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第28話

ユウヤの話 僕の手を振り解きはしなかったけど、腰のところで抱き上げて運んでいるせいで身体が安定しなくて嫌なのか、星崎くんは躊躇うように両手を僕の肩に乗せている。 ベッドの前で床にそっと降ろすとほっとしたように息を吐き、少し体を離した。でも手は肩に触れたままでこちらをじっと見ている。 何て言えばいいのか分からない。好きなんだけど、好きだよって言葉は嘘くさいし…ましてや愛してるなんて言ったら場違い甚だしい。 「…さっき僕に怒ってるし傷つけられたって言ってたけど、それは、許してないって事?」 唇に力が入って、ちょっと考えるような素振り。 「怒ってない訳でも傷ついてない訳でもない、って言ったつもりですけど…」 「今謝っても許してくれる?」 ああ、なんだ、って感じの顔をされた。 「もう許してますよ。そういうのひっくるめて嫌いにならなかったんですから。もうそれ忘れて下さい……それに、誘っているのは僕の方ですし」 殆ど囁くような語尾になっていたけど、聞き逃さなかった。目尻を赤くして泣きそうな顔を見ると気持ちも身体も止まらなくなる。 「ごめん…、ありがと」 これが今言える精一杯だった。 さっきの彼の言葉に促されるように星崎くんの服に手を伸ばしてボタンを外し始めると、肩に置かれていた手が下に移動して僕の服を脱がし始めた。 器用そうな指先がゆっくりと自分の胸元のボタンを外してゆく。気づいてないだろうけど一つ一つの動作が無自覚に僕を煽ってくる。 ボタンを外しているうちにもう服の事なんか考えられなくなり、深くキスをしながら身体から剥がすように脱がせた。下に着ていたTシャツをたくし上げて腰から胸に向かって掌を移動させてゆくだけで、星崎くんは敏感に反応して大きく喘いだ。すでに硬くなりかけた胸の突起に唇を付けると僕の頭をぎゅっと抱えて小さく声を出した。  そうだった、この子は初めて会った時からこっちが心配になるくらい体を預けてきて快楽に夢中になっていたんだった。明日仕事がある事なんかきっともう忘れている。 僕の服を脱がせようとしていた手を取って指を絡め、ベッドに腰かけてそのまま寝転んだ。 「上においでよ」 繋いでいる手が微かに汗ばんでいる。でも僕の方をまっすぐに見ながらスプリングをきしませて上に乗ってきた。 「下も脱いで。手でするから」 最後までしないって分かって一瞬複雑な表情をしたあとに、恥ずかしそうに膝立ちでズボンと下着を脱いでいるのを見ながら、腰を浮かせて自分も脱いだ。 先端からはもう先走りが溢れていて、指で拭うように触れると彼の口から切なそうな声が漏れる。 向かい合って座りキスを交わしながらお互いのものを掴んで手を動かしていた。でも、どんどん求めてくる星崎くんを見ていると頭がぐちゃぐちゃになり、にじり寄って腰を近づけて手を重ね合い二人の屹立を合わせて扱いた。 彼の肩口に頭をのせて手を動かしていると荒い呼吸の合間に僕の名前を呼んでいた。 それに気づいた瞬間、僕は身震いをして達した。 身体を預けてぼーっとしていると 「…ヤさん、ユウヤさん……帰ってきて下さい」 テレビから流れているのかと思った音が意味を結んで、星崎くんの声になった。 顔に手が触れて目の前に焦点を合わせると、正面に泣きそうな笑顔の星崎くんがいた。

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