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第43話:優人side
慌てて駆け寄り声を掛けるけど苦しそうな表情を見せるだけで、、、
「俺の車で病院に連れて行こう。優人くん、なつくんを運んでくれるかな。」
「分かりました。」
車に乗せればさっきよりも苦しそうで、、、
そこである違和感に気付く
"なんでマフラーを巻いているんだ?"
薄めの長袖はまだ分かるが首元にあるマフラーに疑問を抱き解けば言葉を失った
なつの首元にくっきりと残る手の跡
"なんだよこれ、、、"
よく見れば手の甲には火傷跡
しかも一つだけじゃなく何個も見える
恐る恐る袖を捲れば腕にも手の跡や火傷跡
急いで服を捲り体を確認するとお腹の所には殴られたような跡が広がっていた
"何があったんだよなつ、、、"
そう思ってなつの顔をみればその顔は変わらず苦痛に歪んでいた、、、
病院につきかずさんが説明をしながらなつと一緒に消えていく
俺は一人ただただ待つ事しか出来なくて、、、
すると「少し聞きたいんだけどいいかな?」そう言いながら白衣を纏ったかずさんがやってきた
「じゃぁあの体の傷の事は知らないのか」そう言われ「はい。でも最後に会った時は首元に跡なんかなかったのであの後に何かあったんだと思います」と、それしか言えなかった
念の為今日は入院する事になったなつが部屋に移された
病室のベッドに横になるなつの姿を見て胸が痛む
"やっぱりあの時ちゃんと聞いてれば "
今更どうしようもない事を何度も思う
いつの間にか眠っていたのか顔を上げれば起き上がっているなつの姿が目に入った
でも様子がおかしい。荒い呼吸にひどく怯えた様子で震えている。
慌てて声をかけ近付く
するとタイミングよくかずさんがやってきた
すぐに状況を把握して対応するその姿に俺は何も出来ずにいる自分に嫌気がさした
だんだんと落ち着いてきたなつに、かずさんがまだ寝た方がいいと促す。それに俺も同意すればなつはゆっくりと瞼を閉じ再び眠りについた
そのままベッド横でなつの頭を撫でながら寝顔を見つめる
気付けばまた寝ていたようで、体を起こせばなつが泣いていた
慌てて声をかけるけど首を横に振るだけだった
だけどなつの口元をよく見れば話そうと動かしているのが分かった
もしかして、、、
「なつ、、もしかして声がでないのか....?」
俺のその言葉に静かに頷いた
俺は堪らずなつを抱きしめた
ごめん、、、ごめん
なつの身に何が起きたのか詳しくは分からない
でも、あの時俺がちゃんと話を聞いていればなつがこんな風になる事はなかったのかもしれない
今更そんなたらればを言ったところでどうにもならないけどそう思わずにはいられなかった
溢れそうになる涙を必死に堪えていれば、俺から身体を離したなつが俺を見つめる
そっと手を俺の目元に持ってくれば涙を拭う
その手を思わず掴み頬を擦り寄せた
「あの後からなつと連絡が取れなくなって心配した。なつがあの日なんであんな事言ったのか理由も聞かずに責める言い方して後悔してた、いや今もしてる。ごめん、、ほんとにごめん。」
最後にはなつの顔が見れなくて思わず俯いてしまった
そんな自分が情けない、、、
そう思っていればなつが俺の両頬を包むようにして俺の顔を上げた
そこには何かを伝えようとしているのに、声が出ない事で伝えられずに悔しげな顔をしたなつの顔があった
するとなつの瞳からぼろぼろと涙が溢れてきて、、、
ゆっくりと手を伸ばしそっと優しくその涙を拭う
「大好きだよなつ、、、あの時友達って言ったけど違った、、、何かあったのなら力になりたい、傍で支えたい、、、」
気付けばなつの目を見ながらそう口にしていた
慌ててなつの顔を見れば驚いた顔で俺の顔を見ていた
あんなに流していた涙もピタッと止まっていて
「今言ったことは本当だよ。俺はなつが好き。あの場所で一緒に過ごしてきて自分でも気づかないうちに好きになってた。」
そう言いながら、"だからかずさんの話を嬉しそうに話してたり、一緒にいたりするのが嫌だったんだなぁ" なんて思ってたら
「今思えばかずさんにも嫉妬してたな....」なんてつい口から出てしまって、、、
するとさらに驚いた顔をしながらこちらを見るから恥ずかしくなってしまった
その時、かずさんが病室に顔を出した
なつに話しかけるかずさんに、なつの声が出ないことを伝えれば顔を歪めるその姿に胸が痛くなる
かずさんはそのままなつの状態を軽く見た後に、身体にある無数の跡について問いかけた
心配だから、頼って欲しいと優しく語りかけるかずさんに同意する形で俺も声を掛ける
すると覚悟を決めた顔をしてなつが頷いた
ペンを手に取り文字を書き連ねていくなつは途中泣きながらも伝えようと手を止めることなく書き続けた
だけど次第にガタガタと震えだしペンが止まる
その姿に思わず抱きしめもう今日はやめようと声を掛けるけど、首を振り再びペンを走らせる姿に俺はただ見つめることしか出来なかった
全てを書き終えたなつから受け取り読み始めれば、俺の想像を絶する内容が書かれていた
あの場所で俺の前で楽しそうに話したりしていたなつが毎日どれだけの思いで過ごしていたのか、、、考えただけで胸が苦しくて辛くて
でもそれ以上の辛さをなつはずっと一人で抱えてた
そしてあの日俺にあの言葉を言った理由を知った。その後何が起こったのかも、、、
頭が真っ白になった。
それと同時に押し寄せる激しい後悔
あの時ちゃんとしっかり話を聞けばよかった
"頼って欲しい" そう思って聞いたくせに自分の気持ち優先してこんな事になって
あの時の自分を殴ってやりたくなる
俺はなつを思いっきり抱きしめた
守ってやれなくて本当にごめん
もう二度と誰にも傷つけさせないから
そう思ってさらに強く抱きしめればこんな俺の背中に腕を回して強く抱き締め返してくれた
しばらく抱き合い軽くやり取りをしていれば、かなり時間が経っていたことに気付きなつにもう寝るよう促せば『寝れない』と伝えてくる。
そんななつに子供扱いすれば少し不機嫌な表情を見せる、、、だけどすぐ眠りについた
寝顔を眺め愛おしいと感じる
なんとなくそうなんじゃないかと思っていた
会う回数が増えていく度に芽生えていく感情
会った時みたいに知らない男と肌を重ねている事が無性に気になったのも
かずさんと楽しそうに一緒にいる姿を見かける度にモヤモヤするのも
あの日あんな事を言われて無性にイラついたのも全部、、、全部なつの事を好きになっていたからで、、、
なつを守る為にも母親から引き離そう
このままではなつはずっとあのままだ
そう思った俺はかずさんに相談をした
会社を経営している親がお世話になっている弁護士に相談して何とか出来ないかと思っている事を伝えれば『僕も何とか出来ないかと思っていたからお願いしたい』そう言われた
早速2人で話し合う
とりあえず俺は家に帰った後に親に事情を説明し助けを求める事にした
本当はずっと一緒にいてなつが起きた時から側にいたかったけど
一日でも早くなつが安心して暮らせる為にも何とかその気持ちを抑え帰宅した
帰ってすぐに親に軽く事情を説明すればすぐに何とかしようと動いてくれた
翌日、早い時間にも関わらず会えることになり話をする事が出来た。母親がやってきた事が言い逃れ出来ないよう証拠を集めた方がいいとなり早速動く事に決めた。
話を終えた後に病院へ向かい、昨日よりも顔色のよくなったなつの姿にホッと胸を撫で下ろした。
するとなつが明日母親に会うと言うので心配だから着いていくと、かずさんと一緒になつを説得して何とか了承を得た。
用事がある事を伝え昼頃には病室を後にする
期限は明日、なつを迎えに行く時間まで、、
あらゆるツテを使い連絡を取り合いながら情報を必死に集めていった。
すると色んな事が分かっていった
まだ17歳のはずのなつの事を皆20歳を超えたフリーターだと思っていた
あの母親は年齢を偽ってなつの事を売り込んでいたのだ
話を聞けば聞くほど怒りが募っていく
そしてついに、、、なつと初めて肌を重ねた2人組にたどり着いた
実際に会ってなつの事を聞けば
「あーあの子ね。よかったよね〜俺があの子の初めてで〜こっちが2番目!」
なんて言いながらヘラヘラと笑う
「ヒート起こしてる所にたまたま遭遇してさ、つい手出そうになったらなんか女が金出せばいいよ〜なんて言うからヤッちゃったよね〜!その他のやつに話したら興味もったから紹介もしたな〜なに?お兄さんも興味あんの?俺実は初めての時動画撮ってたんだよな」
そう言って携帯を出せば1つの動画を再生する
そこには涙目で必死に抵抗するがどうにも出来ずされるがままになるなつの姿があった
何とか声を絞り出し嫌だというなつの声
その上から被せるように笑いながら話す男の声
自分の目の前に座る2人がこの動画をニヤニヤしながら見せてくるその神経に
さっきまで抑えていた怒りが爆発する
机を強く叩き初めて〜なんて笑いながら言っていた男の胸ぐらを掴めば
「この子の母親はお前らを騙して金を得ていたこの子は未成年だ。俺はそれを警察に証拠と一緒に突きつける予定だ、言ってる意味分かるな?二度とこの子に近付くな」
そう言えば驚き途端に顔を青くする
『動画は今すぐ目の前で消せ』そう言うと画面を見せながら動画を消す
それを俺が確認した瞬間に「俺らはあの女がいいって言うからやったんだ。関係ないからな!」そう言いながら慌てて去っていった
覚悟してたつもりだった
どんな事を聞いても冷静に対応しなければと思っていた
でも実際にあんな動画を見せられたら冷静でいられなかった
必死に抵抗するあの子になんであんな事が出来るのだろう
なつが心におった傷の深さを考えたら涙が止まらなかった、、、
絶対にこのままあの母親の元になつを置いてはいけない
そう思って集めた証拠を握りしめかずさんへ連絡する
そして迎えた翌日
なつが母親と会うと言うのでかずさんとついて行くことにした日
病室に迎えに行き、かずさんの運転でなつの家へ向かう
家へ着きなつが入っていく
何かあった時すぐに対応出来るよう玄関の所でかずさんと待機する
でもドクドクと不安な気持ちが増していく
なつは大丈夫だろうか、、、
する何かが割れる大きな音が鳴り響いた
その瞬間俺は足を進め2人に近付いた
『何してんの?』そう言いながらなつに手をあげようとした女の腕を力強く掴んだ―――
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