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第38話 優人side
正直出会いは最悪だった、、、
あの日俺は番同士となった友人をお祝いした帰りだった
恋愛事に興味はなかったけど、幸せそうに笑う2人に俺も "いいな" なんてちょっと思ったりして余韻に浸りながら歩いていた
「もう遅いし泊まっていきなよ」そう言う2人に「俺がいたら邪魔だろ」なんて茶化せば顔を赤くしながら「何言ってんだよ」なんて笑いあったあの時に戻れるなら、戻って遠慮なく泊まる選択をしただろうと目の前の光景を見て思う
誰が楽しくて男2人が盛っている場面を見たいだろうか、、、
"こんな所で、、、" 見たくないものを見せられた事に呆れながら呟けば、男が1人慌てて逃げていく
すると「俺のせいで逃げただの代わりに買ってくれんの?」とか何とか言いながら触れてくるもう1人の男
すると微かに香るオメガの香り
"こいつオメガか...." だからってこんな事して
ほんとありえねぇ、気持ち悪い、おかげでさっきまで幸せだった気持ちが一気に冷めていくのを感じる
おまけにバカにするような事を言ってきて頭にきたが、これ以上相手にしてもイライラが増すだけだと思って無視して帰った
あの時の俺は何も知らない奴だった、、、自分がどれだけ周りに恵まれていたのかを、、、
それから何度か友人の家に行けばあいつを見かけるようになった
その度に聞きたくもない言葉を言われ鬱陶しいと思っていた
ある日ベンチに腰掛けていればあいつが声を掛けてきた
思いっきり嫌な顔をすれば目の前のあいつが吹き出して無邪気に笑った
驚いた、、、その笑顔はどこか幼くて目を惹き付けた。そんな自分にハッとして慌てて立ち上がってその場を去る
その数日後、ベンチに座るあいつを見かけた
あいつの足元に犬が1匹近づいた
正直 "あっちに行け" と冷たくあしらうと思っていた、俺の中でのあいつの印象はそれ程良くなかった。でも違った、、、
抱き上げれば笑顔で話しかけている
すると少し慌てた様子で立ち上がりこちらに体を向けた事で俺の存在に気付く
走って近付いてきたかと思えば『怪我をしているから病院を探して欲しい』と言ってくる
あまりの勢いに言われるがまま病院を探し連れていけば、帰る時には『よかったな』と犬の頭を撫でている
外に出れば笑顔でお礼を言ってくるその姿に
あの時と同じように目が離せなくなる
そのまま時間だからと行こうとするあいつを思わず呼び止めるけど、言葉につまり結局何も言えずに立ち去ってしまった
翌日俺はコンビニの袋を持ってベンチに腰かけるあいつを見ていた。
気が付けば買っていた。自分でもなんでこんな事をしてるのか分からない、、、
ただあいつの顔が浮かんで話すきっかけがあれば、、、そう思って自然と体が動いていた
声をかけて渡せば少し驚いた様子でお礼を言う
それからは見かければ声をかけるようになった
ふと、色々知りたくなって名前を聞けば『白雪なつ、、』と答えてくれた
その後に自分の事を色々と伝えれば『俺の事良く思ってなかったのにどうして?』という反応をする、、、
そりゃそうだ。あんな事を言ってきたり馴れ馴れしく触ってきたりするのを鬱陶しく思っていたし、態度にも出していた。
でもなんか知りたくなったんだ、、、
普段と違う喋り方に『あれはバカっぽいからこっちの方がいい』と言えば『ひどい』と言いながら笑うあいつを見て、『名前で言わないのかよ』と少し不貞腐れながら言うあいつを見て俺も自然と笑顔になっていた
しばらく日数が空き久しぶりになつに会おうかと公園へ向かっていた時
一人の男性と親しげに話すなつの姿が見えた
途端になつと初めて会った時の状況を思い出す
まさか客?それにしては心配した様子を見せたりと随分親しげで、、、なんだか心がざわつく
そのまま公園へ着きベンチに腰掛けていればなつに声をかけられた
よく分からないモヤモヤを抱えた俺の表情が良くなかったのか、あの男性と同じように心配そうな顔を見せるなつに、ついあの時みたいな事を続けてるのか聞いてしまった
『まぁ、うん』そう歯切れ悪く答えるなつにさらにモヤモヤが広がった俺は、なつの事がもっと知りたくて色々聞いた
もうすぐ17歳で学校に行ってなくて、、、親はなつがしてる事を知っている、、、
他にも色々聞きたかったけど少し言いづらそうにしているのに気づいてやめた
代わりにもうすぐと言っていた誕生日を聞けば8月の夏生まれで名前はそこからきてる事を知った
俺の誕生日を知ったなつがお祝いするなんて勢いよく言う。その姿に笑いながら俺もなつの祝うなんて言えば照れて赤くなってるなつを素直に可愛いと思ったんだ
ある日の大学終わり、近くに新しくお店が出来ている事に気づいて近づく
中をみれば美味しそうなケーキ等が並んでいた
そーいえば甘い物が好きって言ってたな、買っていったら喜ぶだろうか、、そんな事を考えながら気付けばお店の中に入っていた
"買ってしまった、、、会えるかも分からないのに"
少しの期待を込めて向かえばベンチに腰かけるなつを見つけ思わず頬が緩む
ちょっとだけ観察してみれば大きなあくびをするその姿が可愛くて思わず駆け寄る
買ったのを見せて、あげると言えば想像以上の喜びを見せる
その時ふとなつの首にあるカラーが目につきある疑問が浮かぶ
"ヒートの時はどうしてるんだろう"
そう思って問いかければ『パートナーとかではないけど自分の事を心配してくれて色々してくれる人がいる』との返しに、この間親しげにしていた男性の姿が浮かぶ
それと同時にまた広がるあの時と同じモヤモヤとした不快な感情
この感情は一体何だろうか、、、
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