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第7話【バイト】
ジンジンする。
すごく痛い訳ではないが、この痛みでもないよりはましだった。
「蓮…」
横になって、静かに蓮を思い出す。思い出の中の蓮は、いつも笑っていた。
何かと健と過ごす事が多くなった。健がしているピアスは健自身が趣味で作ったものらしい。
ジンジンする痛みは、一日もすればなくなった。
「まだジンジンしてるか?」
「もうしてないよ」
「そうだよな。痛みは結構すぐなくなるけど、ちゃんと消毒はしろよ?膿んで痛くなるから」
「痛くなる?」
「…お前、何なの?」
「何が?」
「痛いのが好きなのか?」
「あー好きって言うか欲しくなる?」
「何じゃそりゃ」
「俺も分かんない」
「まー色んな性癖があるからな」
「性癖?」
「まぁ、何かあったら言えよ?」
「?うん。ありがとう」
健が何を言ってるのか分からなかった。
涼しかった春から夏に変わって、もうすぐ夏休み。地元に戻る気は無いので夏休みをどう過ごすか考えていた。
「そういえば、健ってどんなバイトしてんの?」
「…言ってもいいけど引くなよ?メンズエステで男の客を気持ちよくしてんの」
「気持ちよく…どんなことすんの?」
「お前、セックスしたことある?」
「一応あるよ。お尻に入れられたことは何度もあるから」
「気持ちよかっただろ?」
「気持ちよくはなかった。痛いの我慢してたから」
「はー?レイプか?」
「違う。最初は抵抗したけど、途中からは同意してたのと変わんない」
「お前…」
「俺の話はいいから、バイトのこと教えてよ」
「あぁ…だから単刀直入に言うとセックスで言う前戯みたいなもんだ」
「前戯…」
「男でも女でも挿れる前に、ほぐしたり、感度をよくしたり、まースキンシップだな。しかし。なんの前戯もせずに突っ込むとか痛くてたまんないっつーの!お前、もしかして痛みを欲しがるのも関係あんの?」
「……」
「まぁ…とにかく、男の客を気持ちよくするんだよ。もちろん、普通にマッサージだけってとこもあるけど、俺のバイト先はそーゆーとこ」
「そうなんだ…」
挿れると気持ちいいって…セックスってやっぱり気持ちいいもんなんだ…
でも、痛みがなきゃ…
その日の夜
[健、バイト中だったらごめん。ピアスまた開けて欲しくて…来るのが面倒だったら健の家でもいいし、近くまで行ってもいい。だからお願い。]
考えてるウチに痛みが欲しくてたまらなくなった。
ダメ元で健にメッセージを送った。
[今、終わった。そっち行くから待ってろ]
返信が来て。少し落ち着いた。
「お前…何つー顔してんだよ」
「え?」
「そんな不安そうな顔しなくても大丈夫だ」
「…ありがとう」
「で、どこにする?」
「どこでもいい…早くしてほしい」
「分かったから…この前のの隣にするけどいいか?」
「うん」
「もう、待てなさそうだから今日も一気にした方がいいよな?」
「うん、お願い」
ガチン
「健…」
「分かってるよ。終わったら帰れって言うんだろ?」
「いや、疲れてるだろ?ゆっくりしていっていいよ…ソファーでいいなら泊まってもいいし…だけど、俺はちょっと…横になりたい…」
「…じゃあ、とりあえず腹減ってるから飯食って考えるわ」
「ん…」
夏休み前日
「千秋、夏休みすることないなら、俺がバイトしてるところでバイトしてみるか?」
「え?男のお客さんを気持ち良くするやつ?」
「そう。意外とイケるかも」
「俺にできるかな…」
「千秋は痛みしか知らないから不安かもしれないけど、自分が気持ちよくしてるって思うと悪い気はしないと思うけどな」
「…そうかな」
「試しに俺がバイトしてるとこ見に来るか?見学だ 笑」
「いいの?お客さん嫌がるんじゃない?」
「お得意さんに頼むから大丈夫だと思う。どうする?」
「じゃあ、行ってみようかな」
「橘さんすみません。今日は体験の子がいますけど、いつも通りきっちり気持ち良くしますんで、よろしくお願いします」
「あぁ、受付で聞いたよ。僕は目隠ししてるし、健くんがしてくれるなら構わないよ」
「ありがとうございます」
俺は、邪魔にならないところで見させてもらう。
「橘さん今日のリクエストありますか?」
「今日は、ちょっと落ち込んでるから優しくしてほしいな…」
「分かりました」
最初は普通のマッサージに見えたが橘さんはしっかり反応していた。
施術をしていると、いつも優しい健だが、目の前の健は全く別人のように聞いたことのない優しい口調で、橘さんを絶頂へと導いていく。それは、優しい口調だけではなくて手つきや、攻める手の強弱の付け方なども慣れたもので、橘さんが可愛く喘ぐと、健は嬉しそうにまた攻め立てるので、あの時言ってた、自分が気持ち良くしてると思うと悪い気はしないってこう言うことかと納得してしまった。
橘さんの施術後、少し考えたいと伝えた。そして、素直な感想として、健すごいなって伝えた。
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