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第36話
優人さんの誕生日を祝った日からあっという間に時間は過ぎていき正月を迎える
優人さんと会うことはできないうえにかずさんはお仕事で1人でお正月番組を観て過ごすのは何だか寂しかったけど、翌日に会う事を思えばそれもやわらいだ
2日の朝に仕事から帰ってきたかずさんに挨拶をして、優人さんと待ち合わせてから初詣に向かう
優人さんと出会えた事に感謝しこれから2人が無事に過ごせるよう祈った後は、並ぶ屋台を色々見ながら気になったものを買う時間を過ごした
すると優人さんが
「なつ、、、俺の両親にちゃんと話したんだ。番になりたい人がいるって。そしたらすぐにでも会いたいって言ってるんだけどどうだろう?もちろんなつの心の準備が出来るまで待つよ。」
ドクンと心臓がなる
正直こんな自分でいいのかと思う気持ちは完全に消えてなんかいなくて、、、
でも優人さんと番になると決めた以上頑張りたい
それに自分の大切な人の、、、優人さんのご両親に会いたい、、、
そう思った俺は携帯で打ち込んで見せる
〈いつでも大丈夫だよ。優人さんの両親に会いたい。〉
そう言えば優人さんが嬉しそうに笑って言う
「じゃぁ今から行こうか」
"んっ?今から?" そう思って驚けば「今日家を出る前によかったら連れてきなさい。って言われてね、、、」なんて言いながら "ははっ" と笑う優人さん
いきなりの事に呆然としていれば「あっ、父さん」なんて声が聞こえる
"父さん?" ゆっくりと顔を上げればどことなく優人さんに似ている男性が俺達の方を向いて立っていた
優人さんが「なんでここに?」と声を掛ける
するとチラッと俺の方を見た後に
「お前が連れてくるまで待ちきれなくて、、つい来てしまった。」
「はぁ?なんだよそれ、、、なつの気持ち聞いてからって言っただろ。」
「いや、そうなんだけど、、、こう気持ちが先走ってしまって、、、」
そう話す男性に優人さんが呆れた顔をする
そして俺に向かって「俺の父親だよ。」なんて軽く紹介するものだから慌てて頭を下げる
「君がなつ君か、優人から少しだけど聞いてるよ。笑顔が可愛くて俺の大切な人なんだって」
その言葉にバッと優人さんの方をみれば顔を赤くしながら「何で言うかな、、、」とボソボソ呟く
その姿に嬉しさと愛しさが溢れつい笑みが零れる
「ほんとだな、、すごく素敵な笑顔の可愛らしい人だ。」
それを見られていて優人さんのお父さんにそんな事を言われて照れてしまう
「お母さんも張り切ってたくさん料理作って待ってるぞ。」
「マジかよ、、、ちゃんと言ったのに、、、」
そうさらに呆れた様に言う優人さんの手を掴んで笑ってみせる
「優人。なつ君行きたがってるんじゃないか?よし、なつくん早速行こう』
なんて言いながら歩き出す。その後ろ姿はとても喜んでいるように見えた。
「ほんとにいいの?」と心配する優人さんに笑顔で頷く
「ならいいけど、、、」とまだ少し心配そうに言う優人さんの手を引っ張ってお父さんが歩いて行った方向に歩く
少し歩けば見えてきた優人さんの家
優人さんが玄関を開け「ただいまー」と言えばパタパタと音がして1人の女性が奥の方から顔を出す
「おかえり。なつ君いらっしゃい」
そう言って優しく微笑んでくれた
「なんで父さんの事止めないの」
「止めようと思ったんだけどね、、、お母さんも会いたくてつい、、、」
そんなやり取りをしていれば
「なつ君来てくれてありがとう。会えて嬉しいわ。」
そう言って俺の手を優しく握ってくれた
「前にも話したけどなつ、今話す事が出来ない状態だから、、、。」
「分かってるわよ、なつ君気にしないでね。それよりも今日来てくれた事が本当に嬉しいから。そしてお父さんの言ったとおりとても可愛らしい子ね優人。」
そう言って優人さんの肩を軽くたたく
「もういいから、、、ほら早く行こ」
「それもそうね、なつくん寒かったでしょ。温かいものすぐ用意するからぜひ食べて」
その言葉に頭を下げる
リビングへ行けばお父さんが既に椅子に座って待っていた
「帰ってきてすぐになつくんが来るぞって言いながらウロウロ歩き回るからもう座っててって注意したのよ」
そうお母さんが料理を運びながら説明する
その様子に自分が来る事をこんなにも楽しみにしてくれていた事に嬉しくなる
皆で食べる食事はとても楽しくて美味しくて温かくて、、、
時折俺を気にかけてくれる優人さんの優しさに嬉しくなって、、、
食べ終えた後に優人さんが
「俺はなつと番になって、これからお互い支え合いながら生きていく。」
そう言えば優人さんのお父さんが
「無理だけはするなよ。」そう短く一言だけ言えばそれに優人さんが頷く
すると今度は俺の方をむき
「なつ君も何かあったら我慢せずに優人に頼りなさい。そして、優人に何かあった時には支えてやって欲しい。もし2人だけじゃどうにもならない時があれば迷わず私達の事も頼りなさい。」
そう目を見て伝えてくれる。
それに俺もしっかりと目をみて頷いて頭を下げる、するとお父さんの表情がふっと緩んだ。
「あの日、優人が帰ってきた途端に『守りたい大切な人がいます。助けたいんです、力を貸して下さい。』って頭を下げてきたんだよ。そんな事初めてだったから驚いたけど、優人にそんな人が出来たことが何より嬉しくてね。だからなつ君これからも優人をよろしくね。」
「私からも、、、優人をよろしくね。」
そんなお父さんとお母さんの言葉に抑えていた涙が溢れ思わず優人さんに抱きついていた―――
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