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第二章・死の褥で見る夢は7
空を見上げると眩しいほど澄んだ青。
憎らしいほど美しい青空だった。
青空の下では式典を祝う魔族が歓声をあげている。
今、王都の大通りを魔王の長い隊列が進んでいた。
美しい青空の下、華やかながらも荘厳な隊列。それを迎える魔族には笑顔が溢れ、大歓声で当代魔王と王妃を祝福している。
魔王が人間を王妃に迎えたことは有史初のことで、最初は反感を覚える魔族も多かったが今では当代王妃として祝福していた。
現在の魔界は賢帝と称される魔王と慈愛の王妃を冠し、栄華と繁栄の時代を迎えていたのだ。
それはかつてのデルバートが心から望みながら届かなかった景色。レオノーラに与えたかった幸福。
心臓が痛い。ぎりぎりと締め付けられるようだった。
深海の亀裂に落ちていったレオノーラの姿が今でも瞼の裏にこびりついていて、目の前の大歓声という祝福との落差に視界が暗くなる。
でも今、デルバートは立っていた。
蘇ったデルバートを今生に繋ぎとめるのはレオノーラの望みを叶えるという意志。
たとえすべてを敵にまわすことになったとしても。
「……風か」
ふいに風が吹いた。
清々しい青空には不似合いのぬるい風。
デルバートは地平線のはるか向こうを見据える。
「――――終焉が始まる」
◆◆◆◆◆◆
今、王都の大通りでは魔王の隊列が進んでいました。
荘厳な隊列をひと目見ようとたくさんの魔族が集まっていて、私は馬上から笑顔で大歓声にこたえます。
今までお披露目のパレードでは馬車に乗車していたのですが、今回の式典では騎乗を許されたのです。
馬車も楽しいですが、せっかく乗馬できるのですから私も騎乗で参加したいと思っていました。
「ブレイラ、みてくださいっ。あそこのひとたちたくさんてをふってくれています!」
私の前にいるクロードが教えてくれました。
そちらを振り向いてにこりと笑いかけます。すると歓声が大きくなって少しだけ恥ずかしい。でもとても嬉しい気持ちになります。
今回、私が騎乗でパレードに参加できたのは子どもたちが大きくなったからです。
今までは幼い子どもたちを騎乗させるわけにはいかなかったので、私は子どもたちと一緒に馬車で参加していました。
でもまずイスラが一人で騎乗するようになって、次にゼロス、そして最後にクロードです。
クロードを一人で騎乗させるのはまだ不安だったので、私と二人乗りで参加しています。
「クロード、ほらあちらの方々はあなたに手を振ってくれていますよ?」
「ほんとだ。わたしもちょっとだけふっていいですか?」
「ふふふ、いいですよ。後ろから抱っこしててあげますから」
私はそう言うと前のクロードを片腕でぎゅっとしてあげました。
馬車ならいつも手を振っていますが、騎乗パレードでは安全面が考慮されて私やクロードは手を振れないのです。手綱を握っていないといけませんから。
でもクロードにはしっかり民衆に応えてほしいです。
クロードが照れくさそうに小さく手を振ると民衆がワアッと大きな歓声をあげました。
そんなクロードに私は小さく笑うと、前を進んでいるハウストの背中に目を向けました。
魔王の威厳をまとった背中。魔界を愛し、繁栄をもたらした魔王の背中です。誰よりも同胞の魔族を愛している。それが当代魔王ハウストです。
そして私の後ろにイスラとゼロスが並んで配置されて進んでいました。
二人は四界の王なので私より身分は上なのですが、この式典ではハウストと私の子息として参加しているのです。
それにしても私の後ろに向けられる歓声がすごいことになっていますね。まさに黄色い悲鳴というもので、とても甲高い歓声です。
「キャーーーー!! 勇者さまああ〜!!」
「冥王さま、こっち向いてくださ〜い!! キャアア、手を振ってくださったわ!!」
「勇者さま、ステキーーー!! 勇者さま、勇者さま〜〜!!」
「冥王さまがこちらを見てくださったわ!! ご立派なお姿!!」
「凛々しいお姿っ……。勇者様、愛しています!!」
「かっこいい!! はああん、ステキ……!!」
……すごいです。
耳が痛いほどの甲高い歓声です。
イスラとゼロスへの歓声は年々熱烈なものになっているのです。
私はさり気なく後ろのイスラとゼロスを振り返りました。
長男イスラは端麗でいて凛々しい面差しの勇者です。今や立派な成人男性で、その聡明さと強さは歴代最強の名を冠するに相応しい勇者です。
次男ゼロスはまだ少年のあどけなさを残しながらも時折大人びた表情を見せるようになりました。当代冥王は現在最年少の四界の王ですが、空に向かって伸びる若木のように日々成長しています。
私の視線にゼロスが気づきます。
「ブレイラ、見て。みんな僕のこと好きみたい」
いたずらっぽくニヤリと笑うゼロス。
生意気ですね。でも間違いではありませんね。
――――――
新年あけましておめでとうございます!
昨年は応援していただきありがとうございました!本当に励みになっているので心から感謝しています!
本年もどうぞよろしくお願いします!!
今年は勇者のママシリーズの完結編を完結させることを目標にがんばります。
本当に長いシリーズになっているんですが、自分でもびっくりするほど楽しい気持ちで書き続けてます。
シリーズ一作目から書けたらいいなと構想していた完結編まで書くことができるのは、今まで応援してくれていた方々のおかげです。
私自身思い入れが深く大好きなシリーズですが、執筆は孤独な作業なので応援が無くては辿りつけない完結編でした。
最後まで書き抜きます。どうぞ今年も応援をよろしくお願いします!
それと神話の電子書籍作業もがんばりますね。今、投稿作品の天妃物語を同時進行で書いているので、それが終わり次第集中です。
『天妃物語 〜鬼討伐の条件に天帝の子を身籠ることを要求されて〜』について。
現在、カクヨムで天妃物語を連載しています。
あと少しで完結です。こちらもぜひ読んでください。切ない系だけどハピエンの恋愛ものです。
また、この『天妃物語』はカクヨムのカクヨムコン9にて投稿している作品です。
カクヨムのアカウントをお持ちの方で、小説を読んでおもしろいと思っていただければ、どうか、どうか私にカクヨムの星を入れてください!一緒にブクマもしていただると嬉しいです!
私、カクヨムコンに投稿するのは初めてだったんですが、中間選考が読者選考だと知って震えました……。
カクヨムって大人の女性向け恋愛ジャンルが他より弱めのサイトだったんですね。投稿した後に「マジか……」てなりました。
私はふだんエブリスタ中心で活動しているので、カクヨムという戦場に涙目になってます…。
どうかカクヨムのアカウントを持っている方で、『天妃物語 〜鬼討伐の条件に天帝の子を身籠ることを要求されて〜』を読んでおもしろいと思っていただいたなら、どうかどうか私に星とブクマをお願いします!よろしくお願いします!
今年もがっつり楽しく執筆を頑張ります!!
応援を本当にありがとうございます!!
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