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第三章・初代王の夢と目覚め7

「ブレイラ! うみにおふろがあります!! わあっ、うみなのにおふろ!!」  クロードがはしゃいだ声をあげました。  どうやらこの宿の露天風呂を見つけたようですね。 「それは露天風呂ですね。ここの海辺の露天風呂からは海に沈む夕陽が見えるそうですよ。いってみましょうか」 「いきます! うみのおふろはいりたいです!!」 「僕も一緒に行く! 夕食の前にみんなで入りに行こうよ!」 「それはいいですね。みんなで露天風呂に行きましょう」 「やった〜! ゼロスにーさまはやく!」 「分かった分かった。クロード、タオル持って」  クロードとゼロスがあっという間にお風呂セットを用意します。  露天風呂に行く気満々ですね。 「ハウストとイスラも行きましょう。せっかくなんですから」 「そうだな、たまには海辺の露天風呂も悪くない」 「分かった。ブレイラがそう言うなら」  ハウストとイスラがそう言うとゼロスとクロードはさらにはしゃぎだします。家族で露天風呂に入れることが嬉しいのですね。  それは私も同じです。  ここへは情報収集で来ているけれど、少しくらい楽しんでもいいですよね。  私たちは宿の敷地内にある海辺の岩場にきました。  岩には波が打ち寄せて露天風呂の間近まで迫っています。まるで海と一体化しているような露天風呂でした。 「僕、いちば〜ん!!」  ゼロスが手早く服を脱ぐと露天風呂に入りました。  私は苦笑してゼロスの服を拾います。  一カ所に纏めていますが、これは畳んだとはいいません。 「ゼロス、脱いだ服はちゃんと畳んでください。お行儀が悪いですよ」 「ごめんごめん、待ちきれなくて」 「仕方ないですね」 「ブレイラ、甘やかすな」  イスラがそう言いながら露天風呂に入ります。  そしてゼロスの近くへザブザブ歩いていったかと思うと、ギリギリギリッ……。大きな手でゼロスの頭を鷲掴みました。 「ああ、痛いッ。兄上痛いですっ。頭ぎりぎりしないでっ……!」 「服ぐらいちゃんと片付けろ」 「はいっ、片付けます……!」  涙目のゼロスにイスラはため息をついて解放してあげていました。  そんな長男と次男が微笑ましいです。  次に三男を見ると……。 「ちちうえ、そっちひっぱってくださいっ。はやくっ、はやく!」  急いで脱ごうとしてシャツが絡まっていました……。  ハウストが呆れた顔で手伝っています。 「慌てるからだ」 「あわててません! いそいだだけです!」 「それを慌ててるというんだ」 「いそいだだけです!」 「……。認めないのか」 「いそいだだけですから! はやくっ、ちちうえ!」 「そうか、認めないのか」 「!?」  あ、ハウストがシャツをぱっと離しました。  認めないなら手伝わないということですね。  もがいているクロードをハウストが腕を組んだ仁王立ちでじっと見ていました。 「ちちうえ〜、なにしてるんですかっ。はやく〜!」 「自分で急いで脱いだらどうだ」 「!?」  ぴたりっ。クロードの動きが止まりました。  シャツに絡まったまま固まっています。顔が隠れているのでどんな顔をしているか見えませんが、だいたい想像できます。きっと下唇を噛んでぷるぷるしてますね。 「……うぅ、ブレイラ、ブレイラ。ちちうえが〜……」 「おい、ブレイラを呼ぶのは卑怯だろ」 「ちちうえがひどいことしますっ……」  クロードがシャツに絡まったまま必死に訴えてきました。  私は苦笑して足を向けます。 「ハウスト、何してるんですか」  私の声にクロードがパッと反応します。  シャツに絡まったままぴょんぴょんしだしました。  まるでおもちゃのような動きに小さく笑ってしまう。でも危ないですから早く脱がしてあげましょうね。 「クロード、動かないでください。そんなに動いていたら脱がせられません」 「放っといても自分でできるだろ」 「ハウスト、大人げないですよ」 「ちちうえ、おとなげないです!」  クロードも一緒になって言いました。おやおや強気な態度に変わっています。  ハウストは「お前な……」と呆れた様子で眉間に皺を刻みました。  私は強気に戻ったクロードのシャツを脱がせてあげました。 「どうぞ、今度はゆっくり脱ぎましょうね」 「はい!」  クロードはシャツを受け取ると足元に広げて上手に畳みます。  正座してシャツをちまちま畳んでいる後ろ姿は可愛らしいものですね。 「クロード、上手に畳めてえらいですね」 「かんぺきにできました」 「終わったら次はこっちだ。先に体を洗ってやる」  次はハウストがクロードを呼んでくれました。  クロードはまだ小さいので私かハウストが体と髪を洗ってあげるのです。  でもクロードは少し困ったように目を泳がせます。

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