41 / 54
第41話:優人side
「もちろんです。」そう笑顔で応えてくれたのが嬉しくて思わず頬が緩んでしまう
少し遠回りして走る車の中、せっかく時間を貰ったのにどうしたらいいのか分からなくて、、、
その時ふとなつの誕生日が近い事を思い出し会話を切り出す
「もう少しで誕生日だよね?」そう聞けば、俺が覚えていた事が嬉しいかのような反応をみせる
その姿が可愛くて、"当日に祝えたらな" そう思って予定を聞けば出てくるかずさんの名前に思わず顔が歪む
前になつが言っていたヒートの時に一緒に過ごす人
パートナーではないと言っていたけど、2人の間にはどこか特別な繋がりがあるように感じて、、、
それなら当日は無理かな、、、そう思うけどやっぱり諦めきれなくて、、、
「なつがいいならお祝いしたい」
なんて優しいなつが断りにくいような言い方をしてしまう
そして、やっぱり優しいなつは「嬉しいよ。」なんて言いながら許してくれた
お昼の短い時間、かずさんに負けないぐらいのお祝いをしよう。そう心に決めた
迎えたなつの誕生日当日。
いつものベンチに向かえば既になつが来ていて、近付けば無意識に頭を撫でていた
お祝いの言葉を言えば下を向いてしまう
不思議に思って覗き込めば照れた様子で少し顔が赤くなっていて可愛かった。
でもこれじゃぁきちんとお祝いが出来ない、そう思って顔を上げさせる
プレゼントを渡せばすごく喜んでくれケーキを見せれば、さらに喜びを表現してくれる
2人でケーキを食べながら色んな話をするその時間がすごく楽しくて、、、
そんな時なつの携帯がメッセージを知らせた
一瞬見えた画面にはかずさんの文字
さっきまでの楽しく高揚していた気持ちがどんどん下がっていく
すると『一時間経っちゃったね』となつが何とか聞き取れるぐらいの声で呟いた
「それじゃあ俺行かないと、、、」
そう言って立ち上がるなつを見上げる
"結構遅い時間まで一緒に過ごす予定?" なんて事をつい言ってしまいそうになるのを必死に抑える
別に俺となつは友達みたいなもんだ
なつがこの後誰とどう誕生日を過ごそうが関係ない
そう思うのに、、、何も言えず動けないでいる俺をなつが不思議そうに見ている
なつが何か言いそうになった時、これ以上あの男に関することは聞きたくないと思って慌てて立ち上がりろくにあいさつも出来ないまま離れた、、、
少しだけ振り返ってみればなつがまだ不思議そうに立っていたが、やがてその場から離れた
俺は自然となつが向かった方向に足が動いていた
すると公園の入り口のとこでなつを見つける
しばらくするとあの日と同じ声で名前が呼ばれ、なつが車に駆け寄る
そのまま乗り込めば楽しそうに笑っていた
運転席にはあの男が見えた
またじわじわと広がる嫌な感情
だけど俺はあの日のように、そのまま車が走り去るのを眺める事しか出来なかった
なつの誕生日から一週間が経った頃、ほぼ毎日来ているけど会えなくて、、、
明日からしばらくは忙しくて来れないから今日会いたかったのに、、、
その忙しさも落ち着き久しぶりに来れた日、そこでもなつの姿はなかった
今日も会えないのか、、、なんて思いながら携帯を見て気付く、、、連絡先を交換していた事に、、、
すぐにトーク画面を開き文字を打ち込み送る
なかなかつかない既読に無理なのかなんて落ち込んで、、、
メッセージを送ってから一時間、、、相変わらずつかない既読に落胆してもう帰ろうと立った瞬間
「優人さん!!」
と俺を呼ぶ声が聞こえた
声の方に視線を向ければなつが走って向かってきていた
会えた!その嬉しさに思わず『なつ!』と俺も大きな声で呼んでしまう
会えないかと思ったと伝えれば『見た瞬間返す前に走って来た』と答えるなつの髪はボサボサで。
その姿に笑いながら髪を整える
座るよう促せば『帰るとこじゃなかったの?』と言われるけど帰るわけがない、せっかく会えたのに、、、
するとなつの耳元がキラリと光った気がして髪を整えていた手を耳元に持っていく
すると緑色のピアスがついていた
耳あいてたんだ初めて見た、、、そう言えば『誕生日に貰ったんだ』と少し嬉しそうに答えるその姿がすごく面白くなくて
軽くピアスに触れそのまま移動させれば数回頬を撫でた
なんでこんなに気になるんだろう
"結構仲良いの?" そう問いかければ嬉しそうに『いいと思う。頼れるお兄ちゃんって感じでいつも気にかけてくれて優しい。』そう答えた
頼れるお兄ちゃんみたいか、、、
そっか、、、お兄ちゃんみたい、、、
それ以外の気持ちはないってことだよね?
ともだちにシェアしよう!