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第七章・レオノーラの目覚め ~悠久を越えた誓い~13

■■■■■■ 「ここ、すごいことになってんね。えいっ!」  ドガッ!!  ゼロスの蹴りに怪物の巨体が吹っ飛んだ。  そのまま動きを止めずに背後の怪物を蹴り飛ばす。  ゼロスの動きは踊るように洗練されながらも一撃一撃は重いもの。すべてが一撃必殺だ。  そしてそんなゼロスの近くではイスラも圧倒的な力で異形の怪物を撃退していた。  しかし、次から次へと怪物が襲い掛かってくる。それは港町の人間すべてが怪物に変貌したかのような数である。  そう今、イスラとゼロスは人間界の港町に来ていた。家族で宿泊した港町だ。  港町の近くには初代勇者の墓標がある丘がある。二人は墓標を目指しているわけだが。 「きりがないな」  バキィッ!!  イスラは淡々と言いながらも怪物に強烈な拳をめりこませる。  怪物の胴体を千切るほどの強烈さに見ていたゼロスはちょっと青褪めた。 「兄上は容赦ないんだから……」 「こんなところでぐずぐずしている暇はない。さっさと墓標を見つけて帰るぞ。ブレイラが心配だ」 「それは賛成」  ゼロスはそう言うと攻撃魔法を発動する。  丘の小道を塞いでいた怪物の集団を一気に薙ぎ払った。  丘には周囲一帯の町や村から異形の怪物が集まっているようだった。  ヨーゼフが拠点にしていた遺跡の教会が近いだけあって、どの場所よりも異形の怪物に変化した人間が多かったのだ。  そして怪物のなかでも自分から人体実験になることを望み、より強力な怪物になった人間も多かった。  しかし二人は怪物を倒しながら丘の小道を登っていく。  そして海が臨める小高い丘についた。ここが初代勇者の最期の地、墓標である。  だが。 「あ、なんかすごいの来た」  ゼロスが驚いたように目を丸めた。  四体の巨人が現われたのだ。水、炎、風、大地の巨人である。  だがイスラは不快そうに眉をしかめた。 「巨人もどきだ。本物はこんなものじゃない」  おそらくヨーゼフは四大元素の巨人も研究したのだろう。イスラは初代時代で戦った時のことを覚えていた。 「さっさと片付けるぞ」 「わかった!」  イスラとゼロスが身構えた。  二人にとって巨人もどきは敵ではないが、それでも今まで撃退してきた怪物よりも厄介なことに違いないのだ。  二人は一気に仕留めてしまおうとしたが、次の瞬間。 「ぎゃあああああ!!」 「ぐああああ!!」 「ぐはあっ……!」 「ごふっ!!」  巨人四体が同時に両断された。  一瞬にして巨人もどきは塵と化す。  そしてそこに立っていた人物にイスラとゼロスは驚愕する。そこにいたのは初代勇者の初代イスラだったのだ。 「ええっ、どうして!? まだ蘇らせてないのに!」 「どういうことだ……」  訳が分からない。  そもそも初代王を蘇らせるには四界の王が揃わなければならないのである。  それなのに今、初代イスラがイスラとゼロスの前に降り立った。  だがすぐに違和感に気づく。 「……ねえ兄上、あれ透けてない?」 「ああ、透けてるな」 「じゃあ厳密にはまだ蘇ってないっていうこと?」 「そうなるのか」  ゼロスの指摘にイスラもふむっと腕を組んで頷いた。  蘇った初代魔王と初代精霊王は透けていないので、やはり初代イスラは正式に蘇ったわけではないのだろう。  二人の無遠慮な反応に初代イスラが不快そうに眉をひそめる。 「じろじろ見るな。死にたいのか」 「すでに死んでる奴に言われてもな」  イスラがニヤリと笑って初代イスラを見下ろした。  そう、見下ろした。  イスラと初代イスラが初めて出会ったのは初代時代。その時の二人は十五歳の同年齢で、その体格も身長もほぼ同じだった。容姿まで似ていたのだから、同じ時代に生まれていれば生き別れの双子の兄弟だとすら思っただろう。  しかし二人が生きた時代は別々で、しかも今やイスラは二十三歳。青年である。  初代イスラは十八歳で逝去したが、イスラの年齢はすでにそれを越えて大人になっていた。 「まさかこんなふうに見下ろす日がくるとはな」  イスラがニヤニヤ笑って初代イスラを見下ろした。  初代時代での日々のことは今でもよく覚えている。一騎打ちをした時のことも。 「不快だ。ガキは黙っていろ」 「俺の方がとっくに大人だ」 「俺は祖先だ」 「死んだのが十万年前ってだけだろ」  こうしてイスラと初代イスラが対峙した。  淡々と言い合っているが一触即発の殺気を纏っている。  そんな二人をゼロスはハラハラしながら見つめる。勇者二人のトラブルなんて絶対関わりたくない。  しかもゼロスは三歳の時に初代イスラと戦ったことがあるのだ。手も足もでずに一方的に攻撃され、赤ちゃんだったクロードを抱えて泣きながら逃げたのを覚えている。もちろんそのあと誤解は解けたが、幼い時に刻まれた恐怖はなかなか消えるものではないのだ。  しかしゼロスはもう十五歳。あの時の自分とは違う。今は初代イスラと同じくらいの目線だし、戦闘になったとしても一方的に負けることはない。  十五歳になった冥王ゼロスは勇気をだして殺気立つ勇者たちに立ち向かうことにする。

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