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第10話

 そう言って、ユイフェルに横から抱き寄せられた時、至近距離で体温を感じ、俺は真っ赤になった。その言葉で、窓から日の光が差し込んできているから、新しく、また一日が始まり朝がきていたのだと理解する。 「本当に可愛かったし、美味しかったよ、マイス」 「……っ」 「今日から、僕はできる限りきみの様子を見に来るようにするし、その時に食べ物や衣服も持ってくるからね。ただ――規則通り、きみを食べさせてもらうけどね」 「……」 「舐め尽くして、きみの体を味わって、お互い気持ちよくなって――フォークとケーキというのは、それが自然な関係だ。ただまぁ、きみのように可愛い顔のケーキって少ないから、僕は幸せだね。ただでさえケーキは数が少ないから、美形ってあんまりいないんだけど、贅沢は言えないしね」 「……」  抱きしめられて、腕枕をされ、髪を撫でられたままで、俺はそれを聞いた。 「きみはもう少し休んでいな。また、夜に来るからね」  そう言って俺の額にキスをしてから、ユイフェルは寝台から降りて、帰って行った。  その日から――ユイフェルは、夜になって教会の仕事が終わると、ほぼ毎日俺の家に来るようになり、朝になると帰って行くようになった。  俺は畑の仕事は続けているけれど、買い物には行かなくなった。  ユイフェルが、フカフカのパンやバター、ミルクやジャム、肉類や卵を、毎日持ってきてくれるようになったからだ。俺の家の質素な食料庫は食べ物で満ち、クローゼットには、俺のサイズにあった服と、ユイフェルの着替えが入っているようになった。ユイフェルは俺と一緒にお風呂に入ることが好きで、入る度に俺の体を隅々まで洗ってくれる。そのいい匂いのする石鹸類も、ユイフェルが持ってきてくれた品だ。ただ入浴すると、いつも陰茎から食べられたり、肌を舐められるので、ドキドキしてしまう。  髪を乾かしながら、櫛で黒い髪を梳かされる内、次第に俺の髪は艶を取り戻した。また、ユイフェルが切ってくれるようになったら、少しマシな髪型になった。  夜、寝台で食べられた後。  ――俺は目が覚めた時、抱きしめられて、温かい体温を感じながら、優しく頭を撫でられることが、大好きになってしまった。そして、気づいた。俺は、本当は一人が寂しかったのだと思う。今ではもう、ユイフェルがいない生活が考えられない。

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