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第3話
「俺はな、実はお前の料理を食べても、味がしないんだ」
「えっ……味、薄かった?」
「そうじゃない。俺には、味覚障害がある。だからこの三年間、お前に美味しいと告げていたのは、全て嘘だ。味がした事は、一度たりとも無い」
それを聞いて、僕はショックを受けた。唇を震わせながら、言葉を探す。
いつもラークに美味しいと思ってもらえるように、僕は料理をしてきた。
けれどそれは、無駄だったと言うことだ。
料理ですら、僕は込めた想いを伝えられていなかったらしい。
「次の嘘を、聞いてくれ」
「……うん」
言葉を続けたラークに対し、僕は必死で頷いた。
「俺は、お前の前では、さも普通の人間のように振る舞っているだろう?」
「え? ラークは凄い人だと思うけど? 普通じゃないよ、凄く強いんでしょう? そ、それに、ラークは格好いいし……」
僕は本音で、素直に告げた。すると、ラークが吐息に笑みを載せる。
「俺はな、フォークという特性を持っているんだ。それが味覚障害の原因だ」
「フォーク……?」
「フォークは、ケーキと呼ばれる特性の持ち主の体以外には、味を感じない。ケーキだけが、フォークの味覚を満たしてくれるんだ。つまり俺は、普通の人間とは違う」
僕には、よく意味が分からない。
「特性って、たとえば?」
「――俺のようなフォークは、予備殺人鬼と呼ばれることが多い。そして、俺が日々倒している魔王の配下の魔族達は、ケーキの群れなんだ。魔族は、大半がケーキなんだ。フォークである俺は、ケーキを狩ることに躊躇いがない。時には犯し殺す。嬲って屠る。それが、俺が凄腕の魔族狩りと呼ばれる理由だ。騎士として、英雄だと囁かれる理由なんだんだよ」
淡々と無表情で、ラークが語った。その冷たい眼差しを、僕は初めて見た。
これまでにもラークが意地悪に思えたことは、たまにあったが、このように冷酷な目をしている姿を見るのは本当に初めてだ。思わず僕は、冷や汗をかく。
「人間には、非常にケーキが少ない。だが俺は、三年前にケーキを見つけた。この意味が分かるか?」
「えっと……? そのケーキは誰?」
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