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第32話
寝返りをうって目が覚める
見ればベッドに横になっていて優人さんに抱きしめられる形で寝ていた
自分の体にまわる優人さんの手の重さが嬉しくて目の前の胸元に顔をうずめる
するとクスクスという笑い声と「まーた可愛いことしてる」なんて声が聞こえる
驚いていれば「こんな嬉しいことされたら起きるよ。」なんて返されつい照れてしまう
「ほんと可愛い」そう言って頭に軽くキスをしてきて、それが口元に移り深く長いキスに変わる
唇を離し顔を見合わせ笑い合う
少し前の自分じゃ考えられない目の前の幸せに何度も夢かと思ったけど、俺に触れてくれる優人さんの熱が現実だと実感させてくれる
すると優人さんが俺の髪に触れながら
「あの後かずさんと連絡をとって、なつのヒートが終わった事伝えたよ。今日の夜は仕事で帰れないけど明日夕方頃には帰れると思うって言ってた。」
その言葉にいくらヒートだったからといって家主であるかずさんを追い出すような形になってしまった事を申し訳なく思う
優人さんも同じ気持ちなのか「明日さ、食材買い込んで俺達で夕食作ってかずさん迎えない?」そう提案してきた
俺はそれに何度も頷いた
いつも何かしたいと思って炊事、洗濯をするけど今までやった事などない、おまけに不器用な自分だと全然ダメで、、、
だけど優人さんも一緒なら、かずさんを驚かせる事が出来るかもしれないそう思っていた......
朝から掃除をして、食材を買い込みいざ調理を開始してみれば2人共全然ダメで、、、
目の前にあるのは真っ黒になった何か
「うん、、、。俺にはこれが食べても大丈夫な物に見えないけどなつはどう思う?」
その言葉に俺も静かに頷き同意する
「なつ料理下手だったんだね、、、」その言葉に思わずムッとして睨みつければ「ごめん。俺が言えたことじゃなかった、、、」と項垂れる
「でもおかしいよね。ちゃんとレシピ見ながら作ったのに、、、真っ黒になっただけじゃなくて形も違う、、、」
そう言いながら見る優人さんの携帯に映し出されるのは ✻初心者でも簡単!お手軽レシピ!の文字
料理のセンスが絶望的に悪い2人にかかれば簡単レシピですらも無理だという事を知る
2人でどうしようかと頭を抱えていれば玄関で鍵の開く音がした
"やばい!帰ってきた" そう思いながら顔を見合わせた所で料理が出来上がるはずもなくて、、、、「ただいま!」と笑顔で入ってきたかずさんに俺達2人は苦笑いで応えた
とりあえずお風呂に入ってもらいその間に何とか出来ないかと頭をフル回転させるけど策は出ず、お風呂から出たかずさんを再び苦笑いで迎えることとなった、、、
事情を聞いたかずさんはふふっと笑いながら俺達が買ってきた材料の余り物に目を通す
すると「俺にまかせて2人は座ってて!」と笑顔を向けてくる
その言葉に大人しく従い待っていれば、テーブルに美味しそうな料理が次々並んでいく
2人して目を見開き驚いていれば「2人が色んな食材買ってきてくれたから楽しくなって色々作っちゃった、、、」と照れくさそうに笑うかずさんに頭が下がる
俺が料理を失敗する度にかずさんが作ってくれていたけどここまでとは、、、
お店で見るような料理ばかりに2人して頭を下げるものだからかずさんは戸惑いながら「食べようか。」と俺たちに頭を上げるよう言う
かずさんが作った料理はもう全部が美味しくて、、、感動していればデザートまで出てきた事に俺たちは唖然とした
その姿に吹き出すかずさんに俺達も顔を見合せて笑い合う
「お礼をしようと思っていたのに俺たち全然ダメだったな.....」と言う優人さんの言葉に頷けば、「そうだったんだね。その気持ちが凄く嬉しいよ。ありがとう。」そう笑顔で応えるかずさんに "あーほんと、この人には一生敵わないんだろうな" なんて思った
リビングで3人まったりしていれば「2人はこれからどうする予定なの?」と聞かれる
「今回のヒートではお互いの気持ちを確かめあったので早いだろうけど、次のヒートには番になりたいと思っています。でも、その前になつには俺の両親に会ってもらう予定です。」
優人さんの言葉を聞いたかずさんは「そっか。」と言った後に俺の目を見て「なつはそれでいいと思ってる?」そう聞いてきた
正直まだ夢心地な部分もあれば不安な部分もある
こんな自分が優人さんの隣にいてもいいのか
優人さんの家族に受け入れて貰えるのか
考えれば考えるほどキリがないぐらいに.....
だけど俺の事を好きだと何度も伝えてくれて傍に居て支える事を望んでいる優人さんと俺は番としてこの先一緒にいたいと思った
だからかずさんの目を真っ直ぐに見て頷いた
それにかずさんが安心の表情を浮かべれば「おめでとう」なんて今度は涙ぐむ
「かずさん、、、ちょっと泣かないで下さいよ、、」と焦る優人さんと「だってぇ、、、」なんて言いながら泣き出すかずさんの姿に思わず笑みが零れた
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