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第5話
「うん、そうだよ、ケーキはフォークとで会わない限り、自覚がないものだからね。幸い、この村の村人にはフォークはいない。よかったね」
「俺が……ケーキ……そ、そっか……よかった」
俺は大きく吐息した。俺がフォークでないというのが確かならば、俺は父みたいにはならないはずだ。
「なにがよかったの?」
「俺は誰のことも食べたくならないってことだろう? 本当に良かった」
「――なるほど。きみ自身も、自分がフォークじゃないかって心配してたんだ?」
「う、うん」
「遺伝性は基本的にはないから、そんな心配は不要だったのに」
「そうなのか……」
「きみが気をつけるべきなのは、フォークに喰べられることだと思うけれどね」
「だって、村にはフォークはいないぞ? 今お前もそう言った」
「僕は、村人にはいないと言っただけだよ」
「? 同じことだろ?」
「――僕は、村人ではないんだけど」
「? それはどういう……っ、ぁ、あ!!」
その時、俺の服から丸見えだった首元に、急にユイフェルが噛みついた。それから強く吸ってから、舌で俺の肌を撫でたまま、ダボダボの上着の中へと、左手を差し入れて、急に俺の左乳首を摘まんだ。驚いていると、右手では肩を押され、俺はベッドの上へと押し倒された。何度も肌に口をづけられながら、乳首を指で嬲られていると、俺の背を、またゾクゾクとした見知らぬ何かが駆け抜ける。それが怖くて、俺は震えながら、俺を押し倒しているユイフェルを見上げた。
「フォークが唯一、就くことを許可されている職が何か知ってる?」
「? そんなの、あるのか?」
「勿論。聖アルベス教会は、差別をよしとはしないからね。フォークでも、聖職者になれる。この王国で、唯一、フォークはフォークだと分かっても、聖職者にだけはなれるんだよ。まぁ、多くは知らないのかもしれないけど――田舎の村になんて誰も行きたがらないし、そういうところにはめったにケーキがいないから安心だとして、フォークの清色色者は大抵へんぴな土地に派遣される。これは公然の秘密だよ」
「……それって……? ユイフェルが、フォークってこと、か……?」
「正解」
「っ、俺が本当にケーキなら、じゃ、じゃあ、お前は俺を殺すのか?」
俺は急激に恐怖が募ってきて、思わずユイフェルを押し返そうとした。けれど俺の非力な両腕では、びくともしない。
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