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第3話

おかしい。この世界に来てから二日。同じ寝室で寝ているというのに、要が手をだしてこない。 なぜだ?んー、キスは何度もされるし、ぎゅっと抱きしめてくるし、俺が嫌いになったとは思えない。もしかして、鬼は性欲がないのだろうか?そもそも、人間と同じような性行為が存在するのか? 「どうしました?」 「いや、なんでもない」 今日も布団にはいると、抱き寄せられる。 「んっ」 キスはいつも通りだ。 どうしようか。そろそろ、俺も、できればキス以上に進みたい・・・・。こんな体にしたのは要だ。転生したらセックスレスなんて、そんなの困る。 仕方がない、俺から少しは歩み寄ろう。 勇気をだして、ぎゅっと要にしがみつく。体が密着するように・・・・ 「痛っ・・・」 「ん?どうした?痛いのか?」 体を寄せると、要が顔をしかめた。 「いえ、大丈夫です」 「大丈夫な顔じゃないぞ。怪我してるのか?」 衣をめくりあげて、ぎょっとする。 「おまえ・・・なんだよこれ・・・・腹の左半分が真っ黒じゃないか。まさか、病気なのか?」 胸が締め付けられる。そんな・・・死んで、転生して、今度はずっと一緒にいれると思っていたのに。 「蒼、そんな顔しなくて大丈夫ですよ。これは邪気を体にため込み過ぎているせいなんです」 「邪気?そういえば、重さんが俺の服も邪気だらけだって、初めてこっち来た時に言ってたな」 「人間の世界の気は鬼にとっては邪気になるんです」 「人間の世界?人間の世界もあるのか?」 「えーと、何から話したらいいですかね。これは神話なんですが、昔は神、人、そして鬼が一緒に暮らしていたそうなんです。でも、鬼が人を食べるようになって、困った神が鬼だけをこの世界に閉じ込めたそうです。閉じ込められた世界の気は、淀んで、やがては死に絶えます。それはあんまりだと思った産土(うぶすな)の神と、冥府(めいふ)の神が鬼の世界に一緒にとどまり、元の世界と気をやりとりする扉を作りました。その扉を週に一度開けて、元の世界と気を交換する役を担うのが閂です」 「閂って、要のことだろ?領主じゃないのか?」 「閂の一番大切な仕事は扉の開け閉めです。領主ってのは、それに付随する地位みたいなものですね」 「じゃあ、その神話にでてくる扉が実在するってことか?」 「そうです。この邸宅の裏山に社があって、そこに扉があります。俺は週に一度その扉を開閉します。その時に、人の気が流れ込んできて体にあたるので、邪気がたまるんです」 「じゃあ、どうするんだよ?それ、ほっといていいものには見えないぞ」 「人から来る邪気を払えるのは、人の魂だけです。つまり、閂の番が人の魂が落ちたものであるのは、そのためなんです」 「俺が祓えるのか?」 「はい」 「どうやればいいんだ?痛みがあるんだろう?すぐにやったほうがいいだろう」 「それが、順番があるんです。まずは、俺と一緒に蒼が、扉から入ってくる人間の世界の気を体に受ける必要があります。それで初めて、蒼の魂は人の世界から完全に離されます」 「扉を開けるのはいつなんだ?」 「明日の夜中です」 「そうか・・・じゃあ、あと一日の辛抱ってことだな。本当によくなるのか?」 「はい、蒼ががんばってくれれば」 「何をがんばればいいんだ?」 「えーと・・・セックスですね」 「はぁ?」 「交わることで、俺の邪気を蒼に移し、蒼がそれを精と一緒に出すことで浄化されます」 「精と一緒にって・・・・」 思わず口をつぐむ。要がいわんとしていることはわかる。要が俺の中に邪気を出して、で、次に俺が出す。ようは、まあ、確かにセックスだ。 「つまりは・・・・俺が先にいかないようにすればいいってことだな」 「はい。あと・・・・」 要が言いづらそうに俺から視線を外す。 「なんだよ?」 「その、俺は鬼なんで、人間より少し大きいです」 「え・・・・」 頑張るって、そっち?思わず要の股間を見てしまう。 俺の体は耐えられるんだろうか・・・・。 人間の時だって、要の猛烈な愛情に応えるのに必死だったのに。

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