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第13話【俺がもらう】

健視点 千秋には、福岡に用事があると適当に嘘を言った。 本当は東京に来ている。神野蓮に会うため、〇〇大学にいるのだ。こんなだだっ広い大学のどこにいるかも分からないけど、この二日間で探し出すつもりだ。 俺がいない間に、千秋がまたあんなことをしないか心配だったが、蓮ってヤローの気持ちが知りたかった。 千秋と会って一年…誰よりも、あいつの側にいたつもりだ。来週のゴールデンウィークに蓮ってヤローが来なければ、今までよりも、千秋の側にいて全力で支えようと思っている。 とりあえず、神野蓮を知っているか、と学生たちに聞き回った。 「俺を探してるって聞いたんだけど」 「神野蓮か?」 「誰?」 「千秋のダチなんだけど」 「千秋の!?…今千秋はどこに…」 「場所変えねーか?」 「あ…そうだな」 蓮の第一印象は、こんなやつのためにあいつはあんなふうになったのか?だった。 キラキラした、イカしたやつだと勝手に思っていたけど、ガリガリで顔色も悪く、こいつのどこにあいつが惚れていたのか分からなかった。 大学の敷地内、人通りの少ないグランド傍のベンチ。 「で、単刀直入に言う。千秋は俺がもらうわ」 「お前は、千秋の友達なんだろ!?」 「今はな」 「千秋に対してそう言う気持ちがあるのか?」 「そう言うって?」 「それは…っ、友達じゃしないことをしたいとか、もっと深い所で繋がりたいとか…」 「それなら、もうやってるけどな」 「……」 「お前はどうなんだよ。俺は後からごちゃごちゃ入ってこられんのが嫌だから、わざわざ確認しにきたんだよ」 「……」 「俺の手を千秋が取ったなら、二度と離すつもりはねーから」 「…勝手にすればいいだろ…千秋は俺の側を離れたんだ…」 「離したのはお前だろ」 「違う!千秋が何も言わずに離れていったんだ。性的なことをすれば深く繋がれると思っていた。だから、千秋に彼女が出来ても俺と性的な…特別なことをしたら…彼女なんかよりも俺の方が一番近くにいられるって…思ってた」 「お前、歪んでんな」 「…じゃあ、どうすれば千秋は俺から離れなかった?約束したのに…それでも俺は離したくなくて…俺は…」 「お前の言う特別なことって、セックスだろ?そもそも、痛みしか与えないセックスに何を感じろって言うんだよ」 「痛みしか与えない?最初は辛いけど、慣れれば気持ち善くなるって…」 「そう言う顔してたか?ちゃんと気持ちよくなってる顔を見たのか?気持ちいいか聞いたのかよ」 「見てない…俺も必死で…後ろからばかりで顔は見なかった」 「はぁ…お前、男同士のセックスのこと少しでも勉強したのか」 「勉強と言うか…教えてもらった」 「バカじゃねーの?」 「……」 「落としたら割れてしまいそうなあいつを……とにかく、あいつは俺がもらう」 「無理だ。千秋がいないなんて…この一年もどうにかなりそうだった…」  「千秋に会ってどうすんだよ。側にいて欲しいだけじゃ同じこと繰り返すだけだろ」 「……」 「そもそも、行動よりも大切なことがあるだろう?」 「行動よりも…」 「言葉だよ。側にいるなら友達でもいいのに、彼女よりも特別になりたかったんだろ?」 「…そうだ」 「お前…まだピンときてねーだろ」 「……」 「だから、好きとか愛してるとか、そう言うのを恋愛感情って言うんだよ。友情とは別の感情。その恋愛感情を千秋には抱かなかったのか?」 「……好き、愛してる…そんなのとっくに通り越してた。千秋も同じでお互いに言わなくても…」 「やっぱ、バカだな。自分の気持ちなんて言葉にしなきゃ相手に分かる訳ないだろ?」 「千秋は何も言わなかった…同じ気持ちじゃなかったってことだよな…約束を間に受けてたのは俺だけ…」 「お前、やっぱバカだな…お前、どっかの社長の息子で将来は後継いだりすんだろ?そんなやつ相手に千秋が、大好きずっと一緒にいようね、なんて言えると思うか?大好きなやつの将来を壊すようなこと…本気で…あいつが言うと思ってんのかよ?」」 「……」 「とにかく、来週のゴールデンウィークが終わったら本気モードに入るから」 それだけ言うと、千秋の住所を書いたメモを渡した。千秋は怒るかもしれない。だけど、二人には一度話をして欲しかった。 蓮は、重度の恋愛音痴で絡まった糸が解けるかは分からないが千秋を今も思っていることは伝わった。 このことがキッカケで、千秋の闇が深くなるかもしれないが、その時は全力で支えるつもりだ。

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