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第4話
「本当に、鈍いな。そこも愛らしいとは思うが。俺は、そのケーキを、俺だけのケーキだと決めた。じわりじわりと追い詰めてきたつもりだ。魔族のように物理的に狩るのではなく、心を俺の虜にするように、俺を好きになるように、愛するように、ずっと仕向けていたんだよ。今、俺は確信している。そのケーキは、俺に陥落しているとな」
「つまり、そのケーキの人は、ラークを好きだってこと?」
「そうだ」
「そ、そっか。ラークはモテるもんね。きっとラークの恋は、上手くいくんじゃないかな」
僕は失恋してしまった形だが、好きな相手の幸せは、応援したい。ラークを元気づけるべく、僕は笑って見せた。
「僕は、ラークを応援してるよ」
「……そうか」
「うん!」
「ちなみにオリビアは、何故俺の恋が上手くいくと思うんだ?」
「だってラークは、実力も、性格も、見た目も、全部格好いいし」
「オリビアは、俺を恋人にしたいと思うか?」
「えっ……え? どういう意味?」
「――客観論が聞きたい」
僕は気持ちがバレているのかと焦ったが、続いた『客観論』という言葉に安堵した。
「そりゃあ、思うよ。誰だって、ラークが恋人だったら嬉しいと思う。ラークに好かれた人は……ええと、ケーキは、多分最高に幸福なんじゃないかな」
「つまり俺は、オリビアの恋人になった場合、オリビアは嬉しいと言うことだな?」
「へ? ま、まぁ、そ、そうなるね……」
「俺と付き合ってもいいということだな?」
「っ、そ、そんなの、えっ……僕とラークじゃ釣り合わないから、客観的には考えられないよ……」
「ならば、直感で答えてくれ」
ラークの表情は、真剣なままだ。僕は、心臓に悪いことばかりを言われて、困ってしまった。封印している恋心を伝えてしまいそうになる。勿論、直感で答えるならば、答えは決まっている。
「も、勿論だよ。ラークほど魅力的な人はいないからね! 少なくとも僕はそう思うし、きっとラークの恋は上手くいくよ!」
僕が断言すると、ようやくラークが唇の片端だけを持ち上げて、笑みを見せた。
「そうか。では、俺の恋人になってくれるな? 恋人になってもいいと言っているのだから」
「えっ……? え? え!?」
僕はラークの言葉を心の中で咀嚼する。だが、理解が追いつかない。僕は、両手で口と鼻までを覆った。
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