
と、ホシザキくんが言いたいであろうことを代わりに言ってあげたら、嬉しそうだけどちょっと寂しそうな顔で笑った。
その寂しさは、一歩を踏み出せないせいなんだろうな。学生の時こんな子に会ってたら恋してたかもしれない、と考えると胸がちょっと締め付けられた。
話そうよ、と言ったけれど、お互いもうぼーっとしていて話は長く続かず、変な沈黙が訪れた。
目が合った。いや、会話をしていれば誰とでも目がある事はある。
目を逸らさなかった。お互いに。
ホシザキくんが重心を動かしてこっちに来た。
お?やる気になったのか、来いよ若者。と心の中で呟いてみたけれど、途中で止まった。
「あの、ユウヤさん。俺…」言葉も途中で止まる。何だよ。
可愛いけど、初めての子とやるのは面倒くさい。相手が途中で怖気づいてしまうと、こっちもお預けになってしまうし。
でも、こんな風にやりたがっている相手に応じるのも大人の役割なのかもしれない。なんだか今日は自分に言い訳してばかりだ。
一本だけ持っていた巻煙草を出す。火をつけて深く吸い込み、しばらくしてゆっくり煙をはき出した。
何も言わずにホシザキくんの口元に持っていったら、指ごと咥えられてしまった。
多分、わざとじゃない。
ともだちにシェアしよう!