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第26話
それを聞いた母親は「何言ってんの?」と嘲笑うかのように言う
すると足音が聞こえてきたかと思えば数人の男女が入ってきた
思わず優人さんの胸元から顔を離す
母親は俺の方を見れば
「また勝手に入ってきて、あんたが連れてきた奴ら?」
そう呆れた様に言うが俺は知らない
戸惑っていれば「大丈夫だよ。」と優人さんが俺に言う
その中の1人の男性が母親の前に立てば
「警察です。あなたに息子さんについて詳しく聞きたいことがあります。」
そう言って警察手帳を見せれば『連れて行け』と後ろにいる女の人に声をかける
その後に俺に近づくと
「なつくんだね。君にも聞きたいことがあるからゆっくりでいいから、来てもらってもいいかな。」
そう言われ俺は静かに頷いた。
それを見た男性は部屋を出ていく。
腕を捕まれ連れていかれる時母親が「こいつが勝手にやったんだ!私は何も悪くない!」と大声で叫ぶ
そして部屋を出る間際に目が合うと「お前なんてやっぱり産むんじゃなかった。」と吐き捨てた
その言葉を聞いた優人さんは怒りをあらわに何か言おうとしたけど抱きしめてそれを止める
俺の顔を見た優人さんは一瞬驚いた表情をしたけどすぐに俺の背中に腕を回してくれる
優人さんの向こうに涙ぐみながらこちらをみるかずさんの姿が見えた
目が合い手招きをするとゆっくりと近付いてくる
ゆっくりと優人さんから離れると2人を交互に見て笑顔を見せた
ポケットに入れていたメモ帳に文字を書いていく
〈2人のおかげでこの地獄から抜け出す事が出来ました。本当にありがとう。俺はもう大丈夫。〉
それを見せると2人から同時に抱きしめられる
「なつの顔すごくすっきりした顔してる」
「ほんとに、、、よかった。なつくん今まで1人でよく頑張ってきたね。」
そう話す2人に応えるように俺も2人を強く抱き締め返した
今回の事で話を聞きたいと言われていたのでそのまま警察署へ向かう事にした
家から出て空を見れば綺麗な青空で
初めて気持ちに余裕をもってこの家を出ることが出来た
とても爽快で気持ちがいい
思わず目を閉じ、そして大きく深呼吸をした
目を開ければそんな俺を優しい顔で見つめる2人がいて、、、
そんな2人に笑顔を向けて歩き出した
警察署へ着けば先程の男性が外で待ってくれていた
そのまま部屋に案内され俺だけかと思えば2人も一緒に入り話にまざる
「言いづらい事もあると思うけど全てを話して貰えたらと思ってる。ただ無理だけはしないでほしい。」
そう男性が優しく言う
するとかずさんが「なつ.....彼は今声が出ず話せない状態なんです。なので彼が数日前に書いたこちらを見て頂けたら、、、」そう言って、あの日俺が書いた紙を見せる
かずさんが俺に視線を移し「見せても大丈夫?」と確認を取るから俺は頷いた。
それを見たかずさんが男性に紙を渡す
「ありがとう。」そう言って男性は紙を受け取り読み始めた
読んでいる間緊張でつい横にいた2人の手を握ってしまう
すると同じ力で2人が握り返してくれるから少し落ち着くことが出来た
読み終えた男性は静かに「ここまで辛かったね....もう大丈夫。後は私たちに任せてほしい。」俺の目をまっすぐ見ながらそう言った
その姿に安心して頷いた
すると優人さんが写真を取り出し話し始めた
「なつの母親と連絡をとっていた人何名かとのやり取り写真も持ってきました。」
そう言って見せた画像には、客とのやり取りや、俺の顔写真付きで料金の説明や俺が20歳を超えたフリーターで性にだらしがないから相手してあげて欲しい等の酷い内容が並んでいるあるサイトのスクショ等があった
『これは、、、』そう言って男性は写真を詳しく見ていく。
「実は何名かと実際に会って話もしました。詳しく話してもらったものもあります。」
そう言ってボイスレコーダーを渡した
それもお礼を言い受け取ったあと俺の方を向いて『今日はありがとう。もう帰っても大丈夫だからゆっくり休んで。』そう言って部屋を出ていった
「なつくん、帰ろう」
そう言ってかずさんが立ち上がれば俺と優人さんも立ち上がる
でも俺はさっきの出来事に驚いた状態から抜け出せずにいた
『なんであんなものが...?いつの間に?』そんな事を考えていれば、優人さんに手を引かれながら歩きだす
そんな状態で車に乗りこんだ
そこでようやく
〈あれ、、、どうしたの?〉と紙に書いて聞くことが出来た
「優人くんが集めてきてくれたんだよ。」
「なつから話を聞いた翌日、親に相談してお願いしてさ、知り合いの弁護士紹介してもらってどうしたらあの母親に少しでも重い捌きを受けさせることが出来るか相談して集めたんだ。」
"そんな......まさか.....自分の知らない所でそこまでしていてくれたなんて....." 驚きが隠せない。
とにかくお礼を、、、そう思って書こうとしたら優人さんに止められた
不思議に思って見上げれば「なつの気持ちは伝わってるよ。すごく顔に出てる」なんて微笑みながら言う
再び驚いていればかずさんも少し笑っていた
その姿を見ていれば目が合い「俺は今回何もしてないよ。全部優人くんが頑張ってくれた」なんて言う
その言葉に思いっきり首を降った後に文字を書いていく
〈かずさんは今までずっと、酷いことを平気でしてくる人しかいなかった俺に優しくしてくれた。ここまで俺が頑張れたのはかずさんの存在があったからだよ。〉
それを見せれば「そっか。それはよかった」涙ぐみながらそう呟いた。
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