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第6話

ある程度本を漁ると、飽きた。 知識は身に着くが、現実を見ることができないので、どうも実感がわかない。町があるなら行ってみたいのだが、要はまだ俺を館の外へ出す気はないらしい。 町を見たいと言ってみたら、どれだけ危険か一日中チクチク言われる羽目になった。めんどくさい。要がやたら外出に過敏になっているのは、前世の最後が原因かもしれない。俺の死に顔は要にとってはこの世で最も見たくなかったものだろう。仕方ないので、おとなしくこの屋敷で我慢することにする。とりあえず、しばらくは・・・・ 宝物庫に、中が白紙の本と携帯用の筆があるのをみつけて、俺は庭にある植物を書き留めることにした。要に聞いてみたが、植物図鑑のような物はこの世界にあるのかわからないらしい。少なくとも要は出会ったことがないといっていた。それなら、俺が作ってやろう。植物学の父に俺がなる! 屋敷の庭は広い。花しょうぶと藤はもちろん。ヨモギ、つゆ草、菊、菜の花、桜、たちばな、いろんな植物が植えられている。その一つ一つの絵をかき、知っている特徴を書き込んでいく。ちなみに、鬼の世界と人の世界の植物が同じ名前かはわからないが、梅との会話からズレはないようなので、同じものとみなして図鑑を作ることにした。 ほとんどの時間を庭で過ごすようになった俺をみかねて、梅が敷物になる布をくれた。携帯用の水差しとおにぎりも持たせてくれるので、いちいち昼に帰る必要もない。 俺は疲れると敷物に横になり、元気になると図鑑を作成するということを繰り返した。 ただの図鑑作りだけならここまで熱中しなかったかもしれない。小学生の頃は熱中していたが、俺もいい大人だし。 俺が熱心に庭を探索するのは、変わった植物を発見したからだ。スズランのような花をつける植物なのだが、同じ茎から薄い青、薄い緑、オレンジ、黄色、ピンクというまったく違う花弁を持つ花がぶら下がっている。しかも、葉も茎も花もうっすらと淡い光をまとっているのだ。 最初に発見した時の興奮は今でも忘れられない。こんな植物は人の世界には無かった。 要に話すと、この世界では地下に気脈という気の流れがあって、その気を使って妖術を使うことができる鬼の種族がいるそうで、光る植物も気脈の影響を受けているのではないだろうか、ということだった。要も山に狩りに出かけた時に、一度だけ見かけたことがあるらしい。 狩りとかリアルに行くんだ、と思って動揺したのは内緒だ。 俺はこの光る植物を仙花(せんか)と名付けた。庭にあったのは三本だけだったので、一本を試しに鉢植えにしてみた。その夜は光が持続し、とても美しかったのだが、翌朝目覚めると枯れてしまっていた。要の気脈エネルギー説はかなり有力だということだ。地面から離すと気脈から気を吸えなくなって枯れてしまうのだろう。実に興味深い。 夢中で庭を探索していると、要がやって来る。つまり、昼時だということだ。 「図鑑作成は順調ですか?」 「ああ、もうすぐ庭の図鑑は終わるな」 「梅が、うちの姫君は(わらわ)のようだと小言を言ってましたよ。庭にいないで、館で衣合わせをしてほしいみたいですよ」 「衣合わせはいやだな。服に興味ないし」 「他にも、(こう)を選んだり、茶を選んだり、菓子を選んだり、姫にやってほしいことがあるみたいです」 「なんだよそれ・・・本当に姫みたいだな。俺は興味ない」 「それなりに地位のある鬼の番はみんなやるんですよ。いろんな儀式がありますからね、集まった時にメス型の番はどの香が好きかとか、どの色合わせが好きかとか、そういうのが社交の場でのコミュニケーションとして必要なんです」 「俺は・・・いかない・・・・そんなご婦人の会みないなのは・・・・」 「俺の番としての仕事ですから、少し我慢してください」 「むぅ・・・なんでそんなことしなくちゃいけないんだよ・・・」 敷物に寝転がって悪態をついていると、要が身をよせてくる。 始まった。最近の悩みの一つがこれだ。 「おい、やめろ。外ではやめろって毎日言ってるだろ」 服の中に入ってくる要の手をブロックする。 「蒼、足閉じないで」 「おまえ、絶対見えるから、ここは執務室から見えるって」 いくら草の中とはいえ、そこまで草の背は高くない。執務室にいる右近と左京からは俺たちが何をしているのかバレバレだ。 「っ・・・ちょ・・・・話を聞けっ」 「大丈夫です。執務室に背中向けてますし、蒼の顔は見えないです」 「顔は見えなくても、何してるかバレバレだろ」 「別に大丈夫ですよ。ここは俺たちの家ですし」 「家の庭な、庭!」 袴を脱がされ、足を広げられる。 青空が眩しい・・・・ 「そんなこと言って、ほら、もう濡れてますよ」 要の手の動きに合わせてクチュクチュといやらしい音が鳴る。 「は・・・っん・・・あぁん」 「蒼、可愛いです」 要の大きくなったソレが入ってくると、腰が自然と浮く。 「声我慢しなくてもいいですよ。この距離なら聞こえないと思います」 「バカ・・・」 パンパンパンと激しく奥をつかれる。 「ああん・・・ああ・・・・んっ・・・」 口の中も舌で刺激されると、理性が飛んでいく。 外ではやめてほしいといつも思うのに、こうやって触られると、抵抗できなくなる自分が恥ずかしい。 「蒼・・・中に・・・だします」 要の表情に力がこもる。打ち付ける腰の力が強く早くなる。 「俺も・・・もう・・・でる・・・あああん」 二人で果てる。要の液は俺の中にとどまり、俺の液は霧に変わる。 確かに、汚れなくていい・・・・・だからと言って、こう毎日場所を問わず犯されるのも困るんだけど。 そのまま二人でごろんと敷物の上に横たわる。 要が抱き寄せてくるから、仕方なく要の腕の中におさまる。厚い胸板がたくましくて、胸がぎゅっとする。 ほんのりと香る墨の匂いが、執務室の匂いと一緒だ。 仕事をしている男の香りとでもいうのだろうか。実は最近この匂いをかぐと、キュンとする。 要がかっこいいと思ってしまうのは、俺がメス型になったせいだろうか。 この奥様?ポジション、けっこうやばいかもしれない。 「俺の腕におさまってる蒼も、すっごく可愛いです。これ以上愛させないでほしいです」 「お前が勝手に愛してくるんだろう」 「どうしたら止めれるのかわかりません。どんどん好きになっていく。俺も、自分が怖いです」 いや、怖いのは俺の方なんですけど・・・・という言葉は飲み込む。 🔷 そしてさらに、もう一つの悩みが夜だ。 「ああん・・・はぁ・・・かなめ・・・早く・・・」 前も後ろも要の指でもてあそばれる。 朝と昼は割と早くことがなされるのだが、夜は時間があるせいか、なかなか進めてくれない。 しかも・・・ 「蒼、ほら、指はこっちですよ」 じらしたあげくに、要は途中でやめて自分の指を何もない場所へ移動する。 仕方なく、自分の股を要の指があるほうへ動かす。 「そう、いい子です」 俺が腰を動かすと、褒美とでも言うかのように乳首に口づけをする。 「ああんっ」 羞恥心と快感で体がおかしくなりそうだ。 「蒼、ほら、次はもうちょっと上です」 今まであった場所から要の指が少しだけ空中を上へ移動する。 「もう・・・やめて・・・お願い」 恥ずかしすぎて、要にしがみついて要の首筋に顔をうずめる。 「あと一回だけ、ね、これがんばったら、入れてあげますから」 「うぅ・・・」 仕方なく腰をあげて足を開き、自分の穴を要の指に押し付ける。 これじゃまるで、俺がねだってるみたいだ。 「そう、上手です。じゃあ、ご褒美あげますね」 要が大きくなった自身のソレを取り出す。 「ほら、これ、ほしいですか?」 恥ずかしさに口を曲げながら、うなずく。 「ん?言ってくれないとわからないですよ」 「もう、勘弁してくれよ」 「蒼、言って」 「・・・ほしい・・・いれて」 にこっと笑うと、要が俺に覆いかぶさって、一気にいれてくる。 もう、この大きさを簡単に飲み込む自分の体も怖い。 「ああっ・・・・ん・・・・はぁ・・・ああん」 人の世から鬼の世に転生して、食欲と性欲だけの支配だったのが、衣食住すべてを要に支配されるようになってしまった。 それなのに、要は足りなそうだ。俺が足りないと顔が物語っている。どうしてこいつはこんなに余裕がないのだろう。毎日一緒にいるし、毎日愛し合っているし、俺だってちゃんと好きなのに。 どれだけ深く愛されているのだろか。せめて半分くらいは返せたらいいと思うのだが・・・・。 要の計り知れない愛の深さを考えると、少しせつなくなるものの、その闇すらまとった愛に鳥肌がたった。

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