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第六章・レオノーラの目覚め5

「現在の調査ではレオノーラ復活まで後三日だ。なんとしても復活は阻止しなければならない。イスラとゼロスは初代勇者と初代幻想王を復活までに蘇らせろ。復活を少しでも阻止できる方法があるとするなら、それは当代四界の王と初代四界の王で結界強化を行なうことだ」  確約はないけれど実際その方法しかないのです。先日、当代四界の王と先に蘇っていた初代四界の王で結界強化を実行した時、レオノーラの熱反応の上昇を一時的に止めることができました。ならば全員揃うことに賭けるしかありません。  イスラとゼロスも異存がないようです。 「分かった。俺とゼロスは初代を蘇らせに行く。人間界のほうは各国の王に対応させる。場合によっては各国に安置されている勇者の宝を使うよう許可もだしてきた」 「勇者の宝を……」 「ああ、念のためにな」  私は少し驚きました。  勇者の宝とは歴代勇者が残した宝です。それには歴代勇者の力が宿り、発動されれば人間界を強力に守ります。その発動許可をだすということは、それだけ今が困難な時ということでした。  そんな中でもゼロスはいつもの調子で言います。 「任せてよ、父上。今は幻想界じゃなくて冥界だけど、たぶんどっかにいるんじゃないかなあ」 「たぶんってなんだ。見当はついてるのか?」  イスラがじろりっとゼロスを見ました。 「それなりに」 「疑わしいな」 「兄上ひどいっ! その顔は信じてない顔!」 「うるさいぞ。今の状況が分かっているのか」  ハウストが低い声で割って入りました。  ゼロスは「そうだけど~」と唇を尖らせるけれど、今は異常事態なので渋々黙ります。 「時間がない。俺とゼロスはもう行くぞ。なにか新しいことが分かればその都度報せを寄越してくれ」 「そうだね。急いだほうがいいね」  こうしてイスラとゼロスは初代勇者と初代幻想王の復活を急ぎます。  ハウストとフェルベオは各地に軍隊を派遣して怪物討伐をしながら、ヨーゼフの尋問と禁書の解読を急ぎます。デルバートとリースベットも協力してくれるようです。  私も今の自分にできる精一杯をしましょう。 「では私は避難民の救護の手配をします。あと食事や休める場所も作らねばなりませんね、事態が落ち着くまで避難暮らしになるでしょうから」 「ブレイラ、頼んだぞ」  ハウストの言葉に私も重く頷きます。  もちろんです。あなたは魔族の保護者、魔王です。あなたの愛する同胞は私が守ります。  そしてイスラとゼロスを見つめました。  イスラは人間の王、人間の保護者、人間の勇者です。あなたの愛するものを私も守ります。もちろんゼロスの冥界もですよ。 「行ってくる。ブレイラ、行ってきます」 「行ってきます。ブレイラ」  イスラとゼロスが私に挨拶してくれました。  私も立ち上がって二人を見送ります。 「いってらっしゃい。気を付けてくださいね」 「ああ、分かってる。ブレイラも気をつけろ。今はなにが起こってもおかしくない」 「はい、気を付けます。ありがとうございます」  私はイスラに笑いかけました。  この子は子どもの頃から私を気遣ってくれます。  次はゼロス。  ゼロスも「行ってきます」と挨拶しながら、さりげなく私の耳に顔を寄せて聞いてきます。 「クロード、大丈夫そう?」 「気にしてくれたのですね、ありがとうございます。あとでクロードの様子を見に行ってきます」 「うん、ブレイラが行ってくれるなら大丈夫だね。クロードは意地っ張りだけどブレイラの前では甘えん坊さんになっちゃうもんね。ブレイラは大変だけど」 「ふふふ、大丈夫ですよ。先に甘えん坊のあなたがいたので、甘えられるのは慣れっこですから」 「え、僕のおかげ?」 「どうしてそうなる」  聞いていたイスラが呆れた顔で突っ込みました。  そのままゼロスを引きずっていきます。 「さっさと行くぞ」 「ブレイラ、行ってきま~す」  こうして二人は初代勇者と初代幻想王を蘇らせに行きました。  続いてデルバートが広間を出て行って、私もそろそろ行きましょう。 「では私も行きます」 「頼んだぞ」  ハウストが私をじっと見つめました。  その視線に静かに頷きます。 「はい、あなたも」  私は広間にいる面々にお辞儀して退室しました。  広間をでて長い廊下を歩きます。少し早めに。  どうしても確かめたいことがあるのです。  廊下の角を曲がって、ああ見えてきました。その後ろ姿が。  その人はもちろん私が追っていることに気づいています。  その人が立ち止まって、ゆっくりと私を振り返りました。 「俺になんの用だ」 「やはり気づかれていましたね。――――デルバート様」  そう、私が追いかけたのはデルバート。  私はデルバートににこりと笑いかけました。  私はね、先ほどの広間のやり取りで、どうしても違和感を覚えてしまったことがあるのです。

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