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第17話
「蒼、大丈夫ですか?」
「ああ、問題はない。すこし熱っぽいだけだから」
数日前から体がどうにもだるく、熱を帯びている。咳が出るわけでもないし、鼻水がでるわけでもない。今日はいつもよりひどくて、さすがに午前の稽古も午後の山歩きも休みにして、寝所でダラダラすごした。
しかし、お役目を果たさないわけには行かず。こうして要と二人夜の社へ向かっている。
週に一度、閂は人の世界と繋がっている扉を開く。その時に閂は邪気を受ける。それを俺が祓うわけだ。鬼の世界へ来て、この儀式も何度目になるだろうか。初めの頃は、その世界観に感動し、宇宙に浮かんでいるようなベッドにときめいたものだが、回を重ねるたびに感動はなくなり、今ではエンターテイメント性のあるラブホテルに行く気分だ。
とはいっても、竹藪をぬけ社を目の間にすると、その神々しい雰囲気にやはり少しの緊張が走る。
「はぁ・・・はぁ・・・・」
「蒼?」
息が苦しい。体が熱い。なんだこれ。熱が上がってしまっているのだろうか。
「いい。気にするな」
近づいてこようとする要をさえぎる。とにかく、役目を果たさなくては。要に苦しい思いをさせるわけにはいかない。
要が社の扉を開けると、すっと冷たい空気が流れてきた。
満天の星空とそれを写し取った水面。その中に飛び石が浮き、その先に大きな扉がある。
飛び石に足をかけると、体がよろけた。要が俺の体を支える。
その瞬間、要に触れられた肌に快感が走った。
「あっ・・・」
もっと、もっと触られたい。要の手がほしい。要の匂いがほしい。
「んっ・・・」
強引に口づけた俺に、要がバランスを崩さないように足に力をいれる。
そのまま俺を抱きかかえ、ベッドがある東屋まで急ぐ。
「要、ダメ、行くな」
ベッドに俺をおろして扉へ行こうとする要の裾を引く。
「蒼、お役目だけ済ましてきます。すぐ終わりますから。ね、待っていてください」
「んっ・・・んあっ」
口づけされただけで、全身に快感が走る。意識が朦朧とする。
どうなっている?俺の体はどうなっているんだ?まだ少しだけある理性を働かせようとするが、すぐに要を求める本能に押しつぶされそうになる。
「かなめぇ・・・はやく・・・はやく来て」
布団を握りしめ耐える。息が荒くなる。要がほしい。俺の中に、要がほしい。
「蒼、お待たせしました」
痛みに少しひきつった表情を見せる要が戻ってくると、がまんできずに押し倒した。
そのまま要の着物を脱がしていく。ほしい、要がほしい。もうそれしか考えることができない。
大きくなった要のソレを発見すると、口に入れる。もっと大きく、もっと・・・・
「蒼・・・くっ・・・・口でしてもらうのなんて、初めてで、俺、我慢できないです」
あぁ、ダメ、口の中じゃない。俺の中じゃないと。
自分の着物を急いで脱ぐと、要のソレを押し当てる。
「蒼、待った、まだ入らない。ほぐさないと」
要ががっつく俺の体を無理やりはがして押し倒す。入ってきた指に自分の欲が一気に噴き出す。
キラキラと俺の精液が舞い散る。
「要、ほしい、ほしい」
「わかってます。もう少し」
「んあっ・・ひゃっ・・・ほしい・・・ほしい・・・指じゃない」
「ん、入るかな」
「ああああ!」
やっときたソレにまた一気に意識を持っていかれる。それなのにまだ足りない。まだ、まだ。
「出して、中に、中に全部。ほしい、ほしい」
腰が勝手に動く。
「蒼、エロすぎます。もう、手加減できない」
「ひゃぁぁ。んん・・・あぁ!」
パンパンパン、ぐちゅぐちゅ
「ああん、ああん、かなめぇ・・・きもちいぃ・・・あぁ・・・もっと・・・もっとだして」
「くっ・・・はぁはぁ・・・蒼・・・あぁ・・・愛してます」
🔷
気が付くと、いつもの家の寝所だった。朝を過ぎているらしく、昼の少し暑い風が吹いてくる。
体を起こすと、いつも以上にだるい。それに少し微熱があるらしく、体が火照っている。
「あ、起きましたか」
水を持った要が寝所に入ってくるのを見ると、猛烈に喉が渇いていることに気が付いた。
「水飲みたい」
「はい、どうぞ」
どうやら機嫌がいいらしい。いつにもまして要の笑顔がさわやかだ。
「具合はどうですか?」
「体がだるい。それにまだ熱っぽい」
「そうですか。短くて三日、長くて一週間くらいみたいです」
「何が?」
「発情期です」
「ん?なんて言った?」
「発情期」
「発情期?」
聞きなれない言葉に思考がついていかない。
「メス型は定期的に来るんですよ、発情期が。蒼はメス型になってから四か月できましたから、四か月周期かもしれませんね」
「何だそれは・・・、じゃあ、昨日の醜態も発情期のせい?」
「そうです。昨日の蒼、すごくエロかったですね」
なんてことだ・・・・あの醜態を今後四か月ごとに繰り返さなくてはならないということだ。
頭を抱えてうなる。どうりで要が町歩きを許してくれなかったわけだ。町中でこの状態になるなんてあってはならない。
「まだ、終わってないですし」
「え?」
「ほら」
「んっ・・・あぁ・・・やっ」
要に顔を撫でられただけで快感が走って、体が火照る。
「蒼、ほしいですか?」
「え?・・・んっ・・・あぁ」
頬を撫でてくる腕がもっとほしい。自分からすり寄ってしまう。
「俺がほしい?」
「ほ・・・ほしい・・・要がほしい・・・」
少し触られただけで求めてしまう。体の奥底が渇いたように、要を欲してしまう。
「んっ」
「まずは水をもう少し飲まないといけませんね」
口移しで水を飲まされる。それだけで、俺の体はビクっと痙攣する。
「やっ・・やだ・・・こんなの・・・」
要を求める本能に抵抗しようと布団を握り占める。
「そですか。嫌なら部屋から出ていきますけど」
要がそばを離れる気配に体がぞくりと反応する。
ダメ、逃してはダメ。
気づくと要の腕に必死にすがっている自分がいる。屈辱に涙が浮かぶ。
「蒼、大丈夫ですよ。とっても可愛いです。我慢しなくていいんですよ。ほら、言って、どうしてほしいですか?」
「うぅ・・・かなめのバカ」
「ふふ」
要の優しい口づけに胸が熱くなる。体を重ねたくなる衝動と同時に、好きだという気持ちも溢れてくる。
「好き・・・要・・・好き・・・」
「はい。俺も好きです」
「愛して、もっと、愛して」
「もっとですか?これ以上?怖い怖いっていつも言うくせに」
「もっと、もっと愛して」
「体も?」
「体も・・・・ああぁん」
そっと背中を撫でられただけで喘ぎ声がでる。
「涙目の蒼、可愛すぎます」
要の手が降ってくる。その快感に犯されていく。
あぁ、何日続くんだろう?この快感と愛に溺れる日があと何日・・・
もっと、もっと愛して、怖いくらい、ぞっとするくらい。あぁ、恐ろしい。
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