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第四章・十万年を暴いた男16
「あ、やっぱり父上と兄上もそう思った?」
ゼロスが二人を振り返った。
ブレイラのことをハウストとイスラが気にしないはずないのだ。
「なにかあったのかなあ? クロードがいるから大丈夫だと思うけど」
「クロードか……。あれはまだ未熟だ。一緒にいたからといって役に立っているとは思えん」
そう言ってハウストが腕を組んで難しい顔をした。
そんな厳しい発言にゼロスは「あらら、そんなこと言っちゃって。厳しいんだから」と苦笑する。
イスラも難しい顔で腕を組んでいた。ブレイラのことを考えている顔だ。
ここにいるのは魔王と勇者と冥王。クロードは可愛い末っ子だが事実は事実である。三人から見ればクロードは未熟だ。
「クウヤ、エンキ」
ハウストが呼ぶと足元から二頭の巨大魔狼が姿を現わした。
二頭はハウストの足元に跪くように頭を垂れる。使役主への絶対忠誠だ。
二頭は魔王の前で粛々とするが、ゼロスが嬉しそうに駆け寄って撫でまわす。
「久しぶりだね。元気だった? よしよし、よしよし」
ゼロスにとってクウヤとエンキは友だちだ。
ゼロスが子どもの時は遊び相手になってくれたり、面倒を見てくれたり、たくさんお世話してくれた大事な召喚獣なのである。
しかもそれはゼロスだけではなくイスラもだ。五歳のクロードは今もお世話になっている。
クウヤとエンキもゼロスとイスラに尻尾を振って懐きたいが、魔王の前なので伏せたまま忠誠のポーズである。これは魔王の召喚獣であることのプライドだ。
見兼ねたイスラがゼロスを注意する。
「ゼロス、やめてやれ。クウヤとエンキを困らせるな」
「は〜い。また遊ぼうね」
ゼロスは少しつまらなさそうにしながらクウヤとエンキから離れた。
ハウストは天真爛漫な次男に呆れた顔をしながらも二頭に命じる。
「ブレイラとクロードがいなくなった。この遺跡のどこかにいるはずだ。探せ」
「ワンッ!」
「ワンッ!」
二頭はひと鳴きするとまたハウストの足元の影に飛び込んだ。ブレイラとクロードを探しに行ったのだ。
「イスラ、ゼロス、俺たちも手分けして探すぞ。何か見つかれば召喚獣で報せろ」
「分かった」
「父上、任せてよ」
イスラとゼロスが返事をした。
人探しなら鼻の利くクウヤとエンキが得意だが、ハウストたちも黙って待っているつもりはないのだ。
こうしてハウストとイスラとゼロスもブレイラとクロードを探しに行くのだった。
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