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第三章・初代王の夢と目覚め2

「もう会うことはないと思っていた。世界を四つに分けたあの時に、もう二度と会うことはないと」  デルバートは無言でリースベットを見つめます。  そんな様子にリースベットはスッと目を細めました。 「まさかそなたが先に蘇っているとはな。必然か偶然か」 「なにが言いたい」  デルバートが低い声で言いました。  不穏さを感じる二人に私はハラハラしてしまう。  初代時代は四界大戦の真っただ中だったので、初代王たちはお世辞にも仲良しというわけではないのです。 「そんな怖い顔をするな。われは蘇ったばかりだというのに鬱陶しい」  リースベットがからかうように言うと、デルバートは舌打ちして顔を逸らしてしまいました。  こうして初代王同士の再会は終わりました。感動の再会というにはあっさりしていますが彼らはこれでいいのでしょう。  リースベットが改めて私たちを見ました。 「さて、これからのことだ。十万年が経過してレオノーラの封印が弱まった。封印を強化しなければ星のエネルギーが暴発して星は終焉を迎えるじゃろう。それは人の滅亡などという生ぬるいものではない。すべての生命がそこで終了するということじゃ。なんとしてもレオノーラの封印を強化する必要がある」  それが世界を救う唯一の方法。  私はイスラとゼロスを見ました。  二人は緊張した面持ちで頷きます。  次は初代勇者イスラと初代幻想王オルクヘルムを蘇らせなければならないのですから。  その日の夜。  私たち家族は魔界に戻っていました。  リースベットとデルバートは精霊界に残っています。精霊界の研究室には各世界から禁書を解明する研究者や学者が集まっているので、二人はそれに興味を示したのです。  そして私たちは初代勇者イスラと初代幻想王オルクヘルムを蘇らせなければいけないわけですが。 「……ブレイラ、考え直す気はないか?」 「なにを考え直すのです」  きっぱり言い返すと、ハウストはムムッ……と眉間に皺を刻みます。  窓辺の椅子に座っていたイスラも困った顔で黙り込んでいました。  なんですか、二人して似たような反応をして……。私もムムッとしてしまう。  そんな私たち三人の様子にクロードはハラハラして、ゼロスは「まあまあ」と仲裁しようとします。 「三人でそんなに睨みあわないでよ。父上と兄上がそんな顔するとブレイラが怖がっちゃうよ」  ゼロスが私たちのあいだに入ってきました。 「ね、ブレイラ」と私の味方でいようとしてくれるゼロスにハウストの眉間の皺が深くなります。 「……これで怖がってくれるほど聞き分けがいいなら、最初からこんなふうに言い合っていない」 「あ、どういう意味です。私のこと聞き分けがないと言いたいのですか?」  んん? とハウストを下から覗きこみます。  ハウストがムムッと顎を引きましたが、改まった顔で私を見ました。 「そこまで言ってないと言いたいが、今回は言わせてもらう」 「なんでしょう」 「お前は留守番だ。城で待ってろ」  一字一句はっきり言われてしまいました。  私は唇を引き結んでしまう。  そう、ハウストとイスラは私に留守番をしていろと言いたいのです。  それというのも初代勇者イスラと初代幻想王オルクヘルムを蘇らせるにあたり、急遽明日からハウストとイスラとゼロスが人間界に赴くことになりました。  そんなの……私も行きたいに決まってるじゃないですか! 「……きっぱり言うんですね」 「ああ、言わせてもらう。ダメだ。お前は城で留守番だ」 「留守番……」 「そうだ。お前になにかあったらどうする。常に俺やイスラが側にいるわけじゃないだろ」 「そうかもしれませんが、初代勇者が逝去した場所へ行くだけですよね。あなたが心配する危険ななにかがあるのですか?」 「いや、それは……」 「ないんですよね! それなら私も一緒に行きたいです! それにあなたの側が一番安全だと言ってくれたじゃないですか!」 「今それを言うか……」  ハウストが呆れた顔で反論しようとしましたが、その前にゼロスが援護してくれます。 「父上、ブレイラも連れてってあげようよ。ブレイラも一緒のほうが絶対楽しいよ? それに父上の側が一番安全なんだよね!」 「お前が言うな」  ガシリッ! ハウストの大きな手がゼロスの頭を鷲掴みました。  イタイイタイイタイッとゼロスは頭を抱えて大騒ぎです。 「ブレイラ助けて! 父上が〜!」 「ああゼロスの頭がっ……。ハウスト、ゼロスを離してあげてくださいっ。ゼロス、大丈夫ですか?」 「うぅ、だいじょうぶ……。冥王様の頭を掴むなんてひどいよね……」  ゼロスは無事に解放されるも頭を抱えて悶絶しています。  私はハウストを「こらっ」と振り返りました。 「ダメじゃないですか、こんなことして」 「俺が悪いのか? お前のワガママが始まりだと思うが」 「……。……それは否定しませんが」  コホンッ。と咳払いを一つ。  私は改めてハウストを見ました。

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