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第二章・死の褥で見る夢は4

「ごせんぞさま、これはどういうことですか? にんげんをつかまえてかんきんしたって。でもきらわれて、にげられたっておそわりました」 「どういう意味だ」  デルバートがノートを覗きこんだ。  そこに書いてあったのは、初代魔王が四界大戦中に一人の人間の男を捕虜にしたということだった。しかも初代魔王は捕虜にした人間の男を愛したが、嫌われて逃げられたというなんとも不名誉なものである。……この人間の男の捕虜とは間違いなくレオノーラだ……。 「……これを誰から教わった?」 「ちちうえです! ちちうえが、ごせんぞさまはこんなまおうだったぞっておしえてくれました!」 「あの男っ……」  デルバートは当代魔王ハウストを思い出して目を据わらせた。  あの男、初代時代に時空転移してきた時から気に入らなかった。レオノーラによく似ているブレイラを妃として迎えていて、さも『なんだまだ手に入れてなかったのか』と言わんばかりの顔をしていた。存在が嫌味な男だった。 「それも訂正だ。嫌われてもなければ逃げられてもない」  デルバートはきっぱり言い切った。  一度は逃げられたかもしれないが、レオノーラは間違いなく愛してくれた。嫌われたなど断じてない。  そんなデルバートの答えにクロードの顔がパァッと輝く。 「やっぱり〜! わたしのごせんぞさまがきらわれるはずないっておもってました!」 「当たり前だ。俺を誰だと思っている」 「わたしのごせんぞさま!」  クロードは元気に答えた。  今やクロードは尊敬と感激の瞳でデルバートを見つめている。  クロードはお城でお勉強を頑張っているので、ご先祖様から初代時代の話しを直接聞けるなんて奇跡みたいにすごいことだと分かっているのだ。  ゆめみたいです……とクロードはうっとりである。  こうしてクロードは夢中になってたくさん質問したのだった。 ◆◆◆◆◆◆ 「王妃様、お帰りなさいませ」 「ただいま帰りました」  政務を終えて城に帰ると女官たちに出迎えられました。  今日はハウストと一緒にセレモニーに参加したり視察したりしていました。式典期間中は華やかに着飾って外へでる政務が多いのです。  私とハウストの帰城と同じくしてイスラとゼロスも帰ってきます。  イスラやゼロスもそれぞれセレモニーに招待されていました。二人も私たちを迎えてくれます。 「おかえり、ブレイラ、ハウスト」 「ブレイラ、父上、おかえり〜!」 「ただいま。二人も今戻ったところか」 「まあね、今日はセレモニーの挨拶をはしごしてた」  ゼロスが「もうこれって会場巡りだよね」とハウストに笑って言いました。  幼い頃は私の政務にくっついて来ていた二人ですが、今は単独で招待されていますからね。 「二人もおかえりなさい。今日はお疲れさまでした。二人の評判はよく聞いています。立派な勇者様と冥王様だと言われていて私も鼻が高いですよ」 「えへへ、どうもありがとう。ブレイラは自慢に思っててよ」  ゼロスが誇らしげに言いました。  イスラも当然のような顔をしていました。  ふふふ、ほんとうに私の自慢の子どもたちです。  そして私にはもう一人自慢の子どもがいるのです。  今日は留守番をさせていたので寂しがっているかもしれませんね。あの子は物分かりがよいので澄ました顔で「せいむならしかたないです。かんぺきにおるすばんできます」と言ってくれますが、どこでも一緒について来たがる三男なのです。 「ちちうえ、ブレイラ、にーさまたちおかえりなさい!」  クロードの声がしました。  嬉しそうに私たちのところに駆け寄ってきます。  その手には自習勉強用のノートを持っているので、どうやらお留守番の間はお勉強を頑張っていたようですね。 「ただいま帰りました。クロードもお留守番ありがとうございました。変わりはありませんでしたか?」 「だいじょうぶです! かんぺきにおるすばんできました!」 「それはステキですね」  いい子いい子と私はクロードの頭をなでなでしてあげます。  そうしているとデルバートが歩いてきました。  今日は書庫の書斎で史書を読んでいたと聞いています。 「デルバート様、ただいま帰りました。今日は、……え?」  疲れた顔です。  よく分かりませんが、とっても疲れた顔をしています。

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