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第35話

留学最初の一週間を充実して過ごした俺は、お役目を果たすべく夏青国へ一度戻ってきた。 朝のうちに冬白国を出発すれば、昼に夏青国へ着く。 梅が作ってくれた純和風な昼ごはんは、久しぶりだとうまかった。 問題は、あの件について、要をどう説得するかだ。 「忙しかったか?」 遅めの昼ご飯を澄まし、俺と要は寝所でイチャイチャしている。 要の膝の間に座って、頭を要の胸板に預けると、要がぎゅっと俺を抱きしめて、匂いを確かめるように俺の首筋に顔をうずめる。 「はい。右近が子作り詣出でいないので、会議が増えて大変ですけれども」 「そっか。どんな会議があるんだ?」 「んー、今は学校関連ですかね」 「学校?」 「手に職があるオス型とオス型が番になると、片方がやめてしまって労働力不足になるんですよね。例えば各省で働いている官僚同士が番になって、片方が家に入ると、経験のある人材を失うわけです。メス型が働くっていう感覚が夏青国は低くって、メス型になると仕事を辞めてしまうんです。それに、生まれつきメス型思考の鬼は、家事育児の手伝いなんかを主な仕事に選ぶので、オス型思考の鬼とメス型思考の鬼の職場が違って、出会いの機会が少ないのも問題なんです。そこで、子どもが組合に入る前に高校のようにもう少し通える学校があれば、メス型思考の鬼もそこで職業訓練できるので結婚後の離職率を下げることになりますし、学校自体が出会いの場にもなるんじゃないかと思うんですよ。現状では中学校までしか学校がなくて、その後組合に弟子入りするってのが流れでなので」 「へぇ。なんか、鬼の世界特有の悩みだな。確かに、お陽も使用人として働いてたわけだしなぁ。出会いは少なそうだな」 「平民の間でもお見合いが多いのはそのせいですね。ただ、中学以上の学校まで行けるように助成するとなると税金を増やす必要がありますし、増やそうとすると反対されますし」 「税金をあげるのは難しそうだなぁ」 「警部省にかかる予算を減らすことができたので、学問奨励へ予算をかけようとしてるんですけど、そもそも先生がいないんです」 「先生って、学校の?」 「夏青国は力自慢の国なので、部屋に籠って机に向かうのをかっこ悪いと蔑む文化があって、学問が根付いてないんですよね。だから学校の先生はメス型が多いですし、途中で結婚して辞めてしまうので数が少ないです。職業のスキルを持っていて教師になってくれるオス型も少ないですし。問題山積みなんですよね」 「おまえ、本当に政治やってるんだなぁ」 「これでも治安はかなり良くなったんですよ。蒼が来るまでに、学問の分野にも取り組みたかったんですけど、お国柄難しくって」 「がんばってるな」 頭を撫でてやる。柔らかい髪の手触りが気持ちいい。陽だまりの匂いがする。 くっついているとちょっと暑いがそれよりも要への気持ちが勝って気にならない。 要にぎゅっと抱き着いて、スリスリと頬杖する。五日ぶりの要の体温が心地いい。 「んっ」 顎を上に向かされ、口づけされる。 ちゅっと短い口づけを何度もする。 たまらない。愛しい人との口づけは甘くて、胸がドキドキする。 そんな風に至福のひと時に浸っていると、要の手が懐へ入ってくる。 「あっ・・・っ」 乳首を揉まれると声が出てしまう。 「ダメだって。夜までまだ何時間もあるんだぞ」 「わかってますけど、あぁ・・・蒼、抱きたい」 「んっ・・・ダメって・・・」 体中をまさぐられると嫌でも反応してしまう。 体を持ち上げられて、向かい合わせで抱き合う。足を要の腰にからませると、股間と股間が重なる。 大きくなったソレ同士が求めあうように摺り寄せられる。 「んはっ・・・よせって」 俺の尻に伸びてきた要の手をどうにかもぎ取る。 まだ昼過ぎ、お役目は真夜中だ。今、セックスするわけにはいかない。 要が受けた穢れを俺が受け取って吐き出さなければならないのに、昼に力つきてしまうわけにはいかないのだ。 「はぁ」 ため息をつきつつも、額と額を合わせる。冷静になる必要がある。それは要も承知なのだろう。求めあいそうになる体を必死で押さえつける。 「かなめさ・・・」 「はい?」 「大学終わった後のアレ、止めないか?」 「なぜですか?」 要の声色が変わる。怒った時の声だ。 「俺は我慢しています。本当は手放したくない。それでも我慢して蒼のわがままを聞いています」 要の腕が俺を苦しいくらいに抱きしめる。 「わかってる」 「蒼は、俺が好きじゃないんですか?俺に抱かれたくない?」 「そんなこと言ってないだろ」 「わかってない。蒼は何にもわかってないです」 要が俺の胸に顔をうずめてぐりぐりしてくる。 「わかってないのはお前だろ。見るだけ見て、おやすみなさいって影ごと消えて、その後俺がどうなってるかわかってるのか?」 「え?」 「・・・冷たい布団に投げ出されるんだ。一人ぼっちで・・・・」 思い出すとなんだかたまらなくて、慌てて要に抱き着いて顔を隠す。 「寒いんだよ。冬白国は寒いけど、それ以上に寒いんだ。お前がいない布団は寒いんだよ」 なんだが声が震えてくる。 「嫌なんだ。寒い寒いと思っていた気持ちが、寂しいだったと気づいてから、寒さが身に染みて辛いんだ」 「蒼・・・・」 知らずに力が入ってしまっていた俺の体を要が優しく抱きしめる。 「一人でするのが見たいならやってやるよ。でも、お前の目の前がいい。俺を辱めるなら、ちゃんとその後抱きしめろよ。バカ」 心がぎゅっと閉じて、うっすらと涙が目じりに浮かぶ。要がそんな俺の目をそっと優しく手で拭う。 「すいませんでした。俺、自分の気持ちばっかりで。蒼がそんな風に思ってくれるなんて知らなくて・・・。いや、なんか信じられないです」 「好きだって何度も言ってるだろ、なんでわかんないんだよ」 「それは、俺が言ってほしいって言うから言ってるんだと思ってました。寂しいなんて思ってもらえるなんて信じてなかったです」 「おまえ、意外に俺のことわかってないな。だから変な行動に出ようとするんだな、きっと。牢屋作ってみたり、鏡作ってみたり。そんな物必要ないのに」 「そうかもしれませんね」 「そうだよ」 「俺がいなくて寂しい?」 「寂しいよ。当たり前だろ」 「自分からいなくなったのに?」 「そうだよ。自分で大学行くって決めて行ってるけど、寂しいものは寂しいんだ」 「本当に、我儘な人ですね」 「悪かったな、我儘で」 「我儘な蒼も好きなので構わないですけどね」 「うん。知ってる」 ちゅっと口づけする。もう怒って無さそうだ。気持ちも伝わっただろう。 「わかりました。大学へ行った後は、話すだけにします」 「うん。それがいい」 「その代わり。やってみてください」 「ん?何を?」 「何をって、自分でするとこみたいなら、目の前でやるって言ったじゃないですか」 「あ・・・あれは・・・その・・・」 「見せてください」 「ダメだって、夜もあるんだから」 「一回くらい平気ですよ。それにほら、反応してるし」 「さ、さわるな」 そろりと触られて思わず体がのけ反る。 「蒼、お願い。俺、見たいです。終わったら、抱きしめますから」 「んー」 艶のある声で耳元でねだられると、火照った体ではうまく拒否できない。 仕方なく、おずおずと服を脱ぐ。 要から少し離れて、足を広げる。夢中になって俺を見ている要の視線が少し嬉しくて、心がほぐされていく。要が喜ぶならと、広げた足を少し上へあげて全部見せるようにする。 「蒼・・・・」 吐息交じりに俺の名前を呼ぶ要がいやらしくて、体が反応する。 そそり立ったそれを右手で持ち、擦り始める。 「あっ・・・・はっ・・・・んっ」 気持ちがいい。ずっと我慢していたこともあって、意識がすぐに気持ちよさに流されていく。 さらに腰を上にあげて、左手で穴をまさぐる。指を入れると、すでにしっとりとしたそこは軽々と飲み込んでいく。ビクっと快感に体が跳ねる。 「はっ・・・かなめ・・・かなめぇ」 名前を呼び始めると、理性はふっとび、要を求めるように指を気持ちがいい場所へこすりつける。 「あっ・・・ああん・・・・あっ」 クチュクチュといやらしい音が響く。要の咽喉がごくりと唾を飲み込むのに上下した。 「蒼・・・・我慢、できない」 押し倒されて、視界が横転する。 「あっ・・・だめっ・・・かなめ」 のしかかられるとの同時に、熱く太い要のアレが中へ入ってくる。 「ああ・・・ああ・・・・あぁ」 気持ちがよすぎて意識が飛びそうになる。 「はっ・・・・ん・・・ぁ」 大きく開いてもっともっとと要を受け入れていく。 奥に欲しい。もっと強く。 これ以上くっつけないほど股間同士をぴったりとくっつける。 「蒼、蒼、たまらない」 激しく動かされて、脳みそがゆれる。 パンパンパン、クチュクチュ。 「あ・・・ひゃ・・・いい・・・気持ちいぃ!」 夜のこともなにもかも吹っ飛んで、二人でお互いをむさぼりあう。 それから数時間後、満天の星空が広がる社の東屋で、このことを心底後悔したことはいうまでもない・・・。要はケロッとして俺を抱きまくったけどね。

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