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第19話
星崎潤の話
ユウヤさんの言葉に混乱した。そりゃあ、会うのが2回目でこんなことして付き合いましょう、って展開になるとは思っていないけど、なんでそんな事を言われるのか分からなかった。
やりたいだけだった?それはお互い様だけど…。
でも僕は、まだ2回しか会ってないのにこの人を好きになりかけている。ちゃんと言葉で伝えなきゃ。
何か言おうとしたら、そのまま押し倒されて押さえ込まれた耳元で
「こんなところで止めないでよ」って言われた。
舌でなぞられると、そこに耳がある事がよく分かる。気持ちいいとか、感じるとか、そんな言葉に処理される前に僕の口から声が漏れる。
首筋を舐められて、もう何を言いたいのか分からなくなる。
動物みたいな言葉しか出せなくなった僕は、ユウヤさんを受け入れて絶頂に導かれた。
翌朝、肩を揺すられて目が覚めた。服を着たユウヤさんが立っていた。
「帰るね。ちゃんと鍵閉めなよ」
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結局プライベートな連絡先は交換しなかった。それだけだった、と思ったほうがいいのかな。どうしてもこんなに拗 れてしまっているんだろう。
会わなければ、忘れられたかもしれないけど、一緒に仕事をしているとそういう訳にもいかない。
クライアントからのオーダーは二転三転し、度重なるデザイン変更を聞くために僕らは何度も足を運んだ。
そう、デザインが最終確定した後、僕らは2人で飲んでいた。六本木の小ぎれいな蕎麦屋で差し向かいに座っている。
こんなに距離は近いのに、こちらから手を伸ばすとすっと離れてゆく。
「仕事以外の事、話をしてもいいですか?」
「ダメ」
「あの時、どうして付き合わないからいい人探せって言っんですか?好みじゃない、っていうなら分かるけど」
ユウヤさんが苦笑する。
「ダメって言ってるのに強引だなぁ……やると勘違いしやすいでしょ?初めての相手なんて、運命の相手だ!って思いっきり勘違いするでしょ」
「そんな事、初めてじゃなくてもあり得るじゃないですか」
「じゃあどうして…星崎くんは僕が好きなの?したからでしょ?」
ユウヤさんの言葉は僕を追い詰める。
「…した後に好きになる事だってあるでしょう。ユウヤさんはないんですか?」
しばらくの沈黙の後、怒ったような空気が漂った。でも顔を見るとまたあの冷たい笑顔だ。
「あるよ。でもそれは僕の話であって君とは関係ない」
酔っていた。だから地雷なんだろうな、と思いつつ口が滑ったんだ。
「それが初めての相手なんですね」
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