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第12話
ついに来てしまった結婚式本番。
昨日はひどい目にあって、午後の打ち合わせは朦朧としながらだった。
大丈夫だろうか、俺・・・・
できあがった衣装は、てっきり十二単 みたいなものだろうと思っていたら、まったく違った。中は絹のシャツで、シャツの上にジャケットのように反物が組み合わせられたドレスをまとっている。要は襟を立てたスーツのような衣装で、マントを羽織っている。結構お洒落だ。
しかし、踏ん張らないと崩れ落ちそうになるくらい重かった。
これ絶対、鬼が着るように作られている。俺は鬼の力ないからね!人だからね!無理があるだろ!
要に抱えられるようにして、覆いのない馬車にのる。
よくある、王族とかがパレードして民衆に手を振る感じのやつだ。
要はその横を馬に乗って付いてくる。
まずは、中町 と呼ばれるこの国の中心となる町をこれに乗って徘徊するらしい。
「わあ!」
町に出ると、予想外の景色に驚く。
この世界は平安時代みないた感じだと思っていた。
町といっても粗末な平屋が並んでいるくらいかと思っていたのだが、まったく違った。
両脇に並んだ建物は二階建てが多く、しかも、洋館みたいな建物も混ざっている。
沿道には外套があり、中に火が燃えている。
和洋折衷の時代、明治時代に似ているのかもしれない。
俺の前に隊列を組んでいる右近と左京がなにかを沿道の群集に向かって投げている。
あれは、雪音とお陽と一緒に選んだ菓子だ。
なるほど、投げ銭みたいなやつか。
「姫様!」「なんとお美しい!」「我らが蒼姫!」「要様!」「よ、旦那衆!」
様々な掛け声が飛ぶ。
まさに王族になった気分だ・・・・。
笑顔がひきつらないように気を付けながら、姫の掛け声がかかった方へ手を振る。
これ、何時間続くんだろう・・・・すでに逃げたい気持ちを必死におさえて、おれは手を振り続けた。
🔷
「死ぬぅー」
深夜、俺は一人で寝所の布団へ倒れこんだ。
ひたすら手を振って町を徘徊し、そのあと儀式の会場で会食。会食といってもトイレに行けないから、好きに飲み食いできるわけじゃないし、次から次へと挨拶にやってくる鬼の話に耳を傾けなければいけないので、まったく休めなかった。
全ての工程が終わって俺は解放されたが、要は朝まで飲み続けるのが慣例らしく、まだ会場にいるはずだ。
「やっと休める・・・」
要がいないせいで、布団が広く感じる。ぐっと引っ張って、手足を思いっきり伸ばす。
「綺麗だったな・・・」
町の景色を思い出す。ステンドグラスがある建物もあったし、ショウウィンドウに商品が飾られている店もあった。いつか行ってみたい。もう披露目の儀式も終わったし、要は連れて行ってくれるだろうか。
「んー・・・」
しばらくゴロゴロするものの、なかなか寝付けない。
大がかりな儀式に、大勢の鬼たち。熱気がまだ体に籠っているせいかもしれない。
今何時なんだろう。時計というものがないので、正確な時間がわからない。
朝日が出たら起きて朝食をとる。左京達が来たら、要が仕事に行き、俺は雪音とお陽と山歩きへ向かう。陽に茜が指して来たら戻って、左京達が来くるまでお茶をする。そんなゆっくりとしたこの生活は悪くないと思う。時計なんて無い方が、幸せだったりするのかもしれない。でも、もともと人間だった俺は、暇になると時間を気にしてしまう。
「んー・・・」
寝返りを繰り返す。
結婚式当日に一人で寝るってどうなの?
要が使う枕を撫でる。
番を残して朝まで酒を飲むとか、どうしようもない亭主だな。
要の枕をぎゅっと抱くと、要の匂いがした。
部屋の蠟燭がふっと揺れる。
「蒼、ただいま」
「要?」
驚いて振り向くと、寝所の入り口に要が立っていた。
「朝まで飲み会なんじゃなかった?」
「左京と右近が気を利かせてくれて、抜けてこれました」
「そ、そうか・・・・」
「蒼、寂しかったですか?」
「別に・・・・」
「だって、俺の枕抱きしめてるじゃないですか」
「これはその・・・眠れないだけだ」
「蒼・・・今日も綺麗でした」
要が布団に入ってきて、そっと口づけをする。優しい口づけだ。
「酒くさいな」
「かなり飲みましたからね」
「おまえも疲れただろう」
「はい、さすがに、クタクタです。でも、蒼のために一回くらいはがんばります」
「はぁ?いいって、てか、俺は願ってないわ、そんなこと!」
「そうですか?じゃあ、聞いてみますね」
「聞いてみますって、おい・・・どこ触って・・・やっ」
「んー、濡れてますけど?」
「おまえが触るから・・・・」
「ほら、足、広げて」
「ん・・・・あ・・・・」
クチュクチュと音が鳴る。
「あん・・・・っん・・・・いやっ」
「いやじゃないでしょう?蒼、乗って」
仕方なく要に馬乗りになる。要の大きなソレが入ってくる。たまらず、要に抱き着く。
そのまま串刺しにでもするように、要が俺を上下に揺らす。
「あぁ・・・はぁ・・・・はぁ・・・」
激しくて、息継ぎをするのがやっとだ。
「蒼・・・はぁはぁ・・・ご、ほうびですよ。今日がんばりましたからね・・・くっ」
「ああん」
快感が走る場所を何度も擦られる。
「あああ!」
俺が中でいくと、要が俺の体をひっくりかえす。
すぐに後ろ向きの格好で、激しく中をつかれる。
「ひゃぁっ」
「いったのに、まだ感じますか?」
「あぁ・・・んっ・・・はぁはぁ」
「出します・・・・くっ」
「あああ!」
ひたすら奥へ突かれて、要が果てる。
二人でぐったりと横になる。
要が優しく俺を抱きしめて、額に口づけを落とす。
「愛してます。俺の蒼。これで、広い牢屋が完成しました」
「は?牢屋?」
「夏青国という牢屋です。閂の番である姫に手をだしてくるやからはそうそういないでしょう?この国の中なら、蒼を見て、俺の番だってどの鬼もすぐに気が付きます。影もつけてあるし、快適な蒼のための檻ですよ」
「その発想が怖いわ・・・・」
「とはいっても、俺からあまり離れてほしくはないですけどね」
「檻だって言うならいいだろ、町も見たいし、他の山もいってみたい。仙花がまだきっと、たくさんあるだろうし」
「仙花はいいですね。たくさん探しましょう、二本挿しスポット」
「パワースポットみたいに言うな!見つけても、お前には内緒だ!」
要に背を向けると、後ろから抱きしめられる。
要の腕の中のこの安心感はいつから感じていただろう?
ずっとこうしていたい、それを悟られないように、赤くなっているだろう頬を隠した。
「ねるぞ」
「はい、おやすみなさい」
こうして俺たちは、二度目の結婚をした。
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