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第11話

ユウヤの話 タオルと着替えを持っていったら、シャワーから上がったおーじさまが、半勃ちの状態でこっちをみてる。若いなぁ。まだ何回もしたいんだろうな。 さっさと服着て部屋を出てもらわないとこちらの自制心も厳しいのでできるだけそっけなくしたら、さみしそうな顔をして帰っていった。 翌朝起きたら、ホシザキくんのせいかやけに膝が痛かった。いくら指だけだからって、椅子に座ってあんなこと(対面座位)するもんじゃない。気持ちよかったけどさ。 もう一度シャワーを浴びて、朝ごはんに出かける。 街角で、地元のサラリーマンたちが集まっているあたりに行けば、それなりに美味しいものにありつけるはずだったが、今日は炭火でトーストしたパンと、フライドエッグ(まさに油で揚げたような目玉焼きだ)、そして自分でネスカフェ分包をお湯に溶くホットコーヒーになった。ウェイターの男の子のお尻がぷりっとして可愛かったから、まぁ良しとしよう。 注文を待つ間に恋人に電話を掛けてみたけど出ない。LINEにも既読がついていない。 これは、よくない兆候だ。胸の辺りで暗い膜がかかり始めるような気持ちを抑え込むために明るい方を見る。 大丈夫、まだ大丈夫。悪い事はまだ起こってない。 気を散らそうと、パンを食べながら周りにいる身なりの良い男たちと軽く話をする。忙しなくかきこんで、パン屑を付けたまま去って行く人もいれば、議論が盛り上がって話し続けている人のいる。 「おはようございます」 突然後ろから声を掛けられた。夜聞いた時とは印象の違う涼やかな声。 「おはよう、早いね」 言いながら振り向いたら、くそ暑いのにさわやかな笑顔でホシザキ君がこちらを見ていた。太陽の下で見ると、随分大人びて、しっかりして見える。ちょっと頬が赤いのは暑いせいだと思いたい。それがかわいく見えるのは気のせいだと思いたい。 ああ、でも恋人と連絡がつかない今の僕にはちょうどいい相手かもしれない、何て(よこしま)な思いが臍のあたりをくすぐる。 「昨日は……昨日、お借りした服、今洗ってもらってるので夕方お返ししますね」 余計な事を言わない賢さも好ましい。

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