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第21話
星崎潤の話
徒歩で行ける場所だったけど駅の改札で待ち合わせした。
距離感の掴み切れないメッセージをもらったのが朝6時。ちょっと引っかかるものがあって、すぐに返信した。
(ユウヤ)おはよう。学芸大の方にカレーの美味しい店があるのですが今日食べに行きませんか?
(星崎)おはようございます。カレー、丁度食べたいと思ってました。お昼ですよね?行きましょう。
すぐに既読が付いたのに、その後返信があったのは11時だった。
「こんにちは」
仕事の時の几帳面さからは想定していなかったけど、ユウヤさんは20分程遅れてきた。なんだか妙ににこやかなのに、落ち着きがないし疲れているように見える。そのまま、天気の話とか当たり障りのない事を喋りつつ、駅から少し離れた喫茶店のような店に着いた。
「ここ、辛くておいしいカレーを出してくれるんだ。辛いの平気?」
「最初に会ったの、どこだと思ってるんですか?辛いの食べられなかったらあんな国に行けませんよ」
「そうだね」
カレーは確かに辛かった。どうみても喫茶店なのに、こんなに真剣に辛いとは思わなかった。二人で汗をかきながらカレーを食べた後に、チャイを飲んだ。昼時なのに、日曜だからか店はすいていた。
前回気まずいままで別れて、突然こんな風に一緒のご飯を食べているのが不思議だった。
店を出ると秋の風が熱くなった体を冷ましてくれる。
「カレーは本格的なのに、チャイは普通でしたね。ショウガとシナモンだけだった気がします」
「うん…」
何か、言いたいことがあるのかな?口数が少ない。黙ったまま駅とは反対の方向に歩いて行く。どこに行くのか分からないままついて行く。
「…コーヒーでも、飲まない?うちで」
長い沈黙の後だったから、それはコーヒーに誘われている訳じゃない事くらい、僕にも分かる。
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