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第一章・魔王と王妃14

「これほどのものかっ……!」  フェルベオが顔を歪めて言いました。  ゼロスも激しい魔力の消耗に今にも膝を折ってしまいそうになっています。 「っ、熱反応の上昇が止まらないっ……! こんなに結界を被せてるのに、ぜんぶ突き破ってくる……!」 「ゼロス、弱音を吐くな! こんなものじゃないだろ!!」 「ぐッ。はいっ、兄上!」  ゼロスが更なる魔力を発動させます。  イスラもハウストも険しい顔で結界魔法陣に魔力を送り続けました。 「熱反応の上昇が止まりません!」  熱反応を探知している研究者が焦った声をあげました。魔法陣の光も弱まって今にも消えそうになる。  私はその切羽詰まった光景を愕然と見つめました。  これほどのものなのです。祈り石となったレオノーラの力は、これほどのものなのです。  四界の王全員の力をもってしても一度動き出した祈り石は止めることができない。  この光景に、十万年前にどうしてレオノーラが初代四界の王たちに自分を封じるように願ったのか分かりました。そしてそれすらもせめてもの足掻きだったということも。 「四人の力をもってしても時間稼ぎすら出来ないというのかっ……」  フェルベオが苦々しく言いました。  でも四界の王は諦めません。  ここで諦めれば星に終焉が訪れるということ。それだけは阻止しなければならないのです。  でも限界は徐々に近づいて、その時がとうとう訪れてしまう。  結界魔法陣の光が弱まって、そのまま消えてしまうかと思われたその時。 「――――この力はお前か、ハウスト。お前がいるということは十万年後ということか」  声が、しました。  とても懐かしい声。もう二度と聞くことはないと思っていた声です。  次の瞬間、弱まっていた結界魔法陣が強烈な光を放つ。目を開けていられないほどのまばゆい光。  ギギッ……ギッ……。  光の中で祭壇が、いいえ、デルバートの棺の蓋が開きました。  そして棺から男がゆっくり身を起こします。そう、それは初代魔王デルバート。 「そんな……」  私は息を飲みました。  夢でも見ているのでしょうか。だってそこにデルバートがいるのです。彼は十万年前に死んだはずで……。  驚いているのは私だけではありません。ハウストもイスラもゼロスもフェルベオも、ここにいるフェリクトールや高官たちも愕然とした顔になっていました。  デルバートは地下神殿を見まわすと、「そういうことか……」と嘆息しました。 「お前たちにレオノーラは荷が重かったようだな。時間がない、今は力を貸そう」  デルバートはそう言うと魔力を開放しました。  それは当代四界の王の力と重なって強力な結界魔法陣となります。 「魔王様、上昇していた熱反応が停止しました!」  研究者が声を上げました。  報告に高官たちもざわめきます。  そう、当代四界の王の力にデルバートの力が重なって熱反応の上昇を食い止めたのです。  それは喜ぶべきことですが……。  私たちは驚愕と困惑のままデルバートを見つめました。  だって彼は十万年前に死没したのです。それなのに今、この時代に蘇ったのですから。

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