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第46話
「目を開けていいですよ」
恐る恐る目を開ける。暗くてそんなに良く見えないだろうと思っていたのだが、予想以上によく見えた。
荒涼とした砂の土地が暗闇の中に広がっている。川が流れている。やせ細った木々。夜のように暗いが暗黒などではない。
「うわ、光ってるな」
上の方にまばゆい光があるのがわかる。
崖を降りてきたというのに、行く手にまた崖があり、その上に光り輝く何かがあった。
さすがに疲れたのか、要は俺を下ろすと、川へ行き、顔をすすいだりして一息ついている。
当たりを少し散策して、俺も要の隣へ腰を下ろす。
「この水は飲めるのか?」
「飲めますよ。魚もいます。イモも掘れるんで、火がおこせればしばらくは飢えません。ここに送られた罪人は、ここが死の世界だと思いこんで食べ物を探そうとしたりしないんですよね。案外、普通の土地なんですけど。痩せた大地ではありますが。昔、一緒にフィールドワークへ行ったのを覚えていますか?イモがたくさん取れる森、あったじゃないですか」
「あぁ、あったなぁ。チアパムの森だな。俺が教えたのに、お前の方が探すのうまかったよな。火だってお前の方が簡単におこすし・・・」
「あの経験が役に立ったんじゃないかと思います。俺、子どもでしたけど、その辺の石や木で火が作れたんですよ」
「野生児だな」
「次はあの崖を上ります。あの上に冥府の神の神殿があるんです。子供のころはあの崖がなかなか登れなくて、しばらくここで足止めをくらってましたけど、今なら蒼をおんぶしても軽くいけそうです」
「俺は冥府の神よりお前が怖いよ」
「ここで一日野宿することもできますけど、急ぎましょう。早くセックスしたいんで」
「っ・・・お前にかかると、冥府の土地も形無しだな・・・」
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しばらくやせた土地を歩き、崖までくると、予告通り、要は俺をおぶったまま軽々と崖を上りきった。
人間離れした技に呆れてやろうと思っていたのだが、俺は崖の上の光景に目を奪われて、微動だにできなかった。
「いつか一緒に来て、これを見せたかったんですよね。この光景をみたら蒼は絶句するんじゃないかなって思ってました。予定外の訪問になってはしまいましたけど」
まさに、絶句している。
まばゆい光の正体は仙花のススキの野原だった。穂が揺れて光の川のように見える。
その仙花に囲まれるようにして、冥府の神の神殿があった。
神殿と言っても、作りは俺と要の家とそっくりだ。平安時代の貴族の邸宅に似ている。
池もあるし、倉もある。釣り殿もある。
「さ、お腹もすきましたし、中へ行きましょうか」
「う、うん」
呆気にとられている俺の腕を要が引く。
玄関らしきところから履物を脱いで、奥へと進む。
家の中から見る外の景色もかなり美しい。闇夜に浮かぶ光輝くススキの野原。
いい、すごくいい。
「お久しぶりです」
俺が外に気をとられていると、目的の場所へ着いたらしく、要が歩みを止めた。
「久しいな。年に一度は来るよう言っただろう」
「すいません。いろいろありまして。それより、地上に降りて、お触れでも出してくださいよ。俺、夜叉族だってことがバレて、冥府送りになったんですよ。これじゃあ子どもなんて作れないです。夜叉族は絶滅しますよ」
要と話している相手を見て、再び絶句する。
左目が無く、その目があった場所に暗闇を宿しているせいで、物々しい姿ではあるが、知っている顔立ちだ。子供のころから良く知っている。
「叔父さん?」
俺のつぶやきにその人物がこちらへ視線を寄越す。
冷たい視線。整った鼻筋。伸ばされた背筋。髪はかなり長いが、どうみても総一郎にそっくりだ。
「なんだ、藤を捕まえたのか。人に降りた甲斐はあったようだな」
俺を見て、その人物が吐き捨てるようにつぶやいた。
「蒼、こちらが冥府の神です。総一郎さんにそっくりですけど、別人ですよ」
「そ・・・そうなのか」
「影よ、こい」
冥府の神の声が辺りに響く。普通の声とは違う、頭に直接響くような不思議な声だ。
その声に呼応するように要の足元の影が動き、人型となってにゅらりと出てきた。
冥府の神が鎮座していた上座から降りると、とってかわるように要の影がその場に座り込んだ。
「十日だ」
「承知しました」
言葉少なに会話すると、そのまま冥府の神はどこかへ行ってしまった。
なんなんだ?そっけない態度も叔父にそっくりだ。
「とりあえず、風呂にしましょうか。汚れてしまってますし」
俺を振り返ってにっこり笑う要の手足が泥だらけだということに初めて気が付いた。爪が割れて、血が出ている個所がある。崖を下って上ったダメージだろう。軽々とやってのけたようにみせただけで、本当は俺をおぶっての移動は負担だったのかもしれない。そう思うと、なんて言葉をかければいいのかわからず、唇を噛んだ。こいつはいつも、平気な顔で無理をする。
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「今日はサービス旺盛ですね」
要の体を優しく洗う俺を見て、要が苦笑する。
俺のせいで手足に傷を作ったのだ、これくらいはしてやりたい。
むっくりと膨れあがっている要のアレは、今は見ないことにする。できれば手当と腹ごしらえを先にしたいし。
「じゃあ、お前がいなくなったら、冥府の神は産土の神に会いにいけなくなるってことか?」
「そうです」
体を洗いながら、俺は先ほどの会話の真意を聞いているところだった。
この世界は、冥府の神と産土の神が崩れないように保っている。そのため二人は互いの土地を離れることができない。そこで冥府の神は、自分の左目を抉り出し、夜叉の力を作り、しばらくの間自分の身代わりにできる鬼を作った、ということだ。産土の神は、その力を鬼の子孫繁栄にも使っているため、冥府の神以上に身動きがとれないらしい。
「なるほどな。あとは、藤っていうのは?あの神、俺を見て藤って呼んだよな?」
「その話は後にしましょう。俺、もう、我慢できそうにないんで」
「ちょっ・・・ダメだって・・・手当しないと」
俺の体をむさぼり始める要に抵抗する。
「このくらいの怪我に手当なんて必要ないですよ」
「じゃあ、飯は?ろくな物たべてないんだろ?」
「今は蒼を食べたいです」
「ま・・・ん・・・あっ」
「蒼・・・あぁ・・・無理、我慢できない」
「ひっ」
押し倒されて、勢いよく入ってきた要のアレに体がのけ反る。
大きい、いつも以上に大きい。要で腹の中がいっぱいになる。
「あっ・・・んっ・・・・あぁあぁ」
パンパンパン
容赦なく擦り続けられて、惜しげなく俺からも輝く霧が舞い上がる。
「あ、まった、まだいってるから・・・あっ・・んっ・・・ひゃ」
パンパンパン、パンパンパン
「あっ・・・あっ・・・・」
「くっ」
「あ・・・あ・・・あぁ」
要の液がどろりと中に溜まっていく。
チュパチュパチュパ
「あっひっあっんん」
乳首も一緒に吸われると、喘ぎ声は増していくばかりだ。
「蒼、嬉しかったです。来てくれて」
「あ・・・うっ・・ぁ・・・ひっ」
パンパンパン、パンパンパン
要からの攻めは終わらない。
「俺、本当にうれしかったんですよ」
「ひぁ・・あっ・・んん・・・だめ・・・一回・・・休み」
パンパンパン、パンパンパン
「あっ・・ああっ・・・だめ・・・ああぁ」
パンパンパン、パンパンパン
ドプドプドプ
「あぁ・・・また・・・あ・・・あぁ・・・あっそれだめ」
体を持ち上げられて膝の上に乗せられる。
「ひぃ・・・ひっ・・・あっ」
両膝を持ち上げられ、串刺しのように真下から突き上げられる。
要のアレが腹の最も深い部分に刺さる。
「ひゃ・・あっ・・・ああん」
「ここ?ここがいい?すごい奥まで入ってますよ」
「ひゃぁ・・・あっ・・・んっ・・はぁ・・はぁ・・だ・・だめ」
「やめませんよ、ほら、もっと咥えて」
「ああああん」
容赦なく腰を上下させられて、快感で脳みそが溶けていく。
グチョグチョグチョ
俺の穴からいやらし音と愛液と精液が漏れ出る。
「かなめ・・だめ・・もう」
「十日、二百四十時間。覚えてますか?人間だった時、結婚式の後、引き籠ったの一週間でしたよね。十日ってことはあれよりも長いですね」
そう耳元で言われて鳥肌が立つ。
うっすらと思い出されていく記憶。使い果たされたローションの空ボトルが何本も転がっている部屋の光景が浮かぶ。要の大きめの服を着せられて、下はトランクスしか履くことを許してもらえなかった。しかも、それすら履いていたのは食事中くらいのものだ。あとはずっと要に愛されて・・・。ぞくっと寒い物が背中を走る。
「ここ、とろとろですね。ローションなんていりませんし、蒼の体を考えてセーブする必要もないですし、今回はもっと楽しめそうですね」
そう笑いながら耳元で囁かれる要の艶のある声に、俺の体は恐怖を覚えて、腹の中にある要のアレをギュッと締め付けた。
「興奮してますね。蒼は、ちょっとM気がありますよね。十日間、俺に犯され続けるって聞いて、体がこんなに喜んでる」
「ちが・・・」
「ちがくないですよ」
「ひゃぁ・・ああああ!」
再び上下に激しく腰を動かされて、俺は思わず悲鳴をあげた。
怖い・・・・要の言葉に誇張は無い。本気で犯される。十日も・・・恐怖と共に、快感が増す自分にうっすらと涙が出た。
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