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第39話:優人side
今日も公園へ向かえばなつがいた
今日会えたらご飯に誘おうと決めていた
うるさく音を立てる心臓を何とか落ち着かせて声をかける
だけど返ってきたのは予定があるの言葉
"無理だったか、、、" そう思いながらも諦めきれない気持ちが前に出る
でもやっぱりダメだよな....そう思い始めた時になつが言う『俺も行きたいよ』の言葉
なつの気持ちが変わる前に!そう思って焦った自覚がある
「じゃあ明日とかは、、、」気付けばそう言っていた
それに『大丈夫!』と勢いよく言うなつが可愛くて、、、
もっともな理由をつけて交換した連絡先
携帯に映るなつの名前を見て嬉しさで頬が緩んでいくのが自分でも分かった
だけどそれはなつの携帯が着信を知らせた事で消え失せた
微かに見えた着信画面に映る "かずさん" の文字
その名前を見てなつの顔が少し綻んだのに気付く
電話をしている時には楽しそうに笑うその姿に自分でも分からない感情が広がっていく
不快なその感情に顔を顰めていれば電話を終えたなつが戻ってきて心配をしてくれる
嬉しさとモヤモヤが入り交じる中何とか過ごせば、チラリと携帯を見たなつが『そろそろ行かなきゃ』と言いながら立ち上がる
「じゃあまた。」と言葉を交わして別れるけど、どうしても気になってしまいなつが向かった方へ行けば聞こえてくる『なつくん!』と呼びかける声
見ればあの時の男で、、、
それに笑顔で応えて車に乗り込むなつ
そしてそのまま走り去る車
じわじわと広がる何なのか分からない感情
2人は車でこれからどこに向かうんだろう
どんな話をしてるんだろう
俺がまだ知らないなつの事をあの人は知ってるんだろうか、、、
ズキズキと傷んでくる心臓に顔が歪む
なんなんだよこれ、、、
分からない俺は足早にその場を後にした
翌朝、未だに消えない不快感を感じながら友達の家へと向かう
勉強を終えたお昼頃、コンビニに寄りながら確認の為なつへ連絡をすればすぐに返ってくる返事
軽くやり取りをすれば朝まであった不快感は嘘のように消えていて、、、
"待ち合わせの前に一度帰ってシャワーを浴びよう" そう思いながら帰っていれば見えてくる公園
"いないだろうな、、、" そう思いながらも目を向ければ見慣れた後ろ姿に胸が高鳴るのが分かった
ペットボトルを額に当てて涼んでるのを見て、先程買ったアイスを袋から出し静かに近づく
思い切ってなつの首元に当てれば『うわぁ!!』なんて大きい声を出すもんだから思わず笑ってしまう
怒りながら文句を言う姿が可愛くて
なつとのご飯を楽しみだと言えば少し照れくさそうに笑う姿に何だか俺も照れくさくなって
ふと視線を逸らしたら目に入ったアイス
溶けて垂れそうになっているのを見て慌ててなつの腕を掴みアイスを自分の口に入れる
静かになっているなつに視線を向ければ顔を赤くしてそっぽを向いていた
そこで気付く距離感に自分の顔が熱くなっていくのが分かった
だけどどうしたらいいのか分からなくて、、気の利いた事も言えずにその場を後にした
家へ帰りシャワーを浴びリビングへ行けば朝はいなかった父親の姿
今日はもう予定がないから家にいるという父親に「あのさ、、、車、かりてもいい?」気付けばそう聞いていた
俺のその言葉に「事故には気を付けろよ」それだけ言い快諾してくれた父親にお礼を告げて準備を始める
予約したレストランに合いそうな服を何着も試着して決めていく
普段しない髪型に決めた格好、"気合い入れすぎたかな...." そう思ったけど頭をかすめるあの日の光景
自分より年上で慣れた様子で助手席のドアを開けそれに笑顔で応えるなつ
"俺だって...." そう思いながら俺は待ち合わせの場所へ向かった
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