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第5話
ヒートの時期も大体三ヶ月に一度だと沖田は教えた。
一年と決められた期間限定での生活も、土方が陰間茶屋にいって二年間と伸ばして来た。
「二年間にしてきたぞ」
そう言って嬉しそうに茶屋から帰って来たのを見た時は、心底びっくりした。
「よく了解されましたね。高かったんじゃないんですか」
沖田の言葉にみんなは確かにと相槌を打ち、興味深げに土方をみた。
「あの手の輩は、基本誰かに騙されやしないかと考えている。だからそれを逆手にとっただけだ」
「というと?」
「出産までこちらに居ないと、それが本当に自分と怜音の子供か信じられない。それに妊娠している間は客もとれないし飯代だけかかって、そちらにいいことは無いだろう。と言っただけだ」
人は騙す生き物だと思っている輩には一発だったぞ。とやかんに入っている茶を飲みながら土方は肩を上げた。
「喜べ怜音、今度は抱けるぞ」
それを聞いて意味が解らなかった。
「今夜は抱けるぞ、の間違いですか?」
爆笑する声が台所に響く。
「いや、まぁ今夜も抱けるけどな、生まれた赤ん坊が抱けるぞという意味だ」
「え?」
「前に寝ながらうわごとのように言っていたのを叶えてやりたくて。初めて聞いた時、ああ、そりゃぁ抱きたいに決まっているよなぁと思ったんだ」
「土方様……」
「嬉しいか?」
「…………嬉しいです」
「やけに素直で、ある意味怖いな」
「失礼ですよ」
むっとした顔が存外嬉しそうだった。
理心流の仲間が我こそはと祝いの言葉を述べていく。
「おめでとうございます」
「良かったなぁ」
「まだヒートも来ていないし、妊娠もしてないのに早合点するなよ」
土方はあまりに嬉しそうに怜音に声をかける仲間が誇らしかった。
「今日はお祝いです。見てください、卵やきですよ」
台所から総司が卵焼きを持ってきた。
くるくる巻かれて、綺麗な黄色い塊から湯気が立ち上る。
「今回は味はあるのか?」
ぶっきらぼうな言い方に肩眉を吊り上げながら、
「今回は自信作です」
さぁ食べてと、皿ごと目の前に押し出された。
怜音は箸を伸ばし一つ摘み、やけどをしないように口に運んだ。
中から幸せな甘みが口いっぱいに広がる。
「幸せの味だな」
頬に口づけられる土方の甘い匂い、怜音の心が反応するには十分だった。
瞬間、ブワッと広がる甘い香りが室内を埋め尽くした。
各々が皆顔を見合わせ口元を押えた。
「この部屋から出て」
沖田が叫ぶ。
みるみるうちに火照った顔に、土方の顔色が変わった。
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