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第40話
「甘い香りもするな、変わった薬だなぁ、まあ、人間の世界に疑似発情期を誘発する媚薬なんてなかったしな」
俺は今、夏青国の寝所で、媚薬を並べて吟味している。秋紫国で、初めて閂の斎藤正 さんに会い、会食を済ませると、要によって夏青国へ連れて帰られてしまった。正さんは、短髪でがっしりした体格の持ち主で、若々しい鬼だった。裏表のない硬派な性格で、色恋に疎いらしく、安部教授にからかわれては顔を赤くしていた。
要達は政務があるためとんぼ返りする必要があり、俺と雪音だけ残ると言ったのだが、許されなかった。
「これ以上の勝手を許せるわけないでしょう?」と言った要の表情は笑っていたが、目がまったく笑っていなかったので、俺は黙って従うことにした。
さて、媚薬だが、正規品は全部で三種類。ピンク、オレンジ、紫の粒だ。一番人気はピンクで、効用は性感帯を過敏にする作用が中くらいの効き目らしい。オレンジはもっと弱くて、紫はもっと強い。人の世で言う精力剤とは少し違うように思える。使うのはメス型だから、なんていうか、感じやすくする薬?なのかもしれない。
「今日はどれを使いますか?」
要が俺を後ろから抱きしめる。
「いや、使う必要はない。味まで知らなくていいし。見た目と匂いで十分だ」
「初めてなので、ピンクにしておきましょうか。それともお仕置きを兼ねて紫でもいいかな」
「おい、俺の話聞いてる?」
「蒼、俺、怒ってますよ」
「う・・・」
「メス型でもない鬼に体を触らせて、あげくの果てに俺に知らせずに他国へ、しかも花街へ行くなんて、自由にしすぎじゃないですか?」
「周瑜はメス型みたいなもんだよ。花街へ行ったのは・・・悪かった」
「悪かった、ですか。わかってないですね、相変わらず」
「ちょ、やめっ・・・・う・・・甘いな」
無理やり紫の媚薬を口に入れられ、しかも、口の中で砕かれた。こうなっては飲むしかないだろう。なら、味も確認しなくては。少し舌で味わってから、残りを水で飲み干す。甘みに隠れて多少の苦みがある。大学で実験した数々の植物が思い浮かぶ。
「甘さは何からくるものかなぁ・・・サトウキビぽいなぁ、どれくらいで効き目が・・・・はっ」
急激に体温があがる。体中がジンジンと脈打つような感覚が襲う。着ている服の感触がやたらと気になるようになる。思わず声が出そうになって慌てて口を手でふさぐ。
「効果はものの数秒で出るんですよ。紫は、感度がすごく良くなって、服ですら感じるそうです。蒼、どうですか?顔が真っ赤ですね」
「あっ・・・んっ・・・ふっ」
要が服の上から体をまさぐる。それだけで気持ちが良くて、息が漏れる。
「へぇ。すごい効き目ですね」
「あっ・・・ひゃっ」
要の手が服へ入ってきて乳首に触れる。俺はその快感に背中をのけぞらせた。
「か、かなめ、服・・・無理・・・服、脱がせて」
「ん」
「はぁん」
服を脱がされるだけで感じてしまう。まだ、意識はしっかりあるが、熱に浮かされて今にもおかしくなりそうだ。
「蒼、もう濡れてますよ」
「ひっ」
要がそっと太ももの内側に指を添わせただけで、俺のアレはそそり立つ。
「今日は、口で咥えてくれますか?」
「はぁ・・・はぁ・・・」
動機が激しい。息が切れる。
要の大きくなったアレが袴から出されると、一気に頭に血が上った。
まるで、空腹で極限状態の時分に、御馳走が出されたような気持ちだ。
我慢できずに、すぐに口に咥える。下で先を舐め、吸ってしごく。
あぁ、たまらない。口の中ですら感じてしまう。
「媚薬、すごいですね。蒼、すごくいやらしいですよ。蒼も触ってほしい?なら、くわえたままお尻をこちらへ向けてください」
俺は言われた通りに、正面ではなく横から要のアレを咥え、自分の尻を要の方へなるべく近づける。
おそろしく恥ずかしいことをしているのに頭が回らない。ただ、要の手だけが気になって、自分に触れてくれることを期待する。
「んっ・・・んっ・・・・んん」
咥えた口内から息が漏れる。
クチュクチュと要が指を入れる。
「んんんっ」
空中にキラキラした霧が霧散する。
「もう出ちゃったんですか?指を入れただけなのに」
「んっ・・・んんん」
「あぁ、続けて中でもイッた?蒼、すごいです。くせになりそう」
ブチュブチュと唇を使って早くしごく。飲み込むように、喉の奥まで要のアレを入れる。
「入れてほしい?」
「んんっ」
「ダメですよ。お仕置きなんですから。そのまま咥えて。指でイかせてあげますからね」
「んっ」
入れてもらえない。もっとほしいのに、奥に、あったかいのを、もっとほしいのに。
クチュクチュと指が中を擦る。それじゃないと思うのに、快感に負けて、体がのけ反る。
「またイきましたね」
「んんっ」
「蒼、涙目ですね。そんなに俺のがほしい?」
要のアレを咥えたまま何度もうなずく。
「ふふ。でも、ダメです。まだお預け。これにこりたら、俺に隠し事しないでください」
「んー」
「あ、離しちゃダメですよ。口から出したら、入れてあげません。ほら、ちゃんと奥までしゃぶって」
「んっ」
「おいしいですか?蒼、俺のこれ大好きですか?ああ、しゃべれないですよね。じゃあ、好きならもっと舐めてください」
要が頭を押さえるので、どんどん喉の奥へ入ってくる。苦しくて、酸欠で、涙が出る。それでも、離したら入れてもらえないと思うと必死に舐め続けてしまう。それに、口の中ですら気持ちが良くて、こすってほしい。
「蒼、今日は飲んでくれますか?飲んでくれたら、入れてあげますよ」
「んんんんっ・・・ぐっ」
勢いよく喉に流し込まれた要の精液でむせる。飲もうと思うのだが、全部飲み込めずに、半分ほど吐いてしまった。ゲホゲホとむせる。
「全部は無理でしたか。」
要が手ぬぐいで俺の顔をぬぐう。
「でも、がんばってくれて嬉しいです。じゃぁ、ご褒美です。いいですよ。好きにして。俺の上に乗って、自分で入れてみてください」
寝転んだ要にまたがる。頭の中は要のアレを中へ入れることだけしか考えられない。
「はっ・・・あっ・・・んっ」
ズブズブと入ってくる感覚で体も脳みそもとろけていく。
「動いていいですよ。ほら、腰を動かして」
全然動いてくれない要にしびれを切らして、腰を上下に動かす。大きなソレが出たり入ったりを繰り返す。ゆっくりと中がこすれて全身に快感が走る。
「うっ・・・むっ・・・あっ」
「蒼、もっと早く動かないとイケないんじゃないですか?もっと激しく腰を上下しないと」
「あああっ・・・」
要が俺の腰を持って、まるで見本とでもいうように俺の体を上下させる
一気に攻め立てられてイってしまうが、またすぐに快感が押し寄せる。媚薬のせいで何度果てても終わらない。夢中で腰を振り続ける。
「蒼、可愛いですよ。蒼の、今までで一番大きくなってるんじゃないですか?こんなに赤く膨らませて、すごい魅力的です。あぁ・・・腰を上下に振るからアレも上下に振られて揺れてますね。まるで踊ってるみたいですよ。俺の上でいやらしい踊りを踊ってる姫、最高です。でも、俺の腹と蒼の腹に当たってベチベチしてるのも可哀そうなんで、支えてあげますね」
要が俺のそそり立ったアレを握る。
「ひっ・・あっ・・・・あああっ」
先端を擦られて思わずのけぞる。中からの快感に外の快感も合わさって、もう何が何だがわからない。薬でおかしくなるとは、こういうことなのだろう。呼吸が苦しい、腰も振り過ぎて疲れてくる、にもかかわらずに止められず。俺は要の上でいやらしいダンスを踊り続けた。
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「死ぬ・・・」
媚薬の効果は二時間ほどで覚めた。ちょうど行為が終わるくらいの時間だと思うと、よくできた薬だと思う。二時間で終わればちょうどよく、とても気持ちよくセックスを楽しめるすぐれものだが、要が相手ではそうはいかない。媚薬が切れて動けなくなった俺を、こいつは何度も何度も抱いたのだ。
「すごく良かったです」
語尾に♡マークが見えそうなほどご機嫌な要が抱きしめてくる。
こっちは足腰が立たなくて、風呂への行き来さえ要にだっこされて済ました状態だ。
「んっ」
さんざんしたのに、布団の中でキスを繰り返すこいつの脳みそはどうなっているんだろうか。
「やめろ、もう寝るぞ。お前、あと数時間後に仕事だろ」
要に背を向けて布団をかぶる。体力もどうかしている。
「蒼、こっち向いて」
「・・・・」
無視していると、強引に体をひっくり返される。
「やめろって、唇の感覚も無いぞ、俺は」
再び始まったキスの嵐を手で止める。
「すいません」
落ち込んだ表情を見せて、俺の顔を要が撫でる。
あれだけ人を辱めて、独占して、愛し合って、どうしてこんな寂しそうな顔をするんだろうか。
結婚式を終えた後は、少し落ち着いていたと思ったのだが・・・。
愛情なら全力で表現しているし、これ以上どうしたらいいのかわからない。
要を満足させることなんてできるんだろうか、ここまでしてるのに。
それ以上考えられなくて、俺は再び要に背を向けて、眠りへと落ちていった。
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